T.T.S.
FileNo.0 The Christmas Miraculous offstage Chapter 3-2
2
相棒の到着は早かった。24時間営業のカラオケ店に玄山が入ったのを見届けた直後には、源はその入口に光学迷彩を纏って立っていた。
「いぃ場所見付けたな、ここなら防音から人の出入りまで対策バッチシだ……ほれ、早く追わねぇと逃げちまうぞ」
二メートル近い長身の男が肩に担ぎあげたダッフルコートの男は、フラフラと空中に浮かび、可視化フィルターを通さなければ随分奇妙に見えるだろう。
その原因を捉える事の出来る目で、絵美は源のボンヤリした立ち姿を見る。
長身痩躯と言う言葉がこれ以上なく当て嵌まる体型をしているが、この男の持つ尋常ならざる膂力を、絵美は知っていた。
実際、彼女はそれで命を救われてさえいる。
だからかも知れない。
フィルター越しの朧な立ち姿が何かを象徴している様で、絵美の心中は複雑だ。
「どした?」
「……光学迷彩、解いたら?」
「あぁ……忘れてた」
「おい元軍属……しっかりしてよ」
どうにも、この男の光学迷彩に対する認識が甘い。
源が所属していたと言う部隊は、光学迷彩も調達出来ない貧相なものだったのだろうか?
『そんな訳あるか』
機械による戦争になって久しい昨今の戦争の事情を、一警察官だった絵美は詳しくは知らない。
だが、予算を出し渋る所轄警察署にまで浸透した光学迷彩如きを、民間軍事会社や国軍が所持していない筈はない。と、そこまで考え至った所で、絵美は気付いた。
「……お前ぇに言われたかぁねぇよ」
『ああ、そうか』
これは、彼なりの激励だ。絵美を捕える動揺を敏感に感じ取り、それを排除し、T.T.S.での立ち位置、几帳面でしっかり者の正岡絵美へと引き戻す為の言動だ。
それをさり気なく、自らのミスと言う形で出す程、源には余裕があるのだ。
『随分余裕があるわね、真実を知らないから……だけでもないか』
機械による戦争の時代に、それでも軍籍を置いた男。
では、と絵美は考える。
哀れとさえ言えるそんな経歴を選択した男が見た光景は、これから絵美達が侵す最悪の歴史改変と比べると、どちらがより心を痛めるものだろうか?
相棒の到着は早かった。24時間営業のカラオケ店に玄山が入ったのを見届けた直後には、源はその入口に光学迷彩を纏って立っていた。
「いぃ場所見付けたな、ここなら防音から人の出入りまで対策バッチシだ……ほれ、早く追わねぇと逃げちまうぞ」
二メートル近い長身の男が肩に担ぎあげたダッフルコートの男は、フラフラと空中に浮かび、可視化フィルターを通さなければ随分奇妙に見えるだろう。
その原因を捉える事の出来る目で、絵美は源のボンヤリした立ち姿を見る。
長身痩躯と言う言葉がこれ以上なく当て嵌まる体型をしているが、この男の持つ尋常ならざる膂力を、絵美は知っていた。
実際、彼女はそれで命を救われてさえいる。
だからかも知れない。
フィルター越しの朧な立ち姿が何かを象徴している様で、絵美の心中は複雑だ。
「どした?」
「……光学迷彩、解いたら?」
「あぁ……忘れてた」
「おい元軍属……しっかりしてよ」
どうにも、この男の光学迷彩に対する認識が甘い。
源が所属していたと言う部隊は、光学迷彩も調達出来ない貧相なものだったのだろうか?
『そんな訳あるか』
機械による戦争になって久しい昨今の戦争の事情を、一警察官だった絵美は詳しくは知らない。
だが、予算を出し渋る所轄警察署にまで浸透した光学迷彩如きを、民間軍事会社や国軍が所持していない筈はない。と、そこまで考え至った所で、絵美は気付いた。
「……お前ぇに言われたかぁねぇよ」
『ああ、そうか』
これは、彼なりの激励だ。絵美を捕える動揺を敏感に感じ取り、それを排除し、T.T.S.での立ち位置、几帳面でしっかり者の正岡絵美へと引き戻す為の言動だ。
それをさり気なく、自らのミスと言う形で出す程、源には余裕があるのだ。
『随分余裕があるわね、真実を知らないから……だけでもないか』
機械による戦争の時代に、それでも軍籍を置いた男。
では、と絵美は考える。
哀れとさえ言えるそんな経歴を選択した男が見た光景は、これから絵美達が侵す最悪の歴史改変と比べると、どちらがより心を痛めるものだろうか?
「SF」の人気作品
書籍化作品
-
-
112
-
-
239
-
-
63
-
-
124
-
-
15254
-
-
24252
-
-
70811
-
-
769
-
-
111
コメント