お前ら『神器』って自覚ある?
6話
「戦闘訓練、ご苦労だった……この後は普通に授業を行う。各々、準備をしておくように」
言い残し、セシル先生が教室を出ていく。
「はー……めんどくせぇな!」
「まあな……でも、普通に授業があるってわかって、少し安心した」
「そうか?」
「この学院生活の全部が、戦闘訓練とか戦闘試験ばっかりだったら、キツくないか?」
「んー……まあ、そうだな」
どういう意味合いがあって席を決めたのかはわからないが……俺の前には、レテインが座っている。
俺の隣はアルマ。後ろはリリアナとソフィアだ。
「……おいてめェ」
「ん?……お前は、さっきの……」
「……チッ……たまたまだァ、今日はたまたま負けたァ……だから、次は俺が勝つ。いいなァ?」
「……はっ、上等だ!やれるもんならやってみやがれ!」
『シュッシュッ』とシャドウボクシングをするレテイン……その横を通り過ぎ、グローリアが俺の所に来る。
「……おめェもだァ……俺ァ最強になる。おめェも、あの女もぶっ潰してなァ」
クイッと、グローリアがサリスに顎を向ける。
「……なに、私に、用?」
「あァ……俺が一番になる。お前ら全員踏み潰してなァ」
「……冗談に、しては、笑え、ない」
「当ったり前だろォがよォ……冗談じゃねェんだからなァ」
「……ふん」
……グローリアもだけど、サリスの話し方も独特だな。
なんと言うか……単語と単語を区切って話してるって感じか?
「ご主人様ー、あれがせんせんふこくってやつー?それとも、げこくじょー?」
「んー……下剋上はちょっと違うかもな」
ルーシャもだったけど……やっぱりSクラスに選ばれるだけあって、自分に自信があるんだろうな。
「なーお前……アルバトスだったよなー?」
「おっ……ああ、そうだけど」
こいつは……確か、ジェルムだったか?
「……その盾、つえーよな」
「え?ああ、まあ……お前の分身の方がスゴいと思うけどな」
「ははっ!武器を振ってねーのに勝ったお前に言われるとはね!」
バシバシと俺の体を叩き、ジェルムがバカ笑いを始める。
「ああそうだった、あたしゃジェルム!んで、こっちの大人しいのが『神器』のオウル!」
「………………………………よろしく」
「おう、よろしく」
メガネを掛けたオウルが、ペコリと頭を下げてくる。
「……で、俺になんか用か?まさか、アルマの事を褒めるために来たんじゃないだろ?」
「おーその通りだ。お前が戦ったやつ……ルーシャな。あたし、あいつ大っ嫌いなんだよ」
「お、おうそうか」
「だからよー!その盾の子があいつの魔法を吸い込んで倒しちまった時は、スカッとしたんだよな!」
……うん、いや、それを俺に言ってどうするの?
「にしても……あんた、3つの『神器』と契約してんだろ?」
「……まあ、そんな感じだな」
「……その子は?」
ジェルムの指さす先―――ソフィアがいた。
「その子はって言われても……『神器』だ」
「そりゃ知ってんよ、どんな『神器』なんだよ?」
「内緒に決まってるだろ」
「かーっ!けちだなー!」
「―――授業を始めるぞ。席に着け」
扉を開け、セシル先生が教材を持って戻ってきた。
「先生、自分たちは教材を持っていないのですが」
「ああ、渡していないからな」
バルトナの言葉に、セシル先生が教室を見回しながら答える。
「Sクラスのお前らには、教材なんてない……必要なのは、喰らい付いてやるという気持ちだ」
「先生!言ってる意味がわかりません!」
髪の右側が白、左側が黒の男が手を挙げる……グラルテストだ。
「……一般的な教養が、モンスターの討伐に役立つか?そもそも、お前たちはSクラスだ。そんな授業をする余裕があるのなら……『神器』との交流を深めたり、己の体力を付けたりする方がいい」
なんてこった。Sクラス半端ねえな。
「とは言え、さすがに一般知識は知っておかないとな……というわけで、俺が教える事は、国王の名前や簡易治療のやり方。あとは……食べられる草の判別方法など、人生において役立つ事だ」
ここはサバイバル教室だったのか。知らなかった。
「今日は初日だから、オリエンテーション的な感じで進める……では、始めよう」
―――――――――――――――――――――――――
「やっと昼休みか……」
「ご主人様っ!お昼!お昼食べよー!」
サバイバルの授業を終え、昼休みになった。
