外れスキルのお陰で最強へ 〜戦闘スキル皆無!?どうやって魔王を倒せと!?〜

血迷ったトモ

第11話 漸く倒しました!

 聡は召喚されてから、来る日も来る日も朝起きたら朝飯食って殴り、昼飯食ってから勉強、夕飯後にまたタコ殴りにしてから就寝という、機械的な生活を繰り返していた。
 そうして実に約300年後、遂にその時は訪れた。

「…残りのHPは?」

剣を手にした聡が、静かに問う。

「…5だ。」

それに対して、トイフェルは感慨深そうな声で、同じく静かに答える。

「そうか。長いようで、短か…くはなかったな。」

「ははは。そうだな。長く生きてきた余にとっても、濃い300年だったぞ。」

両者共に長い時間を感じさせる、貫禄が出た喋り方だった。

「世話になったな。」

「改めて礼を言おう。」

予期せず、2人同時に感謝の言葉を口にする。

「「はははは!最後の最後まで締まらないな!」」

大笑いする2人。

「さらばだ、友よ。」

「あぁ、転生でもして、また会いに来い。」

ニヤリと笑い合う。そうして次の瞬間、聡は素早く5回、トイフェルを切り付ける。
 そして力尽きたように、足元に剣を落とす。

「…これで、0だな。」

「サトシ、楽しかったぞ。」

するといきなり周囲の建物が吹き飛び、外の風景が荒野へと変わる。トイフェルのMPで、建物自体に結界が張られていたため、死んだ事により効果が切れたのだろう。

「…。」

 そんな周囲の変化に驚きもせず、トイフェルの最後の言葉を聞き届けた聡だが、中々消えないため、無言で首を傾げる。
 そんな聡に、トイフェルは今日1番の笑みで、とんでもない事を言う。

「具体的には、『転生でもして、また会いに来い』って、カッコつけて言ったのに、何故か余が中々死なないから、怪訝な表情をしているのを見ているのがな。」

「はぁ!?ここに来て長ゼリフ!?HP0じゃないのか!?」

「いや、余の称号『変態』の効果で、HPが0になっても、数十秒間存在出来るんだ。」

「な、なんだそのチートな効果は!?」

驚く聡を尻目に、トイフェルは満足気な高笑いをする。

「クハハ!余は満足だ!これで何の心残りもなく、逝けるというものだ!」

1人高笑いするトイフェルに、聡はキレ気味な様子で暴言を吐く。

「うるせぇ!このクソ変態魔王が!さっさと死にやがれ!」

「最後の最後までドSだな!」

明らかにこれから死にゆく友人に対して言うセリフではないため、トイフェルは顔をニヤケさせながら言う。

「そういうのは良いから、さっさと去ねや!もうHPは0なんだろ!?」

自然の摂理に従えという、己の思いをぶつけ、叫ぶ聡。

「うへへへへ。これは手厳しいな!…では、さらばだ!」

 ニヤけた面から一変、荘厳さを感じる面持ちで別れの言葉を告げるトイフェルだが、最後には台無しな緩んだ表情で消えゆく。
 どうやら魔王という種族は特異らしく、死後に肉体が一切残らないという特徴があるらしい。
 光の粒子となり、消えていく。

「逝ったか…。はぁ〜!くっそ長かった〜!漸く終わったか〜!さっさと地上したに降りて、美味い飯食って、酒でも飲むか!」

 そう叫びながら、聡は地面に仰向けに寝転ぶ。ここ300年ほどで、スキル『不老不死』の超回復を、一定程度ならコントロール出来るようになった聡は、今は感じる疲労感に身を任せ、そのまま意識を睡魔へと委ねるのだった。


「…夜か。」

 数時間後、目を覚ました聡の視界に入ってきたのは、久しぶりに見る一面の星空であった。

「さて、どうしたものかな?」

 ゲームならば、『死の荒野』とでも名付けられそうな、何も無い周囲の景色を見回しながら呟く。
 虫の声すら聞こえない、そんな静かな様子に、聡は不安を感じ、つい考えを一々声に出しながら行動する。

「えっと確か、トイフェルが言うには、奴のアイテムボックスは、倒した者に自動で所有権が移転するとか何とか。物騒だな…。
 それは兎も角、そういえば、アイテムボックスとは言っても本体は見た事ないな。」

 聡は自分の体のあちこちを、ぺたぺたと触りながら見回す。だが見つからないので、頭を悩ませてしまう。

「しくった…。アイテムボックスの中身については、大分聞いたけど、本体について聞くの忘れたな。
 なら仕方が無い。適当にやってみっか。…アイテムボックスオープン!え?うわぁ!?なんじゃこりゃあ!?」

 適当に叫んだ聡の脳裏に、大量の文字列が並ぶ。いきなりの事に、聡は思わず戸惑ってしまう。
だが落ち着いて、その文字列に意識を集中させると、アイテムボックス内のリストである事が理解出来た。

「…これはこれは。便利じゃん。ほほぅ。1番上の段には、武具類って書いてあるな。んで、横にはカーソルか。で、確定って考えると…うん、更に詳細が出ると。これ絶対、作ったやつ地球の人間だろ!」

 仕様を確かめていると、明らかにゲームやパソコンみたいな印象を受けた。
 この世界には、自分の他に地球から来た奴が居るかもしれないと、頭の片隅に置いておく聡であった。

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