異世界冒険EX
アジト
「それにしても、ユウトさん強いですね」
洞窟へと向かう途中、感心したような表情でケイトが話しかけてくる。まあ、今は魔物も居ないし別にいいけれど。
「そうか?」
「ええ、なんというか動きに無駄が無いというか。……剣も使えたんですね」
確かにだいぶ今の能力に合わせた動きが出来るようになってきた。これならある程度上の相手でもやれるかも知れない。
油断は禁物だけれど。
というか正直、当分はまともに戦いたくない。
「まあな。……というか、ケイトは銃を使わないのか?」
「弾は有限ですからね」
「にしても素手って……」
女性が魔物を素手で殴ったり引きちぎったりするのは、流石に見ていて楽しいものではない。見た目がおっとり巨乳さんだし。
……仕方ないな。
「ちょっと弾を見せてもらっていいか?」
「え? はい」
ケイトは指輪を使い、在庫の弾を箱ごと取り出す。有限とはいえ大分在庫ありそうだけど……。盗賊の数はそんなに多いのか?
「ありがと」
ケイトから受け取った箱から取り出した弾を眺めて、そのまま返す。どうやら地球にあるものとそう変わらないようだ。
もしかしたら俺と同じ能力を持った奴が作っているのかもしれない。
「<<創造魔法>>」
そして最初に転移した世界で手に入れた固有魔法である創造魔法を発動する。今はステータスのスキル欄に入っているが、効果は変わっていないようだ。
しいていうなら魔力消費が少し増えているぐらいか。
「あっ! すごい! え? それ何の魔法ですか? 固有魔法?」
「そうだ。俺の固有魔法は記憶にあるものを作り出す魔法だ」
創り出した弾をケイトに渡し、堂々と嘘をつく。完全に嘘って訳でもないけれど。本当の固有魔法は少なくとも異世界人と会わないとまったく意味がない。
「へー。便利そうですね。あ、ちなみに私の固有魔法は防御無効です」
「へー。強そうだな……って、固有魔法持ってんの!?」
「はい。持ってますけど?」
んな馬鹿な。固有魔法は別の世界からの転移者だけが使える魔法のはずだ。だからこそ、俺の魔法錬金も異世界人に会うまでは無駄だと思っていたんだが……。
(アイギス)
(わからん)
使えないアイギスに舌打ちしつつ、ケイトの方を振り返り、尋ねる。
「……今度魔物が出たら、ちょっと試しに使ってみてくれないか?」
「え? さっきから使ってますよ?」
俺の提案にケイトは驚いたように答える。
「は?」
「いやいや、ユウトさん。こんなかよわい女の子が能力なしに魔物を素手で倒せるわけ無いじゃないですか」
「……そういわれると、確かに」
かよわいかどうかはともかく、普通の女性が魔法を使わずに、あの硬い魔物を引き裂く事は常識的に考えて不可能だ。
でも、出来る奴知ってるしなあ……。しょうがない。
<<鑑定>>
名前:ケイト・マーベル
性別:女
種族:人間
職業:警察副署長
レベル:98
体力:50900/50900
魔力:2500/3200
物理攻撃力:7800
物理防御力:9800
素早さ :5600
魔法攻撃力:4800
魔法防御力:5900
運 :23000
スキル:炎属性魔法 回復魔法
固有魔法:防御無効……発動後十秒間、視界に入れた相手の物理防御力、魔法防御力を無効にする
マジか。結構便利だし……。
早速魔法錬金で指輪の一つに付加しとこうっと。
<<魔法錬金>>
「ただ、こっちはこっちで魔力が勿体無いんですよねー」
「あー……なら、弾は俺が作るから銃使ったら?」
「え、いいんですか? 銃弾って結構高いから助かります!」
固有魔法をパクらせて貰ったお礼のつもりだったが、満面の笑みを浮かべるケイトに少しだけ、罪悪感が湧いてくる。
いい子だけど多分敵側なんだよなあ。どうしたものか。
「そんなに俺の方は魔力使わないからな。それより固有魔法は生まれたときから使えたのか?」
「えーと……確か……あれ? ちょっと思い出せないですね。というか昔の記憶自体なんだかあやふや……」
これは、なにかあるな。
だが幻術にかけて調べるにしても隙をつかないとな。
「まあ今はいいか。魔物も出てきたことだしな」
「ですね」
俺達の前に狼のような魔物が走り寄ってくる。
俺はロングソードを女神の指輪から取り出し、構える。ケイトも左右の銃をここに来て初めて抜いた。
ちなみに腰に差した逆刃刀はあくまで人間用だ。魔物は殺していいから普通の剣を使う。
「あ、銃を使うのは洞窟の近くまでにしてくれよ。音で気づかれて待ち伏せされるのは面倒だ」
「了解」
「ウオオオオ!」
返事と同時に左右それぞれの銃口から放たれた弾丸。
それらは素早く走り寄ってきた狼の魔物たちの眉間に命中し、狼の魔物たちは叫び声をあげ、倒れた。
「凄いな。左右それぞれでそんな正確に狙えるなんて」
「ふふ。もっと褒めてもいいんですよ?」