「ん……じゃあ食堂に行くか」
「早く行こー!」
「リリアナ、ソフィア、行くぞ」
「はい」
「え~……めんどくさ……」
ピッタリと横を歩くソフィアと、怠そうに後を追ってくるリリアナと共に、食堂を目指す。
この学院の食堂は、無料でご飯を出してくれる。ありがたい。
AからFクラスまでは同じ献立なのだが……Sクラスは、特別献立があるらしい。
こういうちょっとした所で優遇されるから、みんなSクラスを目指すのかな。
「……はぁ~……なーんで人間も『神器』も、何かを食べないと死ぬのかしら……」
「お前は急に何を言ってんの?」
「だってめんどくさいじゃない。わざわざ食堂に行ってご飯食べて、そしたらまた教室に戻ってくるなんて……そうだ、ご主人がご飯を教室に持ってきてくれれば……!」
こいつってば頭がおかしいの?
「もーダメだよリリアナちゃん!ご主人様に迷惑掛けたらー!」
「な、べ、別にまだ何もしてないでしょ?」
見た目はリリアナの方が大人なのに、幼女のアルマに怒られてら。
「……見ろよ……Sクラスだぜ」
「あの人って……2回目に試合した人よね?」
「待て待て……連れてる女の子、全員『神器』か?」
「嘘だろ?!3つと契約とか、聞いた事ねぇぞ?!」
「大物だな……サリスってやつにも勝てるんじゃないか?」
「いやー、サリスちゃんは別格でしょ」
食堂に入ると同時、色んな視線が集まる。
……尊敬。畏怖。驚愕。嫉妬……まあ、居心地は良くないな。
「……ちゃっちゃと食べて戻るか」
「はぁ……はぁ……いい……視線、いい……♪」
「おい、何やってんだ。はよ来いソフィア」
「……あ、はい」
我に返ったソフィアを連れ、料理を注文する。
「……3つの『神器』と契約……ねぇ」
「ご主人様?」
「ああいや、何でもない」
近くにあった椅子に座り、リリアナとアルマを待つ。
……リリアナ、アルマ、ソフィア。
こいつらは普通の『神器』とは違う。
みんなは、『3つの『神器』とできて、羨ましいな』と思うだろう。
だが、違うのだ。
こいつらは―――『3人で1人の『神器』』なのだ。
「……懐かしいな……」
「何がですか?」
「お前らと契約した日だよ……もう、10年も前の事なんだなって思ってな」
「契約した日……ですか?……そうですね。とても懐かしいです」
普段のドMな笑みとは違う……ソフィアが懐かしむように目を細め、微笑を浮かべている。
そう。もう10年も前の事だ。
俺がこいつらと……この厄介者たちと契約を交わしたのは。
「なーに話してるのご主人様っ!」
「アルマ……んや、お前らと契約した日が懐かしいなって話してたんだよ」
「ご主人様と契約した日ー?…………契約、した日?」
「覚えてねぇのかよ」
「おっ、覚えてるよー?その……あの……あれ?」
覚えてねぇじゃねぇかよ。
「待ちなさいよアルマ……まったく、あたしに全部持たせて……」
「ありがとーリリアナちゃんっ!」
2人分の昼食を器用に運び、リリアナが席に座る。
「あら……珍しいわね。ソフィアがそんな可愛く笑うなんて」
「……失礼。お見苦しい物をお見せしました」
自分の顔を恥じるように、口元を隠しながら顔を背ける。
……そう。こいつは……ソフィアは、普通の笑みを見せたがらない。
何故かよくわからないが……普通に笑うと、今みたいに『お見苦しい物をお見せしました』と言って、顔を背けるのだ。
以前、リリアナとアルマに『なんでソフィアは笑わないんだ?』と聞いた事があるが……『それは教えられない』と、知ってるのに教えてくれない感じだった。
……いつか、ソフィアが普通に笑える日が来ればいいのだが。
言い残し、セシル先生が教室を出ていく。
「はー……めんどくせぇな!」
「まあな……でも、普通に授業があるってわかって、少し安心した」
「そうか?」
「この学院生活の全部が、戦闘訓練とか戦闘試験ばっかりだったら、キツくないか?」
「んー……まあ、そうだな」
どういう意味合いがあって席を決めたのかはわからないが……俺の前には、レテインが座っている。
俺の隣はアルマ。後ろはリリアナとソフィアだ。
「……おいてめェ」
「ん?……お前は、さっきの……」
「……チッ……たまたまだァ、今日はたまたま負けたァ……だから、次は俺が勝つ。いいなァ?」
「……はっ、上等だ!やれるもんならやってみやがれ!」
