異世界冒険EX
ケイトの視点
「署長。只今、戻りました」
ケイトは今回の報告を行う為に、署長の部屋へと来ていた。
署長自身は別の場所に居る為、部屋にある通信魔法の道具を使っての連絡となる。
「お疲れ様です。随分と遅かったようですね?」
優しげな男性の声が返ってくると、ケイトは一呼吸置き、報告を始める。
「今回の旅人は異世界人でした。……固有魔法は記憶に有るものを作り出す魔法。警察に引っ張ることは失敗してしまいました。申し訳ありません」
「異世界人ですか? それはおかしな話しですね」
むむむ……と唸る通信先の男。一方でケイトは怪訝な表情を浮かべている。
「……? ですが、同じ異世界人とされるドルゲと意気投合していましたし、固有魔法も使用していたので間違いないかと」
「ふむ……」
「もしも……今回の旅人がドルゲの仲間となってしまった場合、我々の脅威となる可能性が高いです。どう致しましょうか?」
「……二人を会わせたのは失敗でしたね。それに私はドルゲを始末しておくよう伝えておいたはずですが?」
「こちらも私一人でドルゲを始末するのは不可能だとお伝えしたはずです!」
少しだけ感情がこもった声で叫ぶケイト。彼女だって死にたくはない。
自分より戦闘力では上の賞金稼ぎの男性も、署での先輩もドルゲには敵わなかったのだ、挑めるはずがない。
「あなた自身を使ってもですか?」
「どういう……意味ですか?」
「……あなたの性別は何ですか?」
「署長! いくら署長の命令でもそれは……」
「そんな事が言える立場ですか? あなたの妹や弟を盗賊から助けてあげたのは誰ですか? それに私が援助しなければ、あの小さな孤児院なんて簡単に潰れてしまいますよ」
それを聞いたケイトの顔が青ざめ、そして怒りで歪む。
彼女の生まれは別の街の商人の家だ。
仕事の見学として、弟と妹と共に両親についてカモミールへと向かった。
何度も通った村であった事に加え、護衛も雇っていた。
だが、護衛も両親も盗賊から自分達を守って死んでしまった。
そして妹と弟とを抱き締め、震えている所を署長に助けて貰ったのだ。
その後、署長の援助する孤児院で育ち、十五を迎えると孤児院を出て、大恩のある署長の元で恩返しをする為に働いていた。
……孤児院には未だに弟も妹もいる。それに優しい先生も、小さな子どもたちも。
「……署長……それがあなたの本性ですか? 私の記憶にあるあなたは……!」
「大丈夫ですよ。どうせすぐに忘れますから」
「え?」
忘れる? そんな訳ないでしょう。ケイトは思わず、素っ頓狂な声をあげる。
「それよりその異世界人が気になりますね……他に情報はないのですか? いえ、こちらの方が早いですね」
「え!?」
ケイトの様子を気にする事もなく、署長は何らかの魔法を使用したようだ。
ケイトはしゃがみ込み、脂汗を浮かべている。
「ふむ。……いいですか? ケイト。あなたの妹や弟が平和に孤児院で暮らして欲しいなら、私の言うとおりにしなさい」
「……わかりました」
ケイトは何故か一瞬ふらついてしまったが、気を取り直して通信を続ける。
今聞こえた声も記憶に有る署長の声とは少し違う、冷たく、底冷えするような声だ。
この人は最低だ。そう思っても今は従うしかない。いつか隙を見て殺そう。ケイトはそう考えた。
「私は大切な話し合いがあるので、あと二時間は戻れません。その間にユウトとやらを私の部屋に連れて来てください。これは絶対です。あなたが使えるものは全て使いなさい、村の者にも協力するよう伝えておきます。いいですね?」
「っわ、わかり、ました」
ケイトがそう返事をすると通信は切られた。
ケイトは少しふらつきながらも、ゆっくりと部屋から出て行った。……署長にユウトさんの名前教えたっけ? そんな事を考えながら。