「だが、まだまだ甘いな」
「ギャウ!」
木々に隠れながら回りこみ、音もなくケイトの首筋に噛みつこうとしていた三匹目の魔物を突き刺す。
「落ち着いて周りを見ないと危ないぞ」
「……うー赤っ恥です」
驚き、しりもちをついているケイトに手を差し出す。
ケイトは少し顔を赤くしながら、その手を掴み起き上がった。
「じゃ、行くか」
「はい。どんどん行きましょー」
その後はケイトが銃を使えることもあり、順調に洞窟の前まで辿り着いた。
だが、
「…………」
洞窟の入り口には二人の男が立っている。
何か会話しているようであまり真剣に見張りをしているようには見えないが、洞窟の周囲は完全に木々が伐採されているようで見晴らしがいい。見つからずに近付くのは難しいだろう。
「どうしたものかね……」
「どうします?」
「んー……頭はわからないけれど手下どもは頭悪そうだしなあ……。戦いになった後じゃ話し合いなんて出来そうもない……か。まあ、とりあえずついてきて」
「わかりました」
俺とケイトは隠れていた木からあえて物音を立て、洞窟の入り口に向けて歩き出した。ゆっくりと。
「誰だ!?」
当然、入り口の見張りが発見し、こちらへと走ってくる。手には武器を持っており、平和な話し合いは出来そうにない。
「……今だっ!」
見張りの二人が俺達と洞窟の入り口の中間まで来たところで、強化魔法を発動する。
強化したのは素早さ。一瞬にして入り口へと辿り着く。
「な!? はやっ!」
「お、おい! どうする!?」
見張りの男たちは残されたケイトと入り口の俺、どちらに行くべきか判断できず、動きを止めてしまった。
その一瞬を逃さず洞窟の中へと叫ぶ。
「ちわー三河屋でーす!」
「サブちゃん!?」
返事は早々にあった。一応、どの国でもいいようにこっちの言葉で言ってみたが、返ってきたのは日本語だった……。なら、一番やりやすい。
これで反応がなければ他のもので試したが、あまり流行がわからない世界もあるから面倒になるところだった。
中からドタドタと男たちが走ってくる。むさ苦しい。十人から二十人位か? 意外と多いな。
ちなみにアイギスじゃないが、俺も声帯模写は得意なのだ。これは異世界とか関係なく俺の昔からの特技だ。意外と一発芸としても使えるし、重宝している。
「お、お前地球人、それも日本人か?」
巨漢の男達の中でも一番体の大きな男が尋ねてくる。こいつが頭か。
「そーだよ。宇宙船地球号の日本支部の一員だよ。おっさんは?」
「誰がおっさんだよ。まだ二十四……って、まあお前から見たらおっさんか」
おっさんは俺が学生服を着ているのを見て、年齢差を自覚したようだ。てか二十四かよ。三十は超えてるかと思ったわ。顔的に。
まあでもあの国民的人気番組は年齢差があっても通じるからいい。
あ、でも外国人だったら微妙か? 今度外国の有名な何かを調べておこう。かめ○め波で全部いけるかな?
「それで何の用だ?」
「んー、異世界人が居るってあっちの人から聞いたからね、ちょっと顔を見に」
「はあ?」
「ま、いいじゃんいいじゃん。ほら、お酒もあるし元の世界の話でもしよーぜ」
創造魔法を使い地球のお酒を創り出し、それを両手で持ち上げて言ってみる。
飲みニケーションという奴だ。まあ、俺は飲まないけども。普通に不味いし。
大人になればわかるのかも知れないが。
「うおっ! ……驚いたぜ。それがお前の固有魔法か?」
「そう。記憶に有るものを作り出す魔法。便利だろ?」
「確かにな。俺の方は戦闘には使えるんだがなあ……って、まあいいか。敵じゃないなら歓迎するぜ。おい、野郎共、宴だ!」
「「わあああああああ!」」
「うるさいなぁ……」
盗賊達の歓声に思わず耳を塞ぐ。ダミ声の男の叫び声なんて聞いてて楽しいものじゃない。
それにしてもさすが盗賊……単純だ。頭も日本人のようだし、警戒心が薄い。
ま、展開速くて助かるけどな。
洞窟へと向かう途中、感心したような表情でケイトが話しかけてくる。まあ、今は魔物も居ないし別にいいけれど。
「そうか?」
「ええ、なんというか動きに無駄が無いというか。……剣も使えたんですね」
確かにだいぶ今の能力に合わせた動きが出来るようになってきた。これならある程度上の相手でもやれるかも知れない。
油断は禁物だけれど。
というか正直、当分はまともに戦いたくない。
「まあな。……というか、ケイトは銃を使わないのか?」
「弾は有限ですからね」
「にしても素手って……」
女性が魔物を素手で殴ったり引きちぎったりするのは、流石に見ていて楽しいものではない。見た目がおっとり巨乳さんだし。
……仕方ないな。
「ちょっと弾を見せてもらっていいか?」
「え? はい」
ケイトは指輪を使い、在庫の弾を箱ごと取り出す。有限とはいえ大分在庫ありそうだけど……。盗賊の数はそんなに多いのか?
