T.T.S.
FileNo.2 In Ideal Purpose On A Far Day Chapter 3-9
9
~1937年5月15日AM11:41 カタルーニャ共和国 バルセロナ~
「ジロジロこっち見んじゃねえよキモイんだよ」
もはや時間的遠近法の彼方にあった遠い過去を思い返している間に、紗琥耶の口に悪態が戻って来ていた。
源は眉をひそめる。
「行けんのか?」
「アンタ以外の相手だったらいつでもイケるわよ」
「そぉかよ」
紗琥耶が快復した以上、もはや2人に留まる意味はなかった。
源は皇幸美、紗琥耶は先程の男と、互いに異なる目標を追う。
本来スタンドプレーを旨とする2人だが、ピアスを通して絵美から監視されている状況下では、今一度擦り合わせはしておいた方が賢明だ。
「ただな、絵美の目もあっから、くっそ面倒臭ぇが状況共有しといた方がいぃ」
「ああ……そっか、視姦されてんだっけ……いいよ、股開けといてやるから挿入れたくなったら挿入れて」
変わらずウンザリする受け答えだが、チャンネルを開いただけ、源からすれば大きな譲歩だ。
絵美の誓約が実に効果的に行動を制約している証左だ。
そして、実の所、源はそんな状況が愉快になって来ていた。
「飽きねぇなぁ……まぁいぃ、終わらしたら適当に連絡すっからそっちもせいぜいバラバラにされねぇよぉに頑張んな」
「ちょっと待てアホ」
言いたい事を言ってさっさと立ち去ろうとすると、目線がクルリと回る。
「何すんだよ!」
「コレ、幸美ちゃんの身体に挿入れといた私のナノマシンの発信信号。終わったら返せ、そんで死ね」
「マジかよ」
舌を巻いた。
紗琥耶とて、伊達にT.T.S.No.1を張っている訳ではない。
さすがの仕事ぶりと褒めるしかなかった。
「糞ビッチにしちゃいぃ仕事すんじゃねぇか」
これで追跡は一気に楽になる。
しかも、それならば。
「さっきの野郎にも仕掛けたんだろ?」
あからさまに紗琥耶の旗色が変わった。
「中出ししたけど剥がされたわよ」
「ボロ負けじゃねぇか」
しかしながら、紗琥耶の追跡能力を前にすれば、さしたる問題もない。
何より。
「でも前戯から本番まで全部独り占め出来んだから、それで呑んであげる」
『おぉおぉ、盛り上がってんなぁ』
紗琥耶の攻撃性が大いに昂っていた。
飢えた獣の様な目はギラギラと熱を帯び、狂気的に吊り上げた口角を舌がなぞる。
「アンタこそアタシの邪魔すんじゃねえぞ。邪魔したら殺すからな」
「だろぉな、お前とだきゃ本気でやりたかねぇし、まぁせいぜい楽しめ」
紗琥耶との衝突は本当に心底嫌だし、そもそも歩く厄災同士がぶつかっては、この場が無事では済まない。
「じゃぁもぉいぃな、俺行くぞ」
「流れ弾でファックされて勝手にイけ」
互いに中指を突き出し合って、源と紗琥耶は真逆の方向に走り出す。
やがて2人は光学迷彩で街の景色の中に消えた。
~1937年5月15日AM11:41 カタルーニャ共和国 バルセロナ~
「ジロジロこっち見んじゃねえよキモイんだよ」
もはや時間的遠近法の彼方にあった遠い過去を思い返している間に、紗琥耶の口に悪態が戻って来ていた。
源は眉をひそめる。
「行けんのか?」
「アンタ以外の相手だったらいつでもイケるわよ」
「そぉかよ」
紗琥耶が快復した以上、もはや2人に留まる意味はなかった。
源は皇幸美、紗琥耶は先程の男と、互いに異なる目標を追う。
本来スタンドプレーを旨とする2人だが、ピアスを通して絵美から監視されている状況下では、今一度擦り合わせはしておいた方が賢明だ。
「ただな、絵美の目もあっから、くっそ面倒臭ぇが状況共有しといた方がいぃ」
「ああ……そっか、視姦されてんだっけ……いいよ、股開けといてやるから挿入れたくなったら挿入れて」
変わらずウンザリする受け答えだが、チャンネルを開いただけ、源からすれば大きな譲歩だ。
絵美の誓約が実に効果的に行動を制約している証左だ。
そして、実の所、源はそんな状況が愉快になって来ていた。
「飽きねぇなぁ……まぁいぃ、終わらしたら適当に連絡すっからそっちもせいぜいバラバラにされねぇよぉに頑張んな」
「ちょっと待てアホ」
言いたい事を言ってさっさと立ち去ろうとすると、目線がクルリと回る。
「何すんだよ!」
「コレ、幸美ちゃんの身体に挿入れといた私のナノマシンの発信信号。終わったら返せ、そんで死ね」
「マジかよ」
舌を巻いた。
紗琥耶とて、伊達にT.T.S.No.1を張っている訳ではない。
さすがの仕事ぶりと褒めるしかなかった。
「糞ビッチにしちゃいぃ仕事すんじゃねぇか」
これで追跡は一気に楽になる。
しかも、それならば。
「さっきの野郎にも仕掛けたんだろ?」
あからさまに紗琥耶の旗色が変わった。
「中出ししたけど剥がされたわよ」
「ボロ負けじゃねぇか」
しかしながら、紗琥耶の追跡能力を前にすれば、さしたる問題もない。
何より。
「でも前戯から本番まで全部独り占め出来んだから、それで呑んであげる」
『おぉおぉ、盛り上がってんなぁ』
紗琥耶の攻撃性が大いに昂っていた。
飢えた獣の様な目はギラギラと熱を帯び、狂気的に吊り上げた口角を舌がなぞる。
「アンタこそアタシの邪魔すんじゃねえぞ。邪魔したら殺すからな」
「だろぉな、お前とだきゃ本気でやりたかねぇし、まぁせいぜい楽しめ」
紗琥耶との衝突は本当に心底嫌だし、そもそも歩く厄災同士がぶつかっては、この場が無事では済まない。
「じゃぁもぉいぃな、俺行くぞ」
「流れ弾でファックされて勝手にイけ」
互いに中指を突き出し合って、源と紗琥耶は真逆の方向に走り出す。
やがて2人は光学迷彩で街の景色の中に消えた。
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