お前ら『神器』って自覚ある?
5話
「今日からこのSクラスの担任になる、『セシル・フーパー』だ。お前らは学院から選ばれた18人……その自覚を持って、この3年間しっかり『神器使い』としての勉強をしてくれ」
部屋にいたリリアナとソフィアを連れ、Sクラスにやって来た。
クラスの人数は18人。
俺とリリアナ、アルマとソフィア以外に、14人もいるって事だ。
「早速で悪いが……今日は、クラス内で戦闘訓練を行う」
セシル先生の言葉に、全員の表情が引き締まる。
「『神器使い』は8人か……それじゃ、適当に相手を組むぞ」
クラス全体を見回すセシル先生が―――俺を指さした。
「最初はアルバトスと『ルーシャ』……次がサリスと『バルトナ』。その次が『レテイン』と『グローリア』。最後が『ミロード』と『ジェルム』……以上の順番で行う。この後、10時より始めるので、それまでに昨日のグラウンドに来るように……以上だ」
……いきなり戦闘訓練か。
初日だから軽く挨拶するだけかと思ったけど……さすが『アーネスト学院』。意識が高いな。
「―――ちょっとあなた」
「………………ん、あ?俺?」
「あなたよ!ボーッとした顔のあなた!」
紫髪の少女が、隣に女を連れて立っていた。
こいつは……俺と戦う事になっている、『ルーシャ・ドレイク』……だったような気がする。
「……なんか用?」
「いえ、ワタクシに負ける不幸な人の顔を見ておこうと思いましてね……見れば、昨日散々目立っていた人ではないですか」
「目立ってたって……目立ってたの?」
「えぇ、赤髪の女の子とあなたのせいで、ワタクシがまったく目立てなかったですわ!」
……それって、俺が悪いの?
「もちろん、これはワタクシの勝手な気持ち……あなたには関係がないですわ」
「……うん、そだね」
「ですが、戦闘訓練は手を抜きませんから……では、グラウンドで会いましょう」
クルリと優雅に反転し、ルーシャが教室の外に出ていく。
……なんか、変なのに絡まれたなぁ。
「おうお前……アルバトス、だっけか?」
「……誰?」
「あ、俺は『レテイン・バーニング』!こいつは俺の『神器』の『ルーン』ってんだ!」
ボサボサの茶髪のレテインと、大人しい青髪のルーンが近づいてくる。
「えっと……何か用?」
「さっきのやつ……ルーシャな。あいつ、自分より目立つやつがいると、手当たり次第に挑戦状を叩き付ける自信家でさ……何言われたか知らないけど、あんまり気にするなよ?」
「ああ、うん……ありがとな」
「おう!お互いに頑張ろうぜ!」
ガッシリと握手を交わし、レテインが清々しい笑みを見せる。
「そんじゃ、グラウンド行こーぜ!アルバトス!」
「あ、ああ……行くぞ、お前ら」
「えぇ」
「はーい!」
「はい」
―――――――――――――――――――――――――
「時間通りだな……それでは、戦闘訓練を始める。アルバトスとルーシャ、前へ」
立ち上がり、ルーシャと向かい合う。
「昨日の戦闘試験と同様、死ぬこともないし、傷を負うこともない。だが、痛みはある……いいな?」
「ういっす」
「はい」
……ルーシャの『神器』は、あの桃髪の少女か。
『神器』の性能は、見た目ではわからない……アルマだって幼女なのに、『神器』としての性能はバカにならない。
