T.T.S.
FileNo.4 『Sample 13』 Chapter 3-4
4
一体何が起こったのか?
ブリ―・ウィリアムズにはまるで分らなかった。
全身の節々が痛い。指一本動かすのすら億劫なほどに、体力が奪われている。
視界もおかしい。チラチラと明滅する赤が時折まっ黒闇を照らすばかりで、天も地も分からない。
そして何より、音がない。大気が奪われてしまったように、無音だ。
恐ろしさの余り叫んでみても、空気を吐き出すばかりで、何も響かない。
「誰か助けて!」
そう叫んでいるはずなのに、身体の中で響くはずの自分の声さえ聞こえなかった。
『何が起きたの?』
頭の中の僅かに冷静な部分が疑問を投げ掛ける。
必死に身体を起こしながら、ブリ―はその冷静な部分に縋りついた。誰も答えてくれないのならば、自分で考える以外ない。
どうやら、右半身に押しつけられているのが地面らしいと気づいた頃に、少しだけその瞬間を思い出せた。
ちょうど、州の花でもあるハウチワマメのプランテーションに差し掛かった所だった。
「急げ!どんなトバッチリを受けるか分からないぞ!」
先頭を行くエディさんが、ブリ―たちに振り替える。
アセンズ一のチーズステーキ屋として、いつも笑顔を振りまいてくれる彼の、こんなに緊張感のある表情を見たことがなかった。
だが、次の瞬間、気さくな43歳の黒人男性の姿は消えてしまった。
その瞬間になにが起こったかは分からない。
だが、轟音と共に途轍もない衝撃波を正面から受け、ブリ―は吹き飛ばされた。
右腕が折れているのか、微動だにしない。
何とか左腕で上半身を持ち上げ、少女は改めて辺りに目を凝らす。すぐ隣に、同じクラスのアダムが横たわっているのが見えた。
「アダム。生きてる?」
軽く身体を揺すってみると、アダムは唸り声と共に覚醒した。
「……ブリ―?一体何が……」
「……わかんないけど、よくない事」
「……そんな……」
「ごめんね。手を貸したいんだけど、私も右の腕が折れてるみたいなの。自分で立てる?」
「……そんな、どうして……どうして……」
「アダム。とにかく逃げましょう」
「どうしてこんな事に……」
「早く逃げなきゃ……」
次が来るかも、と言いかけて、ブリ―は気づいた。
「アレは何?」
それは、見たこともないほど潰れ、赤々と熱を湛えたまま転がる金属の塊だった。
その大きさはブリ―の身長を遥かに超える高さがあり、同時に、彼女を2~3人は覆い隠せそうなほどだ。
元が何だったのかは、もはや推測も出来ない。
だが、間違いなくこんな物はこの場所にはなかった。
それだけは間違いない。
『じゃあ、コレのせいでみんなは……』
ブリ―の頭に、再びあの男たちの姿が蘇る。
彼らが何者だったのかは分からない。
だが、今あの場所で起こっていることに、連中が少なからず関わっていることだけは分かる。
「……何てこと」
ふつふつと、ブリ―の中で怒りが沸き起こってくる。
彼女は今日、レディになった。
晴れやかな日だ。
祝福されるべき日だ。
笑顔になる日だ。
それなのに……。
「何てことしてくれたのよ!」
幼い少女は大人のレディになった。
だが、そんな素晴らしい日は、血みどろの記憶に占有されてしまった。
これほどの理不尽は、ブリ―の人生において初めての事だった。
一体何が起こったのか?
ブリ―・ウィリアムズにはまるで分らなかった。
全身の節々が痛い。指一本動かすのすら億劫なほどに、体力が奪われている。
視界もおかしい。チラチラと明滅する赤が時折まっ黒闇を照らすばかりで、天も地も分からない。
そして何より、音がない。大気が奪われてしまったように、無音だ。
恐ろしさの余り叫んでみても、空気を吐き出すばかりで、何も響かない。
「誰か助けて!」
そう叫んでいるはずなのに、身体の中で響くはずの自分の声さえ聞こえなかった。
『何が起きたの?』
頭の中の僅かに冷静な部分が疑問を投げ掛ける。
必死に身体を起こしながら、ブリ―はその冷静な部分に縋りついた。誰も答えてくれないのならば、自分で考える以外ない。
どうやら、右半身に押しつけられているのが地面らしいと気づいた頃に、少しだけその瞬間を思い出せた。
ちょうど、州の花でもあるハウチワマメのプランテーションに差し掛かった所だった。
「急げ!どんなトバッチリを受けるか分からないぞ!」
先頭を行くエディさんが、ブリ―たちに振り替える。
アセンズ一のチーズステーキ屋として、いつも笑顔を振りまいてくれる彼の、こんなに緊張感のある表情を見たことがなかった。
だが、次の瞬間、気さくな43歳の黒人男性の姿は消えてしまった。
その瞬間になにが起こったかは分からない。
だが、轟音と共に途轍もない衝撃波を正面から受け、ブリ―は吹き飛ばされた。
右腕が折れているのか、微動だにしない。
何とか左腕で上半身を持ち上げ、少女は改めて辺りに目を凝らす。すぐ隣に、同じクラスのアダムが横たわっているのが見えた。
「アダム。生きてる?」
軽く身体を揺すってみると、アダムは唸り声と共に覚醒した。
「……ブリ―?一体何が……」
「……わかんないけど、よくない事」
「……そんな……」
「ごめんね。手を貸したいんだけど、私も右の腕が折れてるみたいなの。自分で立てる?」
「……そんな、どうして……どうして……」
「アダム。とにかく逃げましょう」
「どうしてこんな事に……」
「早く逃げなきゃ……」
次が来るかも、と言いかけて、ブリ―は気づいた。
「アレは何?」
それは、見たこともないほど潰れ、赤々と熱を湛えたまま転がる金属の塊だった。
その大きさはブリ―の身長を遥かに超える高さがあり、同時に、彼女を2~3人は覆い隠せそうなほどだ。
元が何だったのかは、もはや推測も出来ない。
だが、間違いなくこんな物はこの場所にはなかった。
それだけは間違いない。
『じゃあ、コレのせいでみんなは……』
ブリ―の頭に、再びあの男たちの姿が蘇る。
彼らが何者だったのかは分からない。
だが、今あの場所で起こっていることに、連中が少なからず関わっていることだけは分かる。
「……何てこと」
ふつふつと、ブリ―の中で怒りが沸き起こってくる。
彼女は今日、レディになった。
晴れやかな日だ。
祝福されるべき日だ。
笑顔になる日だ。
それなのに……。
「何てことしてくれたのよ!」
幼い少女は大人のレディになった。
だが、そんな素晴らしい日は、血みどろの記憶に占有されてしまった。
これほどの理不尽は、ブリ―の人生において初めての事だった。
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