T.T.S.
FileNo.2 In Ideal Purpose On A Far Day Chapter 2-1
No.2 Walk Around in Civil War  [彼女の満たされない理由] 
~2176年9月30日PM1:14 東京~
1
ラウンジと隣接する着任者待機ロビーは、四畳半程の狭い空間だ。
小さなソファが一脚と、僅かばかりのドリンクやアルコールと軽食しかない部屋だが、ソファは紗琥耶の肢体で埋まっていた。
「ん……っ………は…………ぁ」
身悶える紗琥耶に合わせて、ソファがギシギシと揺れる。
昼日中の職場で、全裸で堂々と自慰に耽る彼女を、咎める者は誰もいなかった。
性感帯の感度を最大値に上げ、好みの状況を視覚野と聴覚野に直接叩き込み、脳内麻薬の分泌量を限界まで振り切れば、どんな麻薬や薬物もカスに感じる程凄まじい快感の坩堝に堕ちる。
性器を擦る手も止まらなかった。
しかし、蜜の様に甘い時間は扉の開く音で唐突に終わりを告げた。
45度目の絶頂を迎えてトロンとした目を開くと、ジンワリ滲む天井が角度のある光を受けて白いグラデーションを描いている。
「……はぁ……ったく、何で俺がテメェの相手なんかしなきゃなんねぇんだょ」
声に目を向けると、それはそれは不愉快な顔の彼が扉を塞いでいた。
「カウパートロトロ垂らしながら何じっくり見ちゃった?それとも視姦?視姦してた?」
「テメェの気持ち悪ぃオナニーなんざ、萎える要素しかねぇよタコ。とっとと行くぞ」
扉を閉め、部屋の奥まで一気に進んだ源は壁際にぴたりと背中を付けて直立する。
煽情的にゆっくりと下着を履く紗琥耶には目も向けず、源はT.T.S.Masterからの有り難い指示を思い出していた。
15分前。
腰の高さ程の大きさの自律系アンドロイドが次々と昼食を片付けて行く中、鈴蝶は姿勢を正して指示を出していく。
「じゃあ源ちゃん。時間跳躍お願いね、それから絵美ちゃん」
「ちょいちょいちょい、待てや主将!俺今日休みだぞ!?絵美は行けねぇとして、他にも人員いんだろ!んで俺が出なきゃなんねぇんだ。休みなんだから休ませろよ」
「ちょっと」
トントンと肩を叩かれた。
見ると、ロサが怪訝な顔でアグネスを指示して口を尖らせている。
「名前位呼んであげなさいよ。アンタに懐いてるっぽいのに、可愛そうじゃない」
うるさい外野は無視して、源は絵美に水を向けた。
「絵美、もぉコンディション戻ってんだろ?お前行ってくれよ」
「無理よ」
答えは、絵美からではなくマダムオースティンから聞こえた。
「あぁ?無理?どぉいぅ」
マダムは溜息を吐いて天井を指差す。
「Masterには報告しておいたんだけど……絵美ちゃん、貴女インフルエンザよ。今年発見された新型、Aチリ型ね。一応空調にはウイルス除去ナノマシンとワクチン浸潤ナノマシンを含ませてあるから感染者の拡大は防げていると思うけど、少なくとも今の絵美ちゃんを時間跳躍させるのは危険よ。極めて危険。歴史にない世界的流行を生む可能性が高いわ」
ガクリと肩を落とした絵美が、こちらに顔を向けて申し訳なさそうに口だけ動かす。
「ごめん」
『いやお前に謝られてもよぉ』
どうにかならないかと改めて鈴蝶を向いた源に、物凄く良い笑顔が待っていた。
「管轄外の事件に首を突っ込んだ上、しょっ引かれたのは誰かな?そこから出すのにどれだけの手続きと根回しが必要なのか知っているのかな?その為に生じるコストや手間をどう補填しようか悩む所だよね?」
嫌でも源の言葉が詰まる。
鈴蝶は畳み掛けた。
「アグちゃんには護衛任務なんて出来ない。でも、貴方の二つ名、そのもう一つの意味だったら?」
源は反論材料を探して視線を彷徨わせるが、結局言葉は出なくて。
「片手間さん、このお仕事、実は貴方向きだ。適任なんだよ」
肩を落として頷く以外、彼にやれる事はなかった。
源に続いて横に並んだ紗琥耶が、堂々と源の股間に手を伸ばす。
「それで?固ぁい意志とナニを持って任務にイこうって訳ね」
「人の記憶勝手に覗いてんじゃねぇよ」
股間の手を振り払うが、紗琥耶は腕を全く動かしていないのに、源の手は空を切った。
「そんなんじゃアタシは感じないって、分かってんでしょ」
溜息を吐いて抵抗を諦め、源は呟く。
「Up,Down,Jack Ass」
直後、源の姿が部屋から消えた。
その様子を見て、紗琥耶もまた呆れた溜息を吐く。
「これだから童貞や早漏は嫌なのよ、ホントふにゃチン……Orgasm keeps the doctor away」