『シュッシュッ』とシャドウボクシングをするレテイン……その横を通り過ぎ、グローリアが俺の所に来る。
「……おめェもだァ……俺ァ最強になる。おめェも、あの女もぶっ潰してなァ」
クイッと、グローリアがサリスに顎を向ける。
「……なに、私に、用?」
「あァ……俺が一番になる。お前ら全員踏み潰してなァ」
「……冗談に、しては、笑え、ない」
「当ったり前だろォがよォ……冗談じゃねェんだからなァ」
「……ふん」
……グローリアもだけど、サリスの話し方も独特だな。
なんと言うか……単語と単語を区切って話してるって感じか?
「ご主人様ー、あれがせんせんふこくってやつー?それとも、げこくじょー?」
「んー……下剋上はちょっと違うかもな」
ルーシャもだったけど……やっぱりSクラスに選ばれるだけあって、自分に自信があるんだろうな。
「なーお前……アルバトスだったよなー?」
「おっ……ああ、そうだけど」
こいつは……確か、ジェルムだったか?
「……その盾、つえーよな」
「え?ああ、まあ……お前の分身の方がスゴいと思うけどな」
「ははっ!武器を振ってねーのに勝ったお前に言われるとはね!」
バシバシと俺の体を叩き、ジェルムがバカ笑いを始める。
「ああそうだった、あたしゃジェルム!んで、こっちの大人しいのが『神器』のオウル!」
「………………………………よろしく」
「おう、よろしく」
メガネを掛けたオウルが、ペコリと頭を下げてくる。
「……で、俺になんか用か?まさか、アルマの事を褒めるために来たんじゃないだろ?」
「おーその通りだ。お前が戦ったやつ……ルーシャな。あたし、あいつ大っ嫌いなんだよ」
「お、おうそうか」
「だからよー!その盾の子があいつの魔法を吸い込んで倒しちまった時は、スカッとしたんだよな!」
……うん、いや、それを俺に言ってどうするの?
「にしても……あんた、3つの『神器』と契約してんだろ?」
「……まあ、そんな感じだな」
「……その子は?」
ジェルムの指さす先―――ソフィアがいた。
「その子はって言われても……『神器』だ」
「そりゃ知ってんよ、どんな『神器』なんだよ?」
「内緒に決まってるだろ」
「かーっ!けちだなー!」
「―――授業を始めるぞ。席に着け」
扉を開け、セシル先生が教材を持って戻ってきた。
「先生、自分たちは教材を持っていないのですが」
「ああ、渡していないからな」
バルトナの言葉に、セシル先生が教室を見回しながら答える。
「Sクラスのお前らには、教材なんてない……必要なのは、喰らい付いてやるという気持ちだ」
「先生!言ってる意味がわかりません!」
髪の右側が白、左側が黒の男が手を挙げる……グラルテストだ。
「……一般的な教養が、モンスターの討伐に役立つか?そもそも、お前たちはSクラスだ。そんな授業をする余裕があるのなら……『神器』との交流を深めたり、己の体力を付けたりする方がいい」
なんてこった。Sクラス半端ねえな。
「とは言え、さすがに一般知識は知っておかないとな……というわけで、俺が教える事は、国王の名前や簡易治療のやり方。あとは……食べられる草の判別方法など、人生において役立つ事だ」
ここはサバイバル教室だったのか。知らなかった。
「今日は初日だから、オリエンテーション的な感じで進める……では、始めよう」
―――――――――――――――――――――――――
「やっと昼休みか……」
「ご主人様っ!お昼!お昼食べよー!」
サバイバルの授業を終え、昼休みになった。
「ん……じゃあ食堂に行くか」
「早く行こー!」
「リリアナ、ソフィア、行くぞ」
「はい」
「え~……めんどくさ……」
ピッタリと横を歩くソフィアと、怠そうに後を追ってくるリリアナと共に、食堂を目指す。
この学院の食堂は、無料でご飯を出してくれる。ありがたい。
AからFクラスまでは同じ献立なのだが……Sクラスは、特別献立があるらしい。
こういうちょっとした所で優遇されるから、みんなSクラスを目指すのかな。
「……はぁ~……なーんで人間も『神器』も、何かを食べないと死ぬのかしら……」
「お前は急に何を言ってんの?」
「だってめんどくさいじゃない。わざわざ食堂に行ってご飯食べて、そしたらまた教室に戻ってくるなんて……そうだ、ご主人がご飯を教室に持ってきてくれれば……!」
こいつってば頭がおかしいの?
