ゲームと良く似た異世界に来たんだけど、取り敢えずバグで強くなってみた

九九 零

模擬戦


俺のレベル。元は999。今は1。
しかし、ステータスはカンスト。これ以上上がる事がなく、体力と魔力ゲージは完全にバグってる。

そんなステータスに強引に引き上げられた身体能力で地面を少し強く蹴れば、当然、地面は爆ぜ、大きく捲れあがる。

ちょっと予想以上の力が出た。

足を地面に振り下ろした衝撃だけで大地が震え上がり、足を振り上げるだけで衝撃波が形となって地面を抉りながら直進する。

対するジーサンは、地面の揺れにも恐る事なく俺の放った衝撃波を刀を軽く振るうだけで打ち消し、ついでとばかりに不可視の斬撃を無数に放ってくる。

俺の格闘経験は柔道と空手と剣道のみ。しかも、全て中途半端で、全力で打ち込んだ事なんてなかった。
知識としてはサバットやムエタイや合気道など多種多様な戦闘技術はある。

だが、そんな知識や素人同然の小手先の技なんてプロに通用するはずがない。

素人の同然の動きで、不可視の斬撃を避ける事が出来る訳でもなく、全て『魔法の書 (EX)』で撃ち落とすしか出来ない。

「ふぅぉーっ!やりおるなっ!」

「結構必死だけどねっ!」

しかし、ジーサンはそれでも嬉しそうだ。

対する俺は、ジーサンの変な叫び声にツッコミを入れる余裕がなくて、本心を暴露してしまう。

俺の目を持ってしても捉えきれない速度で近付かれたかと思えば、俺が反応するよりも速く刀を振るってくる。

刀の刃が当たるスレスレで思考がジーサンの動きに追い付き、ギリギリで避ける事はできるものの、反撃しようにも、俺が避けた後にはジーサンはすぐに俺から距離を取っていて、離れた所から不可視の斬撃を無数に飛ばしてくる。

俺が出来るのは、有り余る力によって地を蹴り、拳を突き出し、『魔法の書 (EX)』を適当に振り回す事ぐらいだ。

ただまぁ、それだけでも離れた場所にいるジーサンの所まで余裕で衝撃波が襲い掛かり、攻撃の手を緩めさせる事ぐらいは出来ているんだけど。

ジーサンとて俺の攻撃を全て避ける事は出来ないようで、全部余裕で受け流していやがる。

「楽しいのぉぉ!!若人わかうどよぉぉ!!」

なのに、ジーサンは狂気に満ちてるのかと疑いたくなるほど、この戦いを全力で楽しんでいるようだ。

「ちょっと予想以上に強いな…」

俺はレベル1。だけど、ステータスがオール99999なんて言う無茶苦茶な数値。
謂わば、この世界では数値的には俺に敵うやつなんているはずがないわけだ。

でも、力では、やはり技には勝てない事が顕著に示される。

ジーサンの動きは少しずつだけど速く、より速くなって行く。
年老いた老人の癖して、見た目に削ぐわない動きで俺の周囲を動き回り、隙を晒した瞬間に近付いてくる。

これは、甘く見過ぎていた。

俺はジーサンに勝てない。
それはゲーム時代でレベルをMAXにして全ステータスをカンストさせ、最強装備を整えて挑んだプレイヤーでも『剣聖』と言う者に勝てなかったから易々と考えれたことだ。

