ダンジョン経営なんてロクなもんじゃない!?

Mei

ルークの過去 ー4

「うぅ……。ここは一体……?」
ルークが目を覚ますとそこには真っ白い空間が広がっていた。周囲には何もなく、どこまでも果てしなく続きそうな、そんな空間だった。
「ルーク様。目を覚まされたのですね……」
「うぉ!?」
突如空間に響き渡るような透き通った声。ルークはこれに驚かずにはいられなかった。暫くすると、何もない真っ白い空間に二人の女性が現れる。一人は、ルークと同じ白い透き通るようなロングヘアーで、穏やかな黄色の瞳をもっており、スタイルも出るところは出て引っ込むところは引っ込んでいるまさに美女とでも呼ぶべき存在だろう。もう一人の方は紫色のショートボブの髪に、マリンブルーの瞳をもった体格的にも小さい、言うなれば美少女と言うところであろうか。
「ルーク様! 目を覚ましたんだね!」
紫色のショートボブの少女は元気な声でそう言う。
「コラ! 駄目でしょう、大きな声を出しちゃ。ルーク様は今目覚めたばかりなのですから、もう少し気を使ってください」
白いロングヘアーの美女がそう言って紫色のショートボブの少女を#諫__いさ__#める。
「あの……。すいません、貴女方はどちら様で……?」
 ルークは目を覚ましたばかりで記憶が曖昧な為、転移する前の事をあまり覚えていなかった。それも仕方の無いことだろう。いきなり種族が統神族とか言う訳のわからない物に変わった上に、天界とか言うまるで夢物語にでも出そうな場所へ連れてこられたのだ。記憶の一つや二つ混乱するというのも頷けるだろう。
 ルークが二人にそう言うと、二人は今にも泣き出しそうな目をした。
「ルーク様……。私の名前をもうお忘れになられたのですか……。ルーク様にとって私はそこまでの存在だったのですね……」
「うぅ……。酷いよ、ルーク様。あたしの事を忘れるなんて……。あれほど親密な仲だったというのに……」
 ルークは二人の言っていることの意味がわからず頭の中に更に疑問符が増えた。親密な仲? 名前? 名前はどこかで聞いたかもしれないが、親密な仲だったなどルークにとっては与り知らぬ事だ。もし仮にそういうことがあったとしてもそれはルークに似た別人なのだろう、きっと。
 ルークがそんな事を考えながら難しい顔をしていると、
「冗談ですよ……。ルーク様」
「そうだよ、冗談だよ。ルーク様」
そう言って優しく微笑む白いロングヘアーの美女と朗らかに笑う紫色のショートボブの少女。ルークは不覚にも少し見惚れてしまった。
「改めまして、ルーク様。私は癒しの神"ファーナ"です。以後お見知りおきを」
「あたしは魔法神"シエラ"だよ! よろしく~」
白いロングヘアーの美女がファーナと名乗り、紫色のショートボブの美少女がシエラと名乗った。
「…………ところで、ここは一体……?」
ルークはもはや相手が神とか名乗った時点で、聞きたいことが山ほどあったのだが取り敢えず現状の把握が大切だと思い二人にそう問うた。だが、次に返ってきた答えでルークは更に混乱してしまう。
「ここは天界です。より正確に言うのであれば、神達が住む天界の入り口です……ってルーク様、どうしました?」
ルークが何やらさっきから挙動不審だった故に、ファーナは不思議な顔でルークにそう言う。
「あ、あの…………。幾つか質問させてもらっても……?」
ルークの問にファーナは「どうぞ、何なりとご質問してください」と言い、ルークにその先を促す。
「では、まず一つ目なのですが……。僕は死んだのでしょうか?」
 ルークがそういう質問をしてしまっても無理はないだろう。何せ、神と呼ばれるような存在であるなら死んだ後、その魂を処理するのが仕事のはずだ。とは言っても昔本で読んだだけなので、本当のところはわからないが。だが、その問はことごとく否定されることになる。
「いえ、違いますよ。ルーク様は統神、所謂神を統べる存在に選ばれたのです。ルーク様がそれをなかなかお信じになられなかったので……こうしてシエラに命じて、天界の入り口にルーク様を転移させた次第です……。ご理解頂けましたか……?」
「そうだよ、ルーク様。忘れちゃったの?」
ルークはファーナから説明を受けたことで徐々に混乱していた記憶も整理された。そのお陰か、転移する前の事をルークは思い出す。
「…………あ! 確か、ステータスを確認して下さいって声が突然脳内に響いてきて……! その時は僕も疲れていたから……。ステータスを確認したら、ステータスがおかしくなってて……。冗談か何かの類いかと思ってたけど……。本当に転移しちゃったのか……」
 ルークは最早、状況が状況なだけに目の前の二人が言っている事を信じざるを得ないのだった。

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