T.T.S.

沖 鴉者

FileNo.4 『Sample 13』 Chapter 1-2


~2176年12月24日AM7:28 東京~

 リースやツリーに彩られ、古式ゆかしいクリスマスソングに溢れた街を、かなはじめ源は1人憮然とした表情で突き進む。
 誰もがクリスマス休暇に浮かれ、幸せそうな笑顔を浮かべていた。

『あぁクソ、忌々しぃ、働けってんだよバカども』

 緊急で呼び出された鬱憤を内心人々にぶつけながら、源はT.T.S.本部に入った。なお、突然のクリスマスキャンセルにブチ切れ、不満を爆発させてうるさいので、紫姫音は切ってある。
 しかしながら、彼女の不満も充分に理解出来た。
 何せ、これで3年連続だ。源でさえ不平不満が溜まっている。今回ばかりは、不満の1つでもぶつけてやらなければ気が済まない。
 そう息巻いて、源は扉を蹴破った。

「クソったれども!俺の休日オフを潰すのはそんなに楽しぃか?ああ⁉」
「お、来たね源ちゃん」

 がなり立てる声は静寂に包まれたT.T.S.待機ロビーに虚しく響き、帰って来たのはただ1人、ソファに座る鈴蝶の呑気な声だけだ。珍しいことに、職場では滅多にない女性の身体だ。
 しかし、今の源はそんな些細な変化を気に留められないほど鶏冠に来ていた。

「おぉ来てやったよ。お陰で紫姫音が切れ散らかして手が付けらんねぇ。毎年毎年狙ってイヴの日に呼び出しやがって、どぉぃうつもりだ?どぉしてくれんだよ、あぁ?」
「……そっか、うん、でも、そうだね。申し訳ない。私から事情を説明したいから、紫姫音ちゃんの電源、入れてくれる?」

「あぁ?」
「紫姫音ちゃんにもちゃんとお話ししてあげなきゃ可哀想だし。いい加減こっちからも埋め合わせをしなきゃ源ちゃんへの福利厚生がなってないでしょ?だからほら、紫姫音ちゃん起こしてあげて」

「……何のつもりだ?」
「何のつもりも何も、説明した通りだよ」

 色々と腑に落ちない点はあるが、紫姫音の怒りを鎮めてくれるなら、源は願ったり叶ったりだ。
 挑発にも聞こえる鈴蝶の言葉に、源はWITを叩きつける。

「上ぉ等だ、やれるもんならやってみろ!」
「ん?どこ行くの?」

「アンタの許可がなきゃ煙草も吸っちゃなんねぇのか?」
「そっか、ごめんね。もちろん行ってもらって構わないよ。私がその間に紫姫音ちゃんを説得しとく」

「ホッとしたぜ。じゃ、後は頼んだ」

 そう言って退室した源を手を振って見送り、鈴蝶はほくそ笑む。

「はいはい、頼まれましたよ。今年のクリスマスは・・・・・・・・・ね」

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