そのまま、紗琥耶もまた壁に消えた。
~2176年9月30日PM1:14 東京~
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ラウンジと隣接する着任者待機ロビーは、四畳半程の狭い空間だ。
小さなソファが一脚と、僅かばかりのドリンクやアルコールと軽食しかない部屋だが、ソファは紗琥耶の肢体で埋まっていた。
「ん……っ………は…………ぁ」
身悶える紗琥耶に合わせて、ソファがギシギシと揺れる。
昼日中の職場で、全裸で堂々と自慰に耽る彼女を、咎める者は誰もいなかった。
性感帯の感度を最大値に上げ、好みの状況を視覚野と聴覚野に直接叩き込み、脳内麻薬の分泌量を限界まで振り切れば、どんな麻薬や薬物もカスに感じる程凄まじい快感の坩堝に堕ちる。
性器を擦る手も止まらなかった。
しかし、蜜の様に甘い時間は扉の開く音で唐突に終わりを告げた。
45度目の絶頂を迎えてトロンとした目を開くと、ジンワリ滲む天井が角度のある光を受けて白いグラデーションを描いている。
「……はぁ……ったく、何で俺がテメェの相手なんかしなきゃなんねぇんだょ」
声に目を向けると、それはそれは不愉快な顔の彼が扉を塞いでいた。
「カウパートロトロ垂らしながら何じっくり見ちゃった?それとも視姦?視姦してた?」
「テメェの気持ち悪ぃオナニーなんざ、萎える要素しかねぇよタコ。とっとと行くぞ」
扉を閉め、部屋の奥まで一気に進んだ源は壁際にぴたりと背中を付けて直立する。
煽情的にゆっくりと下着を履く紗琥耶には目も向けず、源はT.T.S.Masterからの有り難い指示を思い出していた。
15分前。
腰の高さ程の大きさの自律系アンドロイドが次々と昼食を片付けて行く中、鈴蝶は姿勢を正して指示を出していく。
「じゃあ源ちゃん。時間跳躍お願いね、それから絵美ちゃん」
「ちょいちょいちょい、待てや主将!俺今日休みだぞ!?絵美は行けねぇとして、他にも人員いんだろ!んで俺が出なきゃなんねぇんだ。休みなんだから休ませろよ」
「ちょっと」
トントンと肩を叩かれた。
見ると、ロサが怪訝な顔でアグネスを指示して口を尖らせている。
「名前位呼んであげなさいよ。アンタに懐いてるっぽいのに、可愛そうじゃない」
うるさい外野は無視して、源は絵美に水を向けた。
「絵美、もぉコンディション戻ってんだろ?お前行ってくれよ」
「無理よ」
答えは、絵美からではなくマダムオースティンから聞こえた。
「あぁ?無理?どぉいぅ」
マダムは溜息を吐いて天井を指差す。
「Masterには報告しておいたんだけど……絵美ちゃん、貴女インフルエンザよ。今年発見された新型、Aチリ型ね。一応空調にはウイルス除去ナノマシンとワクチン浸潤ナノマシンを含ませてあるから感染者の拡大は防げていると思うけど、少なくとも今の絵美ちゃんを時間跳躍させるのは危険よ。極めて危険。歴史にない世界的流行を生む可能性が高いわ」
ガクリと肩を落とした絵美が、こちらに顔を向けて申し訳なさそうに口だけ動かす。
「ごめん」
『いやお前に謝られてもよぉ』
どうにかならないかと改めて鈴蝶を向いた源に、物凄く良い笑顔が待っていた。
「管轄外の事件に首を突っ込んだ上、しょっ引かれたのは誰かな?そこから出すのにどれだけの手続きと根回しが必要なのか知っているのかな?その為に生じるコストや手間をどう補填しようか悩む所だよね?」
嫌でも源の言葉が詰まる。
鈴蝶は畳み掛けた。
「アグちゃんには護衛任務なんて出来ない。でも、貴方の二つ名、そのもう一つの意味だったら?」
源は反論材料を探して視線を彷徨わせるが、結局言葉は出なくて。
「片手間さん、このお仕事、実は貴方向きだ。適任なんだよ」
肩を落として頷く以外、彼にやれる事はなかった。
源に続いて横に並んだ紗琥耶が、堂々と源の股間に手を伸ばす。
「それで?固ぁい意志とナニを持って任務にイこうって訳ね」
「人の記憶勝手に覗いてんじゃねぇよ」
股間の手を振り払うが、紗琥耶は腕を全く動かしていないのに、源の手は空を切った。
「そんなんじゃアタシは感じないって、分かってんでしょ」
溜息を吐いて抵抗を諦め、源は呟く。
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その様子を見て、紗琥耶もまた呆れた溜息を吐く。
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