T.T.S.
FileNo.1 Welcome to T.T.S. Chapter1-4
4
違法時間跳躍者。
それは、薔薇乃棘の誘いに乗った一般人を指したT.T.S.内の敵勢指示語であり、“時間は神が作り、時計を悪魔が作った”と言う諺から引用された。
彼等を捕獲する際、その役割は二つに分かれる。
即ち、《確保》と《人払い》だ。
確保の重要性は言うに及ばず、人払いという仕事もT.T.S.では重要な役割を担っていた。
過去の改変には、通例として二つの可能性が提唱されている。
一つは、時間跳躍者による過去への干渉。先の“親殺しのパラドックス”等はこれに当たる。
そしてもう一つ。
これは過去へ飛ぶ際に忘れがちな存在ではあるが、跳躍した先に待っている世界の住人もまた、同じ“人間”であるという事だ。
時間跳躍者の廃棄物や拾得物から過去の人間が独自の研究で未来の姿を歪めてしまう可能性も、考慮しなければならないのだ。
故に、T.T.S.のメンバーは物凄く気を遣って任務に赴く。
普通は。
だからまあ、「じゃあ源は何なんだ」と問われるとちょっとアレなので、今回馬鹿は脇に置いておくが、絵美等は血液検査までして気を遣う。
それこそ、跳躍先の時代に開発されていない新薬等を血中に含んだまま持ち込んでしまう可能性があるからだ。
そして、人払いという仕事の本質はこの二つ目の可能性にある。
時間跳躍先で当時の人々に事態を隠すにはどうすればいいか。
答えは、至極単純。
極力当時人との接触を避ける事だ。
この重要な役の担い手こそが、人払いである。
現地人を遠ざけ、異なる時間の人間の接触を最低限にする。
それには、少数精鋭による部隊の編制こそが望ましく、結果生まれたのが二人一組の出動形態という訳だ。
「でも大丈夫かぁ?この前の香港マフィアごっこ捕まえた時とは時流が違ぇぞ?幾ら末期とは言え、19世紀の日本なんざ男尊女卑が当たり前だ。公務によって、って言い分は通用しねぇぞ」
「そうね、女性の社会進出なんて一部の富裕層にしたってあと数十年は待たないと果たされないし……邏卒は……もう警察だっけ?それも通用しないか……何て口実にし……!!」
言葉の途中で息を呑み、一点に目を留めた絵美は囁く。
「言っている傍から見られていたわ。取り敢えず行って来る。確保、よろしく……You see?」
「I see」
身を起こしつつ絵美の出動を見送り、同時に、彼女の追跡対象を確認した。
小袖袴に学帽を被った小柄な男が角を曲がる所と、その進行方向に拡張現実の違法時間跳躍者の出現地点マーカーがダブっている。
「んじゃまぁ、絵美センセの有難ぁいお言葉に甘えて、こっちも参ろぉかねぇ」
尻から滑り降りながら、マーカーと正反対の方向へと足を向けた。
ゴォォーーーン!!
「明治絢爛捕物絵巻の第一章にして最終章、スタートだ」
背中で聞く鐘の音が、試合開始を告げるゴングのそれに聞こえて、源の脚には力が込もった。
違法時間跳躍者。
それは、薔薇乃棘の誘いに乗った一般人を指したT.T.S.内の敵勢指示語であり、“時間は神が作り、時計を悪魔が作った”と言う諺から引用された。
彼等を捕獲する際、その役割は二つに分かれる。
即ち、《確保》と《人払い》だ。
確保の重要性は言うに及ばず、人払いという仕事もT.T.S.では重要な役割を担っていた。
過去の改変には、通例として二つの可能性が提唱されている。
一つは、時間跳躍者による過去への干渉。先の“親殺しのパラドックス”等はこれに当たる。
そしてもう一つ。
これは過去へ飛ぶ際に忘れがちな存在ではあるが、跳躍した先に待っている世界の住人もまた、同じ“人間”であるという事だ。
時間跳躍者の廃棄物や拾得物から過去の人間が独自の研究で未来の姿を歪めてしまう可能性も、考慮しなければならないのだ。
故に、T.T.S.のメンバーは物凄く気を遣って任務に赴く。
普通は。
だからまあ、「じゃあ源は何なんだ」と問われるとちょっとアレなので、今回馬鹿は脇に置いておくが、絵美等は血液検査までして気を遣う。
それこそ、跳躍先の時代に開発されていない新薬等を血中に含んだまま持ち込んでしまう可能性があるからだ。
そして、人払いという仕事の本質はこの二つ目の可能性にある。
時間跳躍先で当時の人々に事態を隠すにはどうすればいいか。
答えは、至極単純。
極力当時人との接触を避ける事だ。
この重要な役の担い手こそが、人払いである。
現地人を遠ざけ、異なる時間の人間の接触を最低限にする。
それには、少数精鋭による部隊の編制こそが望ましく、結果生まれたのが二人一組の出動形態という訳だ。
「でも大丈夫かぁ?この前の香港マフィアごっこ捕まえた時とは時流が違ぇぞ?幾ら末期とは言え、19世紀の日本なんざ男尊女卑が当たり前だ。公務によって、って言い分は通用しねぇぞ」
「そうね、女性の社会進出なんて一部の富裕層にしたってあと数十年は待たないと果たされないし……邏卒は……もう警察だっけ?それも通用しないか……何て口実にし……!!」
言葉の途中で息を呑み、一点に目を留めた絵美は囁く。
「言っている傍から見られていたわ。取り敢えず行って来る。確保、よろしく……You see?」
「I see」
身を起こしつつ絵美の出動を見送り、同時に、彼女の追跡対象を確認した。
小袖袴に学帽を被った小柄な男が角を曲がる所と、その進行方向に拡張現実の違法時間跳躍者の出現地点マーカーがダブっている。
「んじゃまぁ、絵美センセの有難ぁいお言葉に甘えて、こっちも参ろぉかねぇ」
尻から滑り降りながら、マーカーと正反対の方向へと足を向けた。
ゴォォーーーン!!
「明治絢爛捕物絵巻の第一章にして最終章、スタートだ」
背中で聞く鐘の音が、試合開始を告げるゴングのそれに聞こえて、源の脚には力が込もった。
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