だけど、今、この現状は現実であって、決まった動きしかできないゲームとは違う。

俺個人の俺なりの動きができ、俺の思う通りに身体を動かすことが出来る。

そして、それはジーサンも同じだと言うこと…。

でも、これでいい。これは俺の、強いては、俺達の力がこの世界でどの程度まで通用するか確かめる為の戦いだからだ。

本音を言うと、本気で殺し合いをした方が結果は分かり易いんだけど、まぁ、それは無理だろう。

故にーー。

「む?どうしたのじゃ?もう降参か?」

俺は『魔法の書 (EX)』を捨てた。

「いや、そろそろもう少し力を出そうと思ってさ」

「なんとっ。まだ先があると言うのかっ!それは良い!とても愉快じゃ!是非見せてくれ!」

戦闘狂…こんな人の事を指す言葉なんだろうな…。

「ジーサン。アンタも見せてよ。こんな戦いが本気な訳じゃないでしょ?」

「当たり前じゃろ。しかし、今までのお主の実力では本当に一瞬で終わってしまうぞ?」

ああ、そうか。
あれだけの猛攻が、ジーサンにとっては様子見の攻撃だったのか。

凄いよ、剣聖。さすがだ。

でも、元・超近接戦特化型ジョブの狂戦士バーサーカーを舐めてもらっては困る。

「終わらないさ。きっと満足すると思うよ。……スキル『狂戦士バーサーカー』」

ゲームでは…。そう。ゲームでは、操作キャラの周囲に赤黒いオーラが滲み出て、一撃一撃が必殺の攻撃となり、敵の攻撃を受けても怯みすらしない最強スキルであり、ジョブ狂戦士バーサーカーの唯一無二のスキルだった。

「うぐっ…」

けれど、それを身を以て実感するのは、余り良い気分ではーーーいや、良い気分だ。

すこぶる気持ちいい。

身体の内側から無限に湧き出すような力の本流。今すぐに全てを出し尽くして、目の前のジーサンも、この地面も、この世界そのものも、何もかもを破壊したくて堪らなくなる。

「くっ…クハ、クハハハハハハハッ!!」

この力を何かにぶつける事ができれば、どれだけ爽快か。

想像しただけで、笑みが溢れる。

「む…むむっ。これは…まさか…500年前の伝説のジョブ狂戦士バーサーカー…これは儂も意を決さなければならぬのぉ…」

見える物全てを破壊したくて堪らない。

「ーーーっ!!」

俺は地面を今出せるだけの力で殴った。
ただそれだけで、大地が激しく震え、爆風が天を貫く勢いで渦巻き、周囲の何もかもを吹き飛ばした。

そこの中に俺も含まれている。

吹き飛ばされた先で上手く着地し、目の前の惨劇を見やると、そこには酷くひび割れた大地があり、巨大な竜巻が雲を裂いていた。

竜巻が霧散すると、残ったのは巨大な穴。
まるで地獄にまで続いていそうな、深い、深い大穴が生まれていた。

これこそが、狂戦士バーサーカーと呼ばれるジョブの真髄。

圧倒的な力を前に、何人も近寄る事は出来ず、何もかもを全身を駆け巡る欲望と衝動のままに破壊し尽くす。

故に、狂戦士バーサーカーなのだと、スキルを発動してから気が付いた。

だからこそ、俺は冷静を保つ為にその時に出せた全力で地面を殴った。
危うく俺の意識までもが狂戦士バーサーカーに呑まれる所だったからこそ、爆発寸前だった力を込めて殴った。

でも、スキルは解除していない。

あくまでも、狂戦士バーサーカーの底無しの力に呑まれないよう、冷静を保つ為に地面を殴っただけなのだ。

「ふぅ…さて、ジーサン。続きをしよっか?」

俺はまだ大丈夫だ。
危なくなったらスキルを解除すればいいだけなんだから、それまで狂戦士バーサーカーの力に呑まれないように耐え抜けばいい。

そう考えつつ前方を見やると、なんと、あの衝撃と爆風の嵐をジーサンは耐え抜いていた。

俺のように吹き飛ばされたりせず、地面に両手両足を張り付いて僅かに後退しただけに留まったのだ。

やはり、世界最強と謳われる者達と肩を並べる一人。伊達ではない。
彼は『剣聖』と呼ばれる人間バケモノだ。

俺なんかよりも、よっぽど人間バケモノらしい。

「……降参。降参じゃよ…。全盛期なら違ったと思うが、今の儂には無理じゃ…。お主のその力に敵うとは思えん…」

…え?