ケイトは今回の報告を行う為に、署長の部屋へと来ていた。
署長自身は別の場所に居る為、部屋にある通信魔法の道具を使っての連絡となる。
「お疲れ様です。随分と遅かったようですね?」
優しげな男性の声が返ってくると、ケイトは一呼吸置き、報告を始める。
「今回の旅人は異世界人でした。……固有魔法は記憶に有るものを作り出す魔法。警察に引っ張ることは失敗してしまいました。申し訳ありません」
「異世界人ですか? それはおかしな話しですね」
むむむ……と唸る通信先の男。一方でケイトは怪訝な表情を浮かべている。
「……? ですが、同じ異世界人とされるドルゲと意気投合していましたし、固有魔法も使用していたので間違いないかと」
「ふむ……」
「もしも……今回の旅人がドルゲの仲間となってしまった場合、我々の脅威となる可能性が高いです。どう致しましょうか?」
「……二人を会わせたのは失敗でしたね。それに私はドルゲを始末しておくよう伝えておいたはずですが?」
「こちらも私一人でドルゲを始末するのは不可能だとお伝えしたはずです!」
少しだけ感情がこもった声で叫ぶケイト。彼女だって死にたくはない。
自分より戦闘力では上の賞金稼ぎの男性も、署での先輩もドルゲには敵わなかったのだ、挑めるはずがない。
「あなた自身を使ってもですか?」
「どういう……意味ですか?」
「……あなたの性別は何ですか?」
「署長! いくら署長の命令でもそれは……」
「そんな事が言える立場ですか? あなたの妹や弟を盗賊から助けてあげたのは誰ですか? それに私が援助しなければ、あの小さな孤児院なんて簡単に潰れてしまいますよ」
それを聞いたケイトの顔が青ざめ、そして怒りで歪む。
彼女の生まれは別の街の商人の家だ。
仕事の見学として、弟と妹と共に両親についてカモミールへと向かった。
何度も通った村であった事に加え、護衛も雇っていた。
だが、護衛も両親も盗賊から自分達を守って死んでしまった。
そして妹と弟とを抱き締め、震えている所を署長に助けて貰ったのだ。
その後、署長の援助する孤児院で育ち、十五を迎えると孤児院を出て、大恩のある署長の元で恩返しをする為に働いていた。
……孤児院には未だに弟も妹もいる。それに優しい先生も、小さな子どもたちも。
「……署長……それがあなたの本性ですか? 私の記憶にあるあなたは……!」
「大丈夫ですよ。どうせすぐに忘れますから」
「え?」
忘れる? そんな訳ないでしょう。ケイトは思わず、素っ頓狂な声をあげる。
「それよりその異世界人が気になりますね……他に情報はないのですか? いえ、こちらの方が早いですね」
「え!?」
ケイトの様子を気にする事もなく、署長は何らかの魔法を使用したようだ。
ケイトはしゃがみ込み、脂汗を浮かべている。
「ふむ。……いいですか? ケイト。あなたの妹や弟が平和に孤児院で暮らして欲しいなら、私の言うとおりにしなさい」
「……わかりました」
ケイトは何故か一瞬ふらついてしまったが、気を取り直して通信を続ける。
今聞こえた声も記憶に有る署長の声とは少し違う、冷たく、底冷えするような声だ。
この人は最低だ。そう思っても今は従うしかない。いつか隙を見て殺そう。ケイトはそう考えた。
「私は大切な話し合いがあるので、あと二時間は戻れません。その間にユウトとやらを私の部屋に連れて来てください。これは絶対です。あなたが使えるものは全て使いなさい、村の者にも協力するよう伝えておきます。いいですね?」
「っわ、わかり、ました」
ケイトがそう返事をすると通信は切られた。
ケイトは少しふらつきながらも、ゆっくりと部屋から出て行った。……署長にユウトさんの名前教えたっけ? そんな事を考えながら。
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