「それでは……構えて」
「〈我、神の創造せし武具を操りし者。結ばれし契約に従い、汝に真の名を与えん〉」
ルーシャの詠唱に従い、隣の少女が輝き始める。
「〈我が下に目覚めよ―――双蛇を宿す、翼持ちし杖、『蛇杖 ケリュケイオン』〉っ!」
……黒い杖……って事は、魔法を使うのか。
「……アルマ、お前も来い」
「おー!やっとでばーん!」
「ご主人様、私は?」
「お前はいいや」
「はっ、くぅんん……♪」
喜ぶソフィアを無視して、リリアナとアルマと手を繋ぐ。
「〈我、神の創造せし武具を操りし者。結ばれし契約に従い、汝に真の名を与えん〉」
左手のリリアナが、右手のアルマが輝き出し、姿を変え始める。
「〈我が下に目覚めよ―――魔を払いし聖なる剣、『聖剣 エクスカリバー』―――生命を守りし守護の盾、『聖盾 イージス』〉」
神々しく輝く聖剣と、美しく光る聖盾が握られる。
……正直、杖を使う相手なら、アルマだけで充分なんだよな。
「……リリアナ、お前の出番は無さそうだ」
『そう……それは良いことだわ』
「準備はいいな?それでは―――始めッ!」
セシル先生の声と共に、ルーシャの手に握られている杖が黒く輝き始める。
「〈混ざりし翼蛇、その禍々しき口から毒を吹き、苦しむ者に安らかな死を与えよ〉」
『―――〈翼蛇の邪息〉っ!』
黒い霧のような物が、杖から放たれる。
……よし、行くか。
「―――アルマッ!」
『いつでもいいよ!ご主人様っ!』
「〈全知全能の知恵よ。今ここに収束し、魔術を吸う障壁とならん〉ッ!」
『〈アテナ・ブレス〉っ!』
迫る黒霧が―――聖盾に吸い込まれた。
「え……なに、それ……」
「返すぜ―――ッ!」
『とりゃあああああああっ!』
聖盾が怪しく光った―――かと思うと、黒霧が放たれた。
これが『聖盾 イージス』の能力……魔法を吸収し、放出する事ができる。
リリアナの『聖剣 エクスカリバー』の能力『グラン・セイバー』も強力だが……イージスの力は、相手が魔法を使うなら、無敵と言っても過言ではない力を発揮する。
「そんな……魔法を―――」
『ボシュゥゥゥゥゥゥン……』と、ルーシャが黒霧に包まれた。
やがて黒霧が晴れ、そこには倒れた少女の姿。
「……勝者、アルバトスッ!」
「よっし……〈武器化解除〉」
聖剣と聖盾が変化し……元のリリアナとアルマの姿に戻る。
「すげーなアルバトス!」
「レテイン……たまたま運が良かっただけだ」
「それでもだ!強いな、お前!」
「次!サリスとバルトナ、前へ!」
……サリス・ドゥーマ……こいつの力、しっかり見とかないといけないな。
「……トリア」
「うん」
「行くよ、オディン」
「御意」
それぞれの『神器』に呼び掛け、集中を深めていく。
「構えて」
「「〈〈我、神の創造せし武具を操りし者。結ばれし契約に従い、汝に真の名を与えん〉〉」」
サリスとバルトナが同時に詠唱を始める。
「―――〈我が下に目覚めよ―――愚民を踏み潰す絶対神の鎚、『魔鎚 ミョルニル』〉」
「〈我が下に目覚めよ―――勝利を呼びし主神の槍、『神槍 グングニル』〉ッ!」
ミョルニルに……グングニル?!
それって、リリアナたちと同じ『最上位神器』じゃないか?!
