T.T.S.
FileNo.4 『Sample 13』 Chapter 1-3
3
クリスマスイブ。
宗教意識の薄い日本では、相変わらず本番のクリスマスを凌ぐ人気を持つこの日に仕事を入れられるのは、罰ゲームに等しい。
そして不思議なことに、この罰ゲームを受ける者たちは自然と集まる運命にあった。
「はい、ストレートフラァッシュ」
「……絵美たん絶対イカサマしてるっしょ?」
「何言ってるの、ジェーンちゃんなんかまだいい方よ。私なんてまた無役よ」
「マダム、これやっぱ間違いなく絵美たんと陰姫で不正に役買ってるって」
それなりに広いT.T.S.の医務室を、4人の女性が占拠していた。ベッドを寄せ合い、足を延ばしてテキサスホールデンに興じる彼女たちもまた、クリスマスイブに任務待機を命じられた悲しみの徒だ。
「負け惜しみにしても人聞きの悪いこと言うわね……っと、どうやら来たみたいね」
あらぬ疑いを掛けられた正岡絵美の言葉に、発言元のジェーン・紗琥耶・アークは眉を顰める。
「またそうやって興味を逸らせてイカサマですか」
「いや疑い過ぎだから」
T.T.S.No.1とNo.3の平和的な会話を前に、彼女たちのフィジカルヘルスを一手に担うマダム・オースティンは耳をそばだてる。
「……ちっきしょう」
扉の向こうを通り過ぎた呟きに、マダムは肩を竦めた。
「絵美ちゃんの言う通り、源ちゃん来たみたい……って、アギーがいない」
No.4アグネス・リーの姿がいつの間にか消えていた。無造作に置かれた彼女の手札は、ロイヤルストレートフラッシュだった。
「ちっくしょう、勝ち逃げされた。源がいると分かるとすぐイッちゃうんだから」
「もういないんだし、しょうがないでしょ。3人でもう一戦いこっか」
「んふっ♪何か今の言い方やらしい」
「コラ、下品よジェーンちゃん。絵美ちゃん、私が配るわ」
枕の上に纏められたトランプの束を取ったマダムが、手際よく山を切っていくのを脇に、紗琥耶はポツリと呟く。
「で?何で源呼び出されたの?」
その言葉に、そっとマダムと絵美はアイコンタクトした。
紗琥耶を対象に発せられた箝口令は、上手く機能している。そのことを確かめ合っていた。
彼女には悪い癖が多い。その一つに、「新人試食」がある。男女ともにお相手出来る彼女は、ニューフェイスが入るたびに性的にも暴力的にもその存在に強い興味を抱いてしまうのだ。
しかしながら、今回のニューカマーはこれまでとは毛色が違う。強さにおいては源を圧倒、ともすれば紗琥耶すら凌駕しうる破格の戦闘力を持ち、性的趣向こそ不明だが、関心は常に源に注いでいる。そんな新人、紗琥耶が興奮しないはずがない。
「さあね、どうせまた何かやらかしたんじゃない?」
だからこそ、絵美は臆面もなくウソを吐いた。
心理学に明るいアグネスは一発で見抜いただろうが、幸い彼女は重要な役割を担った関係者だ。
「そんな事言ったらかわいそうよ。休日返上で来てくれてるんだし、少し労って来てあげたら?」
「陰姫が行ってるし、めんどくさいからアタシはいいわ」
勧められれば断る紗琥耶の天邪鬼な一面を突いたマダムの言葉に、内心絵美は称賛を送る。
同時に、顔を合わせられない相棒に願う。
「何にせよ……上手くやってよ、源」
クリスマスイブ。
宗教意識の薄い日本では、相変わらず本番のクリスマスを凌ぐ人気を持つこの日に仕事を入れられるのは、罰ゲームに等しい。
そして不思議なことに、この罰ゲームを受ける者たちは自然と集まる運命にあった。
「はい、ストレートフラァッシュ」
「……絵美たん絶対イカサマしてるっしょ?」
「何言ってるの、ジェーンちゃんなんかまだいい方よ。私なんてまた無役よ」
「マダム、これやっぱ間違いなく絵美たんと陰姫で不正に役買ってるって」
それなりに広いT.T.S.の医務室を、4人の女性が占拠していた。ベッドを寄せ合い、足を延ばしてテキサスホールデンに興じる彼女たちもまた、クリスマスイブに任務待機を命じられた悲しみの徒だ。
「負け惜しみにしても人聞きの悪いこと言うわね……っと、どうやら来たみたいね」
あらぬ疑いを掛けられた正岡絵美の言葉に、発言元のジェーン・紗琥耶・アークは眉を顰める。
「またそうやって興味を逸らせてイカサマですか」
「いや疑い過ぎだから」
T.T.S.No.1とNo.3の平和的な会話を前に、彼女たちのフィジカルヘルスを一手に担うマダム・オースティンは耳をそばだてる。
「……ちっきしょう」
扉の向こうを通り過ぎた呟きに、マダムは肩を竦めた。
「絵美ちゃんの言う通り、源ちゃん来たみたい……って、アギーがいない」
No.4アグネス・リーの姿がいつの間にか消えていた。無造作に置かれた彼女の手札は、ロイヤルストレートフラッシュだった。
「ちっくしょう、勝ち逃げされた。源がいると分かるとすぐイッちゃうんだから」
「もういないんだし、しょうがないでしょ。3人でもう一戦いこっか」
「んふっ♪何か今の言い方やらしい」
「コラ、下品よジェーンちゃん。絵美ちゃん、私が配るわ」
枕の上に纏められたトランプの束を取ったマダムが、手際よく山を切っていくのを脇に、紗琥耶はポツリと呟く。
「で?何で源呼び出されたの?」
その言葉に、そっとマダムと絵美はアイコンタクトした。
紗琥耶を対象に発せられた箝口令は、上手く機能している。そのことを確かめ合っていた。
彼女には悪い癖が多い。その一つに、「新人試食」がある。男女ともにお相手出来る彼女は、ニューフェイスが入るたびに性的にも暴力的にもその存在に強い興味を抱いてしまうのだ。
しかしながら、今回のニューカマーはこれまでとは毛色が違う。強さにおいては源を圧倒、ともすれば紗琥耶すら凌駕しうる破格の戦闘力を持ち、性的趣向こそ不明だが、関心は常に源に注いでいる。そんな新人、紗琥耶が興奮しないはずがない。
「さあね、どうせまた何かやらかしたんじゃない?」
だからこそ、絵美は臆面もなくウソを吐いた。
心理学に明るいアグネスは一発で見抜いただろうが、幸い彼女は重要な役割を担った関係者だ。
「そんな事言ったらかわいそうよ。休日返上で来てくれてるんだし、少し労って来てあげたら?」
「陰姫が行ってるし、めんどくさいからアタシはいいわ」
勧められれば断る紗琥耶の天邪鬼な一面を突いたマダムの言葉に、内心絵美は称賛を送る。
同時に、顔を合わせられない相棒に願う。
「何にせよ……上手くやってよ、源」
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