デスゲームは異世界で

鳥もち

1章 3話 洗礼

 
 悠斗は目の前が真っ白になっている最中、考える。
(ちょっと待てよ。年齢とか、職業とか全く選べて無いんですけどー!!)
 理不尽極まりない。取り扱い説明書に選択できると書いてありながら、
 一切出来ないクソゲー臭がした。
 金髪美少女に舞い上がり、ゲーム感覚で油断していた自分を殴りたい。


 暫くしてーー

 目の前が晴れてくる。
 ここは・・・
 心地よい風に靡く木々、膝まで伸びている草、
 所謂森というやつだろうか。

 すかさず近くの木の陰に隠れる悠斗。
「っふ。気配も無いし、とりあえず速攻襲撃って事はなさそうだ」

 勿論気配なんてわかるはずもなく、単なる強がりであった。
 兎にも角にも、まずは自分の状態を確認しなければ。

 設定などがゲームっぽかった以上、自分のステータスもあるだろうし、
 見れるはずだ。とりあえずステータス、と念じてみる。


「おお、当たりだ」

 目の前に半透明な画面が映し出された。


 名前:ユート
 Lv:10
 年齢:16
 種族:エルフ
 職業:狩人

 HP:150/150
 MP:210/210
 STR:60
 DEX:120
 INT:100
 MID:70
 CHA:30

 装備:王凛高校の学生服 狩人の弓 狩人の矢筒

 スキル
 夜目 遠視 弓術lv1 森渡

 ユニークスキル
  「   」「   」

 ???
 セラの加護


 ようし。色々突っ込みどころ満載じゃないか。
 だが、こういうのは理解していくのもまた楽しい。
 ラノベは勿論、ゲーム、アニメ好きとしては、大体は分かる。
 年齢が現実世界とそのままなのはまあいいとして、種族がエルフか。
 試しにと、自分の耳や髪を触ってみる。

「お、おぉ・・・」

 耳が確実にとんがっている。
 髪は物凄くサラサラで、掴んだ髪を見える位置まで持ってくると、
 黄色を薄くしたような色をしてて、光に当てると薄っすらと輝いていた。

 無性に鏡を見たくなったが、そんなものはない。
 仕方なくまたステータスに目をやる。

 ユニークスキルは意味不明として、セラの加護というのはなんだ。
 ここに来る前のあの子のことか?

 そんな事を考えていると、不意に目の前を風が通り過ぎる。
 ステータスを見ながら一喜一憂し、思考している悠斗は思い知る。
 ここは、単なる異世界召喚ではない。
 デスゲームの舞台である事に。


「んー?腕だけか。しかし呆気ないね。人間の体ってのは」

 見知らぬ男の声がした。それより、それよりも・・・

 痛っ
「っあああああああああああああ!!!!」
 半透明のステータス画面が真っ赤に染まるように、
 悠斗の両肘から先が無くなり血が吹き出している。
 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛


「んー、派生職業選択は間違ってなかったかなー?
 というか君、弱すぎね?ユニークスキルすら見てないけど?」

 発狂しそうな痛みに、その場に倒れ込んだ悠斗は、
 意識が朦朧とし始める中、辛うじて眼球だけを声のする方に向ける。
 すると、血塗られた短剣を放り投げながら、
 返り血が所々ある黒い服をきた奴がいた。
 あの短剣で斬られたのか。

 だめだ、視点がぼやける。

 いつの間にか悠斗の側にきた男は、
 悠斗の腹を目掛けて蹴りを入れる。何度も何度も。

「がっくふっ」
 血反吐を吐く悠斗。
 黒い服の男は、悠斗の髪の毛を乱暴に握ると、
 そのまま悠斗の体ごと、近くにある木に力づくで押し当てる。

「あっぐ・・!」
 相当強い力だったのだろう。
 息が上手く出来ない。口から血が流れる。

「さてと、君みたいのがいっぱいいれば、このゲームも楽々クリアなんだけど、
 そうもいかないだろうねー。
 それに、もしかしたら死に際に何かスキルでも使われたら怖いし…」

 最早目の半分も開けられない悠斗に、黒い男は独り言のように呟きながら、
 深紅に染まる短剣の切っ先を悠斗の首にあてがう。


「や・・べろ・・」
 必死に言葉にするが、木に叩きつけられた衝撃がまだ残っており、
 うまく発音できない。

「んー?なにー?わっかんねえわ」
 ほぼ見えていないのにわかる。こいつは俺を見ながら嘲笑っている。


 チクショウ!!チクショウチクショウ!!どうしてこうなった!!?

 何がデスゲーム・・・・・だ・・!!

 今までの人生の出来事や、ここまできた経緯、
 これからの想いや願いが頭を巡り、涙が溢れる。


 誰か・・・
 誰か・・・助けて・・・。

「最後に言い残す事は?なーんてね」
 無慈悲な男の言葉が、否応なく頭に響いた。

 深紅の短剣が悠斗の首を横に一振りすると、
 悠斗の首が、宙を舞った。



 ・・
 ・・
 ・・・
 ・・・
 ッザ・・
 ・・・・
 ザザッ・・・
 ・・・・・・
 セ・・の・・加がは・・ど・・ます。
 以降・・偉大・・な選へと・・派生 ・・ます。

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