「それに、お主。その力を使いこなせていないじゃろ?これ以上続ければ、お主とて無事では済むまい。だから、やめじゃ、やめ。儂はお主に勝てん。その底知れぬ力を前にした途端、儂、年甲斐もなくチビってしもうたからの…」

「………」

…え?
なんて?

「ヒビキ、と言ったか。狂戦士バーサーカーのジョブを持つ者は皆、力に呑まれて自ら破滅して行く。そんな者達に儂から言えるのは、己が心を信じ、心の奥底に秘める大切なモノから決して目を逸らさない事じゃ」

突然なにやら話し始めてる。

でも、ジーサンと俺との距離が大きくて、何言ってるのか全く聞こえないんだけど…。

「………ふぅ…」

取り敢えず、狂戦士バーサーカーのスキルを解除すると、全身の力が一気に抜けて、その場にストンッとお尻か脱力しきって座り込んでしまった。

どうやら、狂戦士バーサーカーのスキルは何もしてなくとも使用後の反動は大きいみたいだ。

少しの間、全身の疲労が大きすぎて動けずに空を見上げて時間を潰し、少しばかり体力が回復したのでジーサンの元に歩み寄ると…。

ジーサンはまだ喋っていた。

「ーーそんな感じで、若い頃はかなりの無茶をしたもんじゃ。しかし、儂も歳を食い過ぎた。お主のような強者と本気でやり合うなど、年寄には荷が重すぎる」

まぁ、喋らせておくか。

…っと思ったけど、物凄い勢いでこちらに向かってくる団体様がマップの端に確認できたので、そうも言ってられなくなった。

「ねぇ、ジーサン。なんかコッチ来てるんだけど?」

「んあ?ああ。街の兵士共じゃな。まあ、ここまで派手に暴れたから、来て当然じゃ。来るのが遅いぐらいじゃよ」

街の警備に呆れを示すジーサン。
そんなジーサンとは違って、俺は別の事に不安を感じる。

「これ、大丈夫かな?」

俺の空けた大穴。
街の外だから戦闘行為…もとい、模擬戦は問題ないとは思うけど、街の近くに大穴なんて空けたんだ。

問題にならないといいんだけど…。

「ふむ。おそらく、捕縛されるのじゃ。数日…いや、数週間か数ヶ月かは牢の中じゃのぉ」

ダメじゃん。
ジーサンはなんでそんなに呑気なんだよっ。

「儂はまだ牢の中には行った事がないからのぉ」

ホッホッホと笑いながら語るジーサン。
って言うか、勝手に思考を読まないで欲しい。

「ヤバイじゃん!?逃げるよっ!」

「む?どうすると言うのじゃ?ここは隠れる場所すらないぞ?」

言われて気が付いた。周囲一帯はだだっ広い草原地帯。
多少の凹凸はあるものの、決して隠れる事に優れているわけでもない。あと残っているのは俺が空けた大穴だけど…。

中は深い。深すぎて、底が全く見えない。そんな所に飛び込むなんて、臆病な俺には無理だ。

ならーー。

「ジーサン。ちょっと動かないでね。『インビシブル』」

ジーサンの肩に手を置いて魔法を使ってみた。

ゲームでは魔物から逃げる時に使う、姿を消す魔法だが、それが本当に使えるかなんて試した事がない。故に、これは一種の賭けになる。

でも、これだけじゃ不安が沢山残るし、追加で魔法を使う。

「『サイレント』『短距離転移』」

音を消し、目に見える範囲だけ移動が可能な転移を使って今の場所から離れる。

ちなみに、転移も試しで行った。無理だった場合、走って逃げるつもりだった。
俺の足と筋力ステータスなら、ジーサンを抱えて新幹線並みのスピードで移動するなんて余裕だし。

でも、転移は上手く起動して、目的の場所に移動できた。

兵士が走って来ているのは、俺達が元居た大穴の方向だ。
だから、進行方向から大きくズレた場所に移動した。もし俺達が見えているのなら、こちらに向かって来てもおかしくないはず。