「もーダメだよリリアナちゃん!ご主人様に迷惑掛けたらー!」
「な、べ、別にまだ何もしてないでしょ?」
見た目はリリアナの方が大人なのに、幼女のアルマに怒られてら。
「……見ろよ……Sクラスだぜ」
「あの人って……2回目に試合した人よね?」
「待て待て……連れてる女の子、全員『神器』か?」
「嘘だろ?!3つと契約とか、聞いた事ねぇぞ?!」
「大物だな……サリスってやつにも勝てるんじゃないか?」
「いやー、サリスちゃんは別格でしょ」
食堂に入ると同時、色んな視線が集まる。
……尊敬。畏怖。驚愕。嫉妬……まあ、居心地は良くないな。
「……ちゃっちゃと食べて戻るか」
「はぁ……はぁ……いい……視線、いい……♪」
「おい、何やってんだ。はよ来いソフィア」
「……あ、はい」
我に返ったソフィアを連れ、料理を注文する。
「……3つの『神器』と契約……ねぇ」
「ご主人様?」
「ああいや、何でもない」
近くにあった椅子に座り、リリアナとアルマを待つ。
……リリアナ、アルマ、ソフィア。
こいつらは普通の『神器』とは違う。
みんなは、『3つの『神器』とできて、羨ましいな』と思うだろう。
だが、違うのだ。
こいつらは―――『3人で1人の『神器』』なのだ。
「……懐かしいな……」
「何がですか?」
「お前らと契約した日だよ……もう、10年も前の事なんだなって思ってな」
「契約した日……ですか?……そうですね。とても懐かしいです」
普段のドMな笑みとは違う……ソフィアが懐かしむように目を細め、微笑を浮かべている。
そう。もう10年も前の事だ。
俺がこいつらと……この厄介者たちと契約を交わしたのは。
「なーに話してるのご主人様っ!」
「アルマ……んや、お前らと契約した日が懐かしいなって話してたんだよ」
「ご主人様と契約した日ー?…………契約、した日?」
「覚えてねぇのかよ」
「おっ、覚えてるよー?その……あの……あれ?」
覚えてねぇじゃねぇかよ。
「待ちなさいよアルマ……まったく、あたしに全部持たせて……」
「ありがとーリリアナちゃんっ!」
2人分の昼食を器用に運び、リリアナが席に座る。
「あら……珍しいわね。ソフィアがそんな可愛く笑うなんて」
「……失礼。お見苦しい物をお見せしました」
自分の顔を恥じるように、口元を隠しながら顔を背ける。
……そう。こいつは……ソフィアは、普通の笑みを見せたがらない。
何故かよくわからないが……普通に笑うと、今みたいに『お見苦しい物をお見せしました』と言って、顔を背けるのだ。
以前、リリアナとアルマに『なんでソフィアは笑わないんだ?』と聞いた事があるが……『それは教えられない』と、知ってるのに教えてくれない感じだった。
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