T.T.S.
FileNo.3 The truth in her memory Chapter 2-10
10
~1600年10月21日PM6:12 美濃~
土気臭さに仄かに混じる紫煙の臭いに、覚えがあった。
『懐かしい臭いだ』
最も自信と誇りで満ちていた頃を思い出して、木佐幸太郎は目を開く。
随分長い夢を見ていた気がした。
「……どこだ?ここは」
掴めそうなほど濃い闇の中、見覚えのあるLEDの緑色の光がぼんやりと木佐を照らしている。
「よぉやく起きたな」
聞き覚えのある声に目を眇めると、そこに男が1人、座していた。
起き上がろうとしたが、後ろ手に縛られて上手く身動きが取れない。
もがく木佐を嘲笑うかのように、男は伸びをする。
T.T.S.No.2い源。
天下無双の覇を争う2人の男を、たった1人で同時に仕留めた男。
木佐が知る限り、この男より強い者はいない。
「ここは……どこだかよく分かんねぇけど、こんなんがあんだからどっかの寺だろ」
煙草を投げ捨てたその手で、源は己の背後を指し示す。
仏像があった。緑青だろうか、緑の明かりに白く煌く部分が所々あり、その荘厳な佇まいに神秘性を加えている。
年代物で安っぽい造りの仏像に、木佐は顔を顰める。
「まさか、まだ関ヶ原にいるのか?」
「あぁ。亜実体化しちゃいるが、まだ関ヶ原だ」
そう言うと、源は木佐の目の前まで来て胡坐を掻いた。
「ちょい事情があってな、テメェは向こぉに連れ帰るわけにいかねぇんだ」
「何だと?」
「コイツ見ろ」
亜実体化空間ならではなことに、空中に資料が出た。
2023年の新聞記事だ。
そこには、佐々木小次郎の血痕が付いた布の発見について書かれていた。
「これが何だ?」
「テメェの血だ」
「あ?」
「テメェの血だっつってんだ。佐々木小次郎はテメェなんだよ木佐幸太郎」
言われていることが理解出来ないのか、目を白黒させる木佐に、しかし源は容赦なく告げた。
「木佐、テメェはここで死んでもらう。これまでの記憶を全部消して、こっちの用意した佐々木小次郎の記憶で今後は生きてもらう。これは時間の決めた決定事項だ」
~1600年10月21日PM6:12 美濃~
土気臭さに仄かに混じる紫煙の臭いに、覚えがあった。
『懐かしい臭いだ』
最も自信と誇りで満ちていた頃を思い出して、木佐幸太郎は目を開く。
随分長い夢を見ていた気がした。
「……どこだ?ここは」
掴めそうなほど濃い闇の中、見覚えのあるLEDの緑色の光がぼんやりと木佐を照らしている。
「よぉやく起きたな」
聞き覚えのある声に目を眇めると、そこに男が1人、座していた。
起き上がろうとしたが、後ろ手に縛られて上手く身動きが取れない。
もがく木佐を嘲笑うかのように、男は伸びをする。
T.T.S.No.2い源。
天下無双の覇を争う2人の男を、たった1人で同時に仕留めた男。
木佐が知る限り、この男より強い者はいない。
「ここは……どこだかよく分かんねぇけど、こんなんがあんだからどっかの寺だろ」
煙草を投げ捨てたその手で、源は己の背後を指し示す。
仏像があった。緑青だろうか、緑の明かりに白く煌く部分が所々あり、その荘厳な佇まいに神秘性を加えている。
年代物で安っぽい造りの仏像に、木佐は顔を顰める。
「まさか、まだ関ヶ原にいるのか?」
「あぁ。亜実体化しちゃいるが、まだ関ヶ原だ」
そう言うと、源は木佐の目の前まで来て胡坐を掻いた。
「ちょい事情があってな、テメェは向こぉに連れ帰るわけにいかねぇんだ」
「何だと?」
「コイツ見ろ」
亜実体化空間ならではなことに、空中に資料が出た。
2023年の新聞記事だ。
そこには、佐々木小次郎の血痕が付いた布の発見について書かれていた。
「これが何だ?」
「テメェの血だ」
「あ?」
「テメェの血だっつってんだ。佐々木小次郎はテメェなんだよ木佐幸太郎」
言われていることが理解出来ないのか、目を白黒させる木佐に、しかし源は容赦なく告げた。
「木佐、テメェはここで死んでもらう。これまでの記憶を全部消して、こっちの用意した佐々木小次郎の記憶で今後は生きてもらう。これは時間の決めた決定事項だ」
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