その場合は、本気で走って逃げる。

距離が距離だ。俺達の姿を捉えた所で、遠すぎてどこの誰かなんて分かる筈もない。
ちなみに、『遠距離転移』も視野には入れてるが、余り使いたくはない。

遠くに行くのは良いけど、目に見える範囲だけの『短距離転移』ではなく、長距離だ。
マップを参照にする訳でもなく記憶だけが頼りの転移なんて、怖くて使えない。

「い、今のは…瞬動じゃない…まさか、転移かっ!?お主、一体何者なのじゃっ!?」

「シィィッ!」

ジーサンが余りにも叫ぶものだから、魔法を使って音を消しているとはいえ兵士達に見つからないか心配でたまらない。

兎に角、俺はジーサンを黙らせてから、ジッと兵士達の動向を伺う。

兵士達は迷わず大穴へと向かい、辿り着くや否や、周囲を見渡し始めた。

緊張の一瞬だ。

でも、その一瞬もすぐに終わった。

どうやら俺達の事は見えなかったようで、互いに首を左右に振って『誰もいない』と示しつつ、改めて大穴を覗いている。

「ふぅ…。冷や汗かいた…」

「幾つか聞きたいのじゃが?」

「街に戻ってからね」

「むぅ…」

取り敢えず、こんな所で長居した所で得なんてない。さっさと安全な街に戻るのが最善だと判断したので、急ぎ足で俺達は街へと帰還した。


〜〜〜


街に戻った後、本来の予定ならリョウの様子を見に行こうと思っていた。

でもーー。

「のぉ、もう良いじゃろ?儂の問いに答えてはくれぬのか?そろそろ儂グレちゃうぞ?小童のように駄々を捏ねて暴れるぞい?」

「それは困る…って言うか、さっきから何度も言ってるけど、もう少し待ってって」

「いつまで待てばいいのじゃ!?儂、もう我慢できないのじゃ!」

「はぁ…」

子供かよ…。

リョウに会う前にジーサンに事情を説明しなきゃならなさそうだ。

「仕方ないなぁ…。じゃあ…」

周囲を見渡して、落ち着いて話の出来る場所を探す。

そう言えば、この付近は俺を兄貴と慕ってくれている冒険者達が教えてくれた酒場の近くだな。

マップにもジョッキと酒瓶の絵が描かれている。

確かにそこなら客も少ないし、『サイレント』の魔法を使えば秘密の漏れない話の場に使えそうだ。

よし、そこにしよう。

「ここで話すのもアレだし、少し場所を変えようか」

「ふむ。内密の話か。胸が踊るのぉ」

見た目は老人の癖して、子供っぽい所もあるんだね。
随分と変わった人だ。

そんな訳で、場所を移動し、『渡り鳥の酒場』と言う名前のバーのような酒場へと足を運ぶ。

「いらっしゃい。…って、あれ?今朝の神父様じゃねぇか?忘れ物か?」

店員…いや、ここの店主か?
何でもいい…そうだね…マスターとでも呼ぶか。

出迎えてくれたマスターは、朝にも見たけど、やっぱり山賊にしか見えない風貌をしている。
服装も獣の革を使っているのが分かるもので、本当に街の外で見かけたら盗賊だと勘違いして殺してしまいそう。

それは兎も角。

「いや、このジーサンと少し内密な話をしに来ただけだよ」

「そうか。なら、奥の部屋を使いな」

マスターは、首をクイッと動かして奥にある扉を顎で指した。
生まれて初めてのVIP待遇だ。

「いいの?」

「良いも何も、ウチからしたら今朝は大助かりだったんだ。だから、アンタに使ってもらえるなら大歓迎だよ」

「そっか。なら、遠慮なく使わせてもらうよ」

使わせてくれるのなら、遠慮なく使わせて欲しい。
一応『サイレント』の魔法は使うけど、念の為だ。

「おう。後で適当な飲み物を見繕うから、入って待っていてくれ」

「酒はなしで」

「おいおい、ここは酒場だぞ?…まぁ、良い。ジュースでいいよな?ジーサンも同じでいいか?」

「儂は水で頼む」

そんな感じで注文を済ませた後、奥の部屋に入る。

奥の部屋は、そこまで広くなくて小部屋と言って良い広さだった。
部屋の中央に机があり、卓を囲む形でソファが置かれている。

それを見た俺の脳内には、ある似た光景を思い出した。

ーーキャバクラ?

