T.T.S.

沖 鴉者

FileNo.3 The truth in her memory Chapter 2-11

11

 突如、木佐が大声で笑い出し、源は眉を顰めた。

「何笑ってんだ」
「いや傑作だと思ってな」

「何がだ?……おぃテメェいぃ加減笑うのやめろ!」
「……すまない。余りに簡単に目的が果たせたからね」

 そういやぁ、と源は軽く息を呑む。
 この男の目的を、その口から聞けていない。
 正岡絵美は「最強を目指して跳んだ」と推察した。
 だがそうなると、当初木佐が目指した200年後への跳躍の筋が通らない。

『コイツの目的ねぇ……正味、クソどぉでもいぃな』
「だが絵美は違う」

「あぁ?」
「お前は今どうでもいいと思っただろうが、絵美は聞きたがるぞ」

 自信たっぷりに言い切る木佐の目は本気だった。
 少しだけ、源の中で好奇心が疼く。

「何で」
「言い切れるんだって?むしろお前はどうして分からない。何となく察しは付いているぞ。お前、絵美のパートナーなんだろ?」

「……」
「お前の力はこの目で見た。だから分かる。あの女がお前みたいな確かで強い力を傍に置かないはずはないからな」

 饒舌な木佐を見下ろしながら、源は反芻する。
 かつて、源は人間兵器である自らの主を絵美と定めた。彼女だけが自らを兵器として扱うべきであると認め、そう振る舞って来た。
 その決意は未だ変わらず、源は絵美にとって良い結果にるように身を捧げ、力を割いている。
 だが、彼女がどういったロジックで判断の優先順位を定めているかまでは、さすがの源も知らない。
 すでに源の好奇心は、身体を動かすほどには膨れ上がっていた。

「吹くじゃねぇか、面白れぇ言ってみろよ。元パートナーさんよ」

 1人のを巡って、2人の武器が腰を据えて話し合う。
 鈴蝶が聞いたら「見たかった!」と泣いて悔しがるだろうな、と他人事のように源は思った。

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