T.T.S.
FileNo.3 The truth in her memory Chapter-1-1
1
~2176年10月6日AM7:23 東京~
台風一過の青天が、鬱陶しいほど眩しかった。
「当て擦りかしら、こんな晴れ渡ってくれちゃって」
過ぎ去った夏を回顧するような、憎たらしいほど煌びやかな陽光の誘いは、自宅謹慎もあと僅かという身にはもどかしくて、正岡絵美は溜息を吐く。
――指揮系統に多大な混乱を招く行為に及んだT.T.S.No.3正岡絵美に対し、T.T.S.Master甘鈴蝶は1週間の自宅謹慎を命ず――
組織に従属する身の上では到底許されないことをした訳だが、それにしては処罰は驚くほど軽すぎる。
T.T.S.Masterたる甘鈴蝶の意向故不服はないし、そこに温情があることは十二分に理解しているが、弱音くらいは見逃して欲しい。
いい加減、手持ちのトレーニング機器での自主トレにも飽きがきていた。
それゆえ、呼び鈴は天啓だ。ましてやそれが自分への訪問者の鳴らしたものなら、願ってもない状況といえる。
だが、それにしても限度がある。
よりによって最も身近で厄介なトラブルメーカーが来るとは思わなかった。
「……」
「んだよ、折角寄ってやったのに、随分な表情じゃねぇか」
「あ、間に合ってます」
「なにがだ。ふざけてねぇで中入れろ。こっちもヒマじゃねぇんだ」
絵美の相棒、い源は玄関先で顰め面だ。
別段、この男が自身を襲うかも、とかそういった危惧はない。そんなことをすれば、源が自分の女に殺されるだけだ。
だけど、この男が呼び込むトラブルはいつだって面倒ばかりで、関わったが最後、どこまでも巻き込まれていくことになる。
謹慎も終わりに近づき、身体がウズウズしてきている身ではあるが、復帰一発目に源関連は若干重たいのも事実だ。
出来ればご遠慮願いたいが、こうして来てしまった相棒を追い払うほど、絵美も薄情ではなかった。
「いいわ、入って……なにか飲む?白湯?」
「……好きなもん出せ、飲み干してやる」
「お、言ったね。じゃあ張り切って飲み干してもらいましょ」
他愛のない会話をしながら、旧プラネタリウムの大広間に源を通す。犬猿の仲であるT.T.S.No.1が任務出向で不在なのは、なんともタイミングがよくて助かる。
案外、源もそれを狙って来たのかもしれない。
いつぞやの意趣返しが出来そうで、ほんの少しテンションが持ち直したところで、本題を尋ねてみる。
「それで?何の用事で来たの?」
出された白湯を躊躇うことなく口に運びながら、源は一枚の画像データを送って来た。
「そいつ、知ってんな?」
画像には、1人の男の姿がある。
源の言う通り、絵美の知る人間だ。
忘れるはずがない。
そいつは、絵美の人生でとても重要な位置にいる存在だ。
「跳んだの?コイツ」
わざわざ相棒の源が1人だけで来て、周到に画像が用意されていて、分かり切った関係性を確認して来る。
ならば、そういうことだ。
画像の男は、違法時間跳躍者になったのだ。
「絵美、一応確認しとくが」
「無関係よ。もう知らない男」
「……そぉか」
そう。もう無関係だ。
昔付き合っていた男がどうなろうが、知ったことではない。
~2176年10月6日AM7:23 東京~
台風一過の青天が、鬱陶しいほど眩しかった。
「当て擦りかしら、こんな晴れ渡ってくれちゃって」
過ぎ去った夏を回顧するような、憎たらしいほど煌びやかな陽光の誘いは、自宅謹慎もあと僅かという身にはもどかしくて、正岡絵美は溜息を吐く。
――指揮系統に多大な混乱を招く行為に及んだT.T.S.No.3正岡絵美に対し、T.T.S.Master甘鈴蝶は1週間の自宅謹慎を命ず――
組織に従属する身の上では到底許されないことをした訳だが、それにしては処罰は驚くほど軽すぎる。
T.T.S.Masterたる甘鈴蝶の意向故不服はないし、そこに温情があることは十二分に理解しているが、弱音くらいは見逃して欲しい。
いい加減、手持ちのトレーニング機器での自主トレにも飽きがきていた。
それゆえ、呼び鈴は天啓だ。ましてやそれが自分への訪問者の鳴らしたものなら、願ってもない状況といえる。
だが、それにしても限度がある。
よりによって最も身近で厄介なトラブルメーカーが来るとは思わなかった。
「……」
「んだよ、折角寄ってやったのに、随分な表情じゃねぇか」
「あ、間に合ってます」
「なにがだ。ふざけてねぇで中入れろ。こっちもヒマじゃねぇんだ」
絵美の相棒、い源は玄関先で顰め面だ。
別段、この男が自身を襲うかも、とかそういった危惧はない。そんなことをすれば、源が自分の女に殺されるだけだ。
だけど、この男が呼び込むトラブルはいつだって面倒ばかりで、関わったが最後、どこまでも巻き込まれていくことになる。
謹慎も終わりに近づき、身体がウズウズしてきている身ではあるが、復帰一発目に源関連は若干重たいのも事実だ。
出来ればご遠慮願いたいが、こうして来てしまった相棒を追い払うほど、絵美も薄情ではなかった。
「いいわ、入って……なにか飲む?白湯?」
「……好きなもん出せ、飲み干してやる」
「お、言ったね。じゃあ張り切って飲み干してもらいましょ」
他愛のない会話をしながら、旧プラネタリウムの大広間に源を通す。犬猿の仲であるT.T.S.No.1が任務出向で不在なのは、なんともタイミングがよくて助かる。
案外、源もそれを狙って来たのかもしれない。
いつぞやの意趣返しが出来そうで、ほんの少しテンションが持ち直したところで、本題を尋ねてみる。
「それで?何の用事で来たの?」
出された白湯を躊躇うことなく口に運びながら、源は一枚の画像データを送って来た。
「そいつ、知ってんな?」
画像には、1人の男の姿がある。
源の言う通り、絵美の知る人間だ。
忘れるはずがない。
そいつは、絵美の人生でとても重要な位置にいる存在だ。
「跳んだの?コイツ」
わざわざ相棒の源が1人だけで来て、周到に画像が用意されていて、分かり切った関係性を確認して来る。
ならば、そういうことだ。
画像の男は、違法時間跳躍者になったのだ。
「絵美、一応確認しとくが」
「無関係よ。もう知らない男」
「……そぉか」
そう。もう無関係だ。
昔付き合っていた男がどうなろうが、知ったことではない。
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