世界にたった一人だけの職業
絶望。そして、小さな突破口。
辺り一面が光り、何も見えなくなる。しばらくしてようやく見えるようになり、辺りを確認する。するとー。
全身から血を流しながら、死にかけているレギーロと騎士団員達の姿があった。
それを見たクラスメイト達はー。
「おえええぇぇ」
「きゃああああ!!!!」
「ひ……!!」
怯えたり吐いたり悲鳴をあげたりしていた。
「おい!!来るぞ!!」
俺はそう叫び、再び攻撃遮断用の魔法を展開する。無詠唱スキルのお陰なのか、声に出さなくても魔法を発動できる。
俺が魔法を発動すると同時に、巨大な死神みたいな化け物が召喚していた数百の魔物が鎌で攻撃ー。
ではなく、至近距離から魔法を放ってきたのだ。闇属性の初級魔法のダーク・グロビュール。闇の小球を飛ばす技だが、数が多ければその分威力が増す。
「ぐううううぅぅぅぅ!!!」
数百匹分の闇の小球が俺の発動した攻撃遮断用の魔法陣にのし掛かる。
重い……!!今にも魔法陣を支えている俺の腕が折れそうだっ……。
「おい!!皆!急いでこの迷宮を脱出してくれ!!」
俺は必死に声を振り絞る。
「おい、何でだよ……。何でそうなるんだよ!!」
秀治から抗議の声があがる。
春香からも、柏沢くんっ……!お願い。無茶はやめて……。と泣きながら抗議される。
「何でって言われてもっ……!お前らじゃあの化け物は倒せないからとしかっっ……!!」
俺は攻撃を攻撃遮断用の魔法で受け続けながらも言葉を紡ぐ。
「お前ら、頼むから逃げてくれ……!これ以上犠牲が増えるのは嫌なんだよ……!」
「……なら俺も戦う……!」
高峰がそういいながら、剣を抜き構える。
「高峰……!皆をまとめろ……!!まとめないと逃げられないし、リーダーがいないとっ……!!」
「で、でもっっ……!!」
「はやくっっっっっっ!!!!」
「っっ……。柏沢……。一つだけ言わせてくれ……。生きて帰ってこい!!」
「……ああ!!こんなところでまだ死ねないよ……!」
高峰はわかったと頷き、皆をボス部屋から避難させる。途中、抗議の声がたくさんあがったが、強引に納得させ避難を促した。そして、高峰も含め皆避難し終わった。
俺は、攻撃遮断用の魔法を発動したまま次の魔法を放つ。
「フレイム・ショット!!」
俺がそう叫ぶと同時に、俺の周りに無数の赤色の魔法陣が現れる。そして、その魔法陣から無数の針みたいに鋭い赤色の物体が出現し、魔物を次々と屠っていく。
すると、
「ζηψθδβαΔΙΞ……」
巨大な死神みたいな化け物が詠唱を唱えると同時に、小型の魔物が集結し出した。だんだんと集まっていき……。
もう一体の巨大な死神みたいな化け物なった。
俺は内心冷や汗をかいた。あんな化け物二体を相手にすんのかよ……。
二体の化け物が同時に鎌を振り上げ襲ってくる。俺はそれを後ろにジャンプして回避する。俺が何故一人で戦う決断をしたのかといえば、クラスメイトたちと連携してもうまくできないし下手すれば全滅なんてこともある。それを避ける為だ。まあ、あとはチートだということを極力隠したいが故だ。春香には知られてしまったが、口止めはきちんとしているので大丈夫だ。
ズドオオオォォォン!!!
二体の巨大な死神みたいな化け物が同時に鎌の斬撃を魔法に変換し放ってきた。ダーク・ブレイドだ。それが俺の避けた場所の壁に飛んでいき、破壊した。
(……なんか一撃一撃が重すぎるような……。試して見る価値はありそうだ)
俺は、二体同時攻撃をどうにかわし続け、頭の中で魔法陣を形成する。対象は……。あの二体だ。
「アンチ・グラビティ!!」
「「θΨΣΜΔΘΦ!!!」」
すると、二体の化け物が悲鳴をあげる。アンチ・グラビティによって重力の作用する方向の転換をしたのだ。そう、あの二体は蓮斗の推測通り重力魔法を自身に纏い攻撃してきていたのだ。召喚した魔物にももちろん付与されていた。
やがて、二体の化け物が悲鳴がおさまった。二体の巨大な死神みたいな化け物は死んだのか。否だ。二体の巨大な死神みたいな化け物が自身に付与していた重力魔法をといたのだ。
(ちっ……。知性も多少は備わっているのか……。厄介だ……)
蓮斗は内心で舌打ちをしながら、攻撃魔法を放つ。
「ヘルヘイム・ブラスト!!」
爆風によって加速した業火が二体の巨大な死神みたいな化け物を襲う。
ゴオオオォォォォ!!
だが、そこには巨大な死神みたいな化け物の姿はなく、後ろの方に気配がし慌てて防御魔法を発動する。
「集中防御!!」
巨大な化け物が攻撃してくるであろう箇所に発動する。
ガキイイイイィィィ!!
(く……!さっきよりも重い……。一瞬だけの重力魔法発動ができるのかっ……!厄介だ……)
蓮斗は二体の化け物攻撃を凌ぎながら考える。
(何故さっきの攻撃が当たらなかった……?普通のステルススキルでも場所を隠すだけで攻撃は通るはずだ……。ということは……!!)
蓮斗はニヤリと勝機を見いだしたかのような笑みを浮かべるのだった。
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