「ありがと」
ケイトから受け取った箱から取り出した弾を眺めて、そのまま返す。どうやら地球にあるものとそう変わらないようだ。
もしかしたら俺と同じ能力を持った奴が作っているのかもしれない。
「<<創造魔法>>」
そして最初に転移した世界で手に入れた固有魔法である創造魔法を発動する。今はステータスのスキル欄に入っているが、効果は変わっていないようだ。
しいていうなら魔力消費が少し増えているぐらいか。
「あっ! すごい! え? それ何の魔法ですか? 固有魔法?」
「そうだ。俺の固有魔法は記憶にあるものを作り出す魔法だ」
創り出した弾をケイトに渡し、堂々と嘘をつく。完全に嘘って訳でもないけれど。本当の固有魔法は少なくとも異世界人と会わないとまったく意味がない。
「へー。便利そうですね。あ、ちなみに私の固有魔法は防御無効です」
「へー。強そうだな……って、固有魔法持ってんの!?」
「はい。持ってますけど?」
んな馬鹿な。固有魔法は別の世界からの転移者だけが使える魔法のはずだ。だからこそ、俺の魔法錬金も異世界人に会うまでは無駄だと思っていたんだが……。
(アイギス)
(わからん)
使えないアイギスに舌打ちしつつ、ケイトの方を振り返り、尋ねる。
「……今度魔物が出たら、ちょっと試しに使ってみてくれないか?」
「え? さっきから使ってますよ?」
俺の提案にケイトは驚いたように答える。
「は?」
「いやいや、ユウトさん。こんなかよわい女の子が能力なしに魔物を素手で倒せるわけ無いじゃないですか」
「……そういわれると、確かに」
かよわいかどうかはともかく、普通の女性が魔法を使わずに、あの硬い魔物を引き裂く事は常識的に考えて不可能だ。
でも、出来る奴知ってるしなあ……。しょうがない。
<<鑑定>>
名前:ケイト・マーベル
性別:女
種族:人間
職業:警察副署長
レベル:98
体力:50900/50900
魔力:2500/3200
物理攻撃力:7800
物理防御力:9800
素早さ :5600
魔法攻撃力:4800
魔法防御力:5900
運 :23000
スキル:炎属性魔法 回復魔法
固有魔法:防御無効……発動後十秒間、視界に入れた相手の物理防御力、魔法防御力を無効にする
マジか。結構便利だし……。
早速魔法錬金で指輪の一つに付加しとこうっと。
<<魔法錬金>>
「ただ、こっちはこっちで魔力が勿体無いんですよねー」
「あー……なら、弾は俺が作るから銃使ったら?」
「え、いいんですか? 銃弾って結構高いから助かります!」
固有魔法をパクらせて貰ったお礼のつもりだったが、満面の笑みを浮かべるケイトに少しだけ、罪悪感が湧いてくる。
いい子だけど多分敵側なんだよなあ。どうしたものか。
「そんなに俺の方は魔力使わないからな。それより固有魔法は生まれたときから使えたのか?」
「えーと……確か……あれ? ちょっと思い出せないですね。というか昔の記憶自体なんだかあやふや……」
これは、なにかあるな。
だが幻術にかけて調べるにしても隙をつかないとな。
「まあ今はいいか。魔物も出てきたことだしな」
「ですね」
俺達の前に狼のような魔物が走り寄ってくる。
俺はロングソードを女神の指輪から取り出し、構える。ケイトも左右の銃をここに来て初めて抜いた。
ちなみに腰に差した逆刃刀はあくまで人間用だ。魔物は殺していいから普通の剣を使う。
「あ、銃を使うのは洞窟の近くまでにしてくれよ。音で気づかれて待ち伏せされるのは面倒だ」
「了解」
「ウオオオオ!」
返事と同時に左右それぞれの銃口から放たれた弾丸。
それらは素早く走り寄ってきた狼の魔物たちの眉間に命中し、狼の魔物たちは叫び声をあげ、倒れた。
「凄いな。左右それぞれでそんな正確に狙えるなんて」
「ふふ。もっと褒めてもいいんですよ?」
「だが、まだまだ甘いな」
「ギャウ!」
木々に隠れながら回りこみ、音もなくケイトの首筋に噛みつこうとしていた三匹目の魔物を突き刺す。
