T.T.S.
FileNo.0 The Christmas Miraculous offstage Chapter 2-8
8
――A.D.2014.12.24 18:32 日本国 東京都渋谷区――
「……そう、やっぱり。……ええそうね、“案の定”って所よ」
拡散された情報というコンプレッサーが、莫大な圧を生んでいた。
駅前で起きた事件を追って、民衆が津波を起こしている。
スマホを耳に当て、歩道の端を縫って、絵美はセンター街の人の波を逆流して行く。
今し方二部署から返信された内容は、ストレートフラッシュが思い描いた画を補強するのに充分だった。奇妙な話だが、この事件は、発生こそが原因だったのだ。
「何て事はないわね……“初めてのお使い”が時を越えた先にあったって……だけ」
スマホを耳から離し、睨む。
フリードニッヒ・ニーチェは言った。
“事実と言うものは存在しない。存在するのは解釈だけである。”と。
「……じゃあどんな解釈だって言うのよ」
一体、玄山英嗣は何を思って時を超えたのだろう?
彼の人生の大半を覆っていた屈辱は、一体どこに注がれるのだろう?
そして、もう一人。
城野夕貴。
彼女は何を思ってその名を捨て、真実を歪め、遠い異国の地へ身を隠したのか?
「裁かれるべきなのは、誰?」
未来の基を成す過去の世界の只中で、一人、重い重い真実と向き合う。
途方もない孤独感が人波を泳ぐ自身の境遇に似て、寂寥感だけが募って行く。
時代の逆風、或いは、偏見の逆境。
こんなものを抱え込んだ彼等には、精々同情する他ない。
じりじり募る耐えがたいストレスに苛まれていると、そこにふと、聞き覚えのある声が混じった。
《どぉだぁ?何か分かったか?》
それは、念頭にあった訳でも待ち望んでいた訳でもないのに、何故か心強く、そして力強く、絵美の精神に響いた。
そうだった。
今となっては、味方は彼しかいない。
信用の置けない、でも異常な程頼りにはなる相棒の声に、少しだけ、肩の荷が下りた気がした。
「事実確認は取れたわ。そっちの彼も交えて“お話”しましょう」
前方5M先を歩くトレンチコートを睨みながら、絵美はそう返答する。
しかしまあ、そうは言っても気は進まなかった。
何せ、これから彼等は完全なる冤罪を生まなければならないのだから。
――A.D.2014.12.24 18:32 日本国 東京都渋谷区――
「……そう、やっぱり。……ええそうね、“案の定”って所よ」
拡散された情報というコンプレッサーが、莫大な圧を生んでいた。
駅前で起きた事件を追って、民衆が津波を起こしている。
スマホを耳に当て、歩道の端を縫って、絵美はセンター街の人の波を逆流して行く。
今し方二部署から返信された内容は、ストレートフラッシュが思い描いた画を補強するのに充分だった。奇妙な話だが、この事件は、発生こそが原因だったのだ。
「何て事はないわね……“初めてのお使い”が時を越えた先にあったって……だけ」
スマホを耳から離し、睨む。
フリードニッヒ・ニーチェは言った。
“事実と言うものは存在しない。存在するのは解釈だけである。”と。
「……じゃあどんな解釈だって言うのよ」
一体、玄山英嗣は何を思って時を超えたのだろう?
彼の人生の大半を覆っていた屈辱は、一体どこに注がれるのだろう?
そして、もう一人。
城野夕貴。
彼女は何を思ってその名を捨て、真実を歪め、遠い異国の地へ身を隠したのか?
「裁かれるべきなのは、誰?」
未来の基を成す過去の世界の只中で、一人、重い重い真実と向き合う。
途方もない孤独感が人波を泳ぐ自身の境遇に似て、寂寥感だけが募って行く。
時代の逆風、或いは、偏見の逆境。
こんなものを抱え込んだ彼等には、精々同情する他ない。
じりじり募る耐えがたいストレスに苛まれていると、そこにふと、聞き覚えのある声が混じった。
《どぉだぁ?何か分かったか?》
それは、念頭にあった訳でも待ち望んでいた訳でもないのに、何故か心強く、そして力強く、絵美の精神に響いた。
そうだった。
今となっては、味方は彼しかいない。
信用の置けない、でも異常な程頼りにはなる相棒の声に、少しだけ、肩の荷が下りた気がした。
「事実確認は取れたわ。そっちの彼も交えて“お話”しましょう」
前方5M先を歩くトレンチコートを睨みながら、絵美はそう返答する。
しかしまあ、そうは言っても気は進まなかった。
何せ、これから彼等は完全なる冤罪を生まなければならないのだから。
「SF」の人気作品
書籍化作品
-
-
70811
-
-
4
-
-
1
-
-
516
-
-
89
-
-
159
-
-
1359
-
-
444
-
-
550
コメント