もし、ここに壁がなく、女の人達が接待してくれるシステムだったら、まさしくそんな雰囲気を思わせた。

とりあえず、出入り口で立ち止まっている訳にもいかず、適当な場所に腰を落ち着ける。
その正面にジーサンが座った。

そして待つ事数分。

「待たせたな」

そう言いながらマスターが部屋に入り、ジュースの入ったコップと水の入ったコップを机に置くと出て行った。

「さて、話をする前に『サイレント』。…ジーサン、聞こえる?」

「うむ。聞こえるぞい」

魔法の範囲設定は成功か。

ゲームと違って、この世界は想像力イメージによって魔法を細かく操れるみたいだな。
便利なのか、便利じゃないのか…。

「じゃあ、まずは改めて自己紹介。俺はココハ・ドコ」

「ここは酒場じゃろ?」

そうなるよね。もう慣れたよ…。

「違うよ。俺の名前がココハ・ドコ。リョウにはヒビキって呼ばれてるし、別にどっちでも良いんだけどね」

「そうか、そうか。随分と変わった名前じゃな。それじゃあ、儂もヒビキと呼ばせてもらうのじゃ」

ジーサンは水を一口だけ飲んで口元を潤わせてから話す。

「儂は剣聖のアルトリウスじゃ」

「アルトリウスゥッ!?」

その名前を聞いた途端、俺は驚きすぎて立ち上がってしまった。
でも、それは仕方のない事だと思う。

「なんじゃ?もしかして、儂を疑っておったのか?ほれ、ここに身分証明もあるぞい?剣聖と書いておるじゃろう?」

自慢気に身分証明となるカードを見せられ、そこには本当にアルトリウスの名前と剣聖の文字が…。
いや、でも、俺が驚いてるのはそっちじゃないんだ。

「なんで生きてるのっ!?」

「儂が幾ら歳食っとるからと言って、それは酷いのじゃっ!」

ああ、ごめん。
言葉が足らなかったみたい。

「アルトリウス…」

それは、ゲーム時代ーー500年前に剣聖だった者の名前だ。

「勇者と会った事があったり…する?」

「勿論じゃ。その頃は現役じゃったからな。何度も勇者を鍛えてやったわい」

ホッホッホと笑って事もなさげに答えるジーサン。いや、アルトリウス。

って事は…このジーサンの歳って…。

「ちなみに、儂は520歳じゃ。長寿の秘訣は、剣聖に成った者にだけ許される霊山にある『神秘の泉』を飲む事が出来るからじゃ」

心の声を読むなよ。

っと言うか、そのアイテム持ってるんだけど。剣聖にだけしか許されないとか…出したら不味い感じだったりするのかな?

あぁ。出してみたくなってきた。

けど、我慢。リョウじゃないんだし、わざわざ問題になるような事を持ち出さなくたっていいじゃないか。

「アルトリウス。500年前の剣聖…絶対に勝てない相手…。まさか、まだ生きてたなんて…」

心底驚いたよ。ホントに。

「まだまだ死ねんよ。なにせ、まだ剣の道には高みがある。儂は、その高みに一歩でも近付き、後世に残す為に生き長らえてるのじゃ」

「で、そこから逃げ出してきた…と?」

「言うな。分かっておる。……今頃、弟子共が血眼になって儂を探しているじゃろうなぁ」

遠い目をして、どこかで師匠を探し回る弟子達を思い浮かべるアルトリウス。

でも、そんな瞳はすぐに消えて、俺へ好奇心を多分に含んだ瞳を向けてきた。

「与太話はここまでにして、お主の話を聞かせてくれぬか?お主…いや、お主達はなぜそこまで強いのじゃ」



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