「落ち着いて周りを見ないと危ないぞ」
「……うー赤っ恥です」
驚き、しりもちをついているケイトに手を差し出す。
ケイトは少し顔を赤くしながら、その手を掴み起き上がった。
「じゃ、行くか」
「はい。どんどん行きましょー」
その後はケイトが銃を使えることもあり、順調に洞窟の前まで辿り着いた。
だが、
「…………」
洞窟の入り口には二人の男が立っている。
何か会話しているようであまり真剣に見張りをしているようには見えないが、洞窟の周囲は完全に木々が伐採されているようで見晴らしがいい。見つからずに近付くのは難しいだろう。
「どうしたものかね……」
「どうします?」
「んー……頭はわからないけれど手下どもは頭悪そうだしなあ……。戦いになった後じゃ話し合いなんて出来そうもない……か。まあ、とりあえずついてきて」
「わかりました」
俺とケイトは隠れていた木からあえて物音を立て、洞窟の入り口に向けて歩き出した。ゆっくりと。
「誰だ!?」
当然、入り口の見張りが発見し、こちらへと走ってくる。手には武器を持っており、平和な話し合いは出来そうにない。
「……今だっ!」
見張りの二人が俺達と洞窟の入り口の中間まで来たところで、強化魔法を発動する。
強化したのは素早さ。一瞬にして入り口へと辿り着く。
「な!? はやっ!」
「お、おい! どうする!?」
見張りの男たちは残されたケイトと入り口の俺、どちらに行くべきか判断できず、動きを止めてしまった。
その一瞬を逃さず洞窟の中へと叫ぶ。
「ちわー三河屋でーす!」
「サブちゃん!?」
返事は早々にあった。一応、どの国でもいいようにこっちの言葉で言ってみたが、返ってきたのは日本語だった……。なら、一番やりやすい。
これで反応がなければ他のもので試したが、あまり流行がわからない世界もあるから面倒になるところだった。
中からドタドタと男たちが走ってくる。むさ苦しい。十人から二十人位か? 意外と多いな。
ちなみにアイギスじゃないが、俺も声帯模写は得意なのだ。これは異世界とか関係なく俺の昔からの特技だ。意外と一発芸としても使えるし、重宝している。
「お、お前地球人、それも日本人か?」
巨漢の男達の中でも一番体の大きな男が尋ねてくる。こいつが頭か。
「そーだよ。宇宙船地球号の日本支部の一員だよ。おっさんは?」
「誰がおっさんだよ。まだ二十四……って、まあお前から見たらおっさんか」
おっさんは俺が学生服を着ているのを見て、年齢差を自覚したようだ。てか二十四かよ。三十は超えてるかと思ったわ。顔的に。
まあでもあの国民的人気番組は年齢差があっても通じるからいい。
あ、でも外国人だったら微妙か? 今度外国の有名な何かを調べておこう。かめ○め波で全部いけるかな?
「それで何の用だ?」
「んー、異世界人が居るってあっちの人から聞いたからね、ちょっと顔を見に」
「はあ?」
「ま、いいじゃんいいじゃん。ほら、お酒もあるし元の世界の話でもしよーぜ」
創造魔法を使い地球のお酒を創り出し、それを両手で持ち上げて言ってみる。
飲みニケーションという奴だ。まあ、俺は飲まないけども。普通に不味いし。
大人になればわかるのかも知れないが。
「うおっ! ……驚いたぜ。それがお前の固有魔法か?」
「そう。記憶に有るものを作り出す魔法。便利だろ?」
「確かにな。俺の方は戦闘には使えるんだがなあ……って、まあいいか。敵じゃないなら歓迎するぜ。おい、野郎共、宴だ!」
「「わあああああああ!」」
「うるさいなぁ……」
盗賊達の歓声に思わず耳を塞ぐ。ダミ声の男の叫び声なんて聞いてて楽しいものじゃない。
それにしてもさすが盗賊……単純だ。頭も日本人のようだし、警戒心が薄い。
ま、展開速くて助かるけどな。
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