「―――始めッ!」
セシル先生の合図―――それと同時、バルトナが鋭く踏み込んだ。
ちょっと遠いが、あの槍だったら届く間合いだ。
さあ……どう避けるんだ―――
「〈震えろ愚民、恐れろ愚者。神の下に抗う事は許されないのだ〉」
『〈トール・インパクト〉』
大きく上に飛んだサリスが―――鎚を振った。
上空で、何もない所に、なんの力も入れずに、ただ振った。
だが―――直後。
『ズドッ―――ゴォオオオオオオオンンッッ!!』
「……またクレーターか」
「うはー……すげぇ威力だな」
隣で腕を組むレテインが、苦笑を浮かべる。
……なんて威力だ。
上空で鎚を振っただけなのに……ここまでの威力が出るなんて。
「……勝者、サリス!」
「〈武器化解除〉……」
無口な少女2人が、ちょこんと俺のうしろに座った。
「次は……レテインとグローリアだ、前へ」
「おっ……ちょっと行ってくるぜ、アルバトス!」
「おう、頑張れよ」
レテインを見送り―――後ろに座る、サリスをチラ見する。
……スッゲー怖い……全然喋らないし……何者なんだろうな。
「行くぜルーン!」
「う、ううう、うん……」
「……グラルテストォ……」
「おう」
「構えて」
「「〈〈我、神の創造せし武具を操りし者。結ばれし契約に従い、汝に真の名を与えん〉〉」」
レテインとグローリアが同時に詠唱を始める。
「〈我が下に目覚めよッ!―――蒼き炎を纏いし杖ッ!『蒼杖 レーヴァテイン』〉ッ!」
「〈我が下に目覚めよォ―――竜を討ちし怒れる剣ィ、『怒剣 グラム』ゥ〉」
……なんか、グローリアの話し方、独特だな。
「始めッ!」
「―――〈怒れェ、憤れェ。憤怒に身を任しィ、目の前の敵を討つべしィ〉」
『〈ドラゴン・スレイヤー〉』
グローリアの体が輝いた―――かと思うと、凄まじい速さでレテインとの間合いを詰め始めた。
あれは―――肉体強化の魔法か?
「〈渦巻け炎よッ!その身を焦がすほどの熱を放ちッ!歯向かう敵を殲滅せよッ!〉」
『〈カグツチ・渦ノ型〉』
レテインの杖から蒼炎が溢れ出す。
それが少しずつ形を変え―――
「なっ―――あああああああァ?!」
蒼炎の渦が、グローリアの姿を呑み込んだ。
……あれはダメだな。グローリアのやつ、負けたか―――
「―――はっはァ!やんじゃねェかァ!」
……意識が、ある?!
嘘だろ、このグラウンドは『死ぬ事も傷を負う事もないが、痛みはある』んだぞ?!
今グローリアの体には、実際に炎で包まれているような痛みが存在してるはずなのに!
「………………壊れてる……」
ボソリとしたサリスの呟き。
言う通りだ。壊れてるぞ、あいつの頭と体!
「〈羽ばたけ炎よッ!その身を焦がすほどの熱を放ちッ!歯向かう敵を殲滅せよッ!〉」
『〈カグツチ・鳥ノ型〉』
再び蒼炎が形を変え―――鳥の形を作り出す。
「行けッ!」
『ギュオンッ!』と、蒼鳥が上空のグローリアに襲い掛かる。
「遅ェ、なァ!」
迫る蒼鳥を、グローリアが切り落とそうとし―――
「しィ―――あァ?!」
「甘えな!」
急速に方向転換。
おいおいおい……放った魔法をあれだけ繊細に操作するとか、レテインもかなり化け物じゃねえか!
「落ちなッ―――!」
「ぐっ―――あああああああァッ!」
直撃。
蒼鳥が直撃し……グローリアが、ピクリとも動かなくなった。
……さすがに二度も直撃すれば、動けないみたいだな。
「……勝者、レテイン!」
「よっしゃあああ!」
……なるほど、あれだ。
さすがSクラスって感じだな。
「〈武器化解除〉……やったなルーン!」
「あ、うん。やや、やったねレテイン君」
「次、ミロードとジェルム」
緑髪の少女と白髪の少女が立ち上がり、前に出る。
……なんか、このクラス女子多くない?
「やったぜアルバトス!」
「おう、レテインもスゴかったな」
ハイタッチを交わし、レテインが俺の隣に座る。
「にしても……あのグローリアってやつ、強かったな」
「ああ、俺の蒼炎が直撃して、あんだけ元気だったやつはあいつが始めてだ」
……確かに。
レテインの蒼炎、あれはかなりの威力だった。
あれを食らって動けるなんて……
「構えて」
「「〈〈我、神の創造せし武具を操りし者。結ばれし契約に従い、汝に真の名を与えん〉〉」」
……にしても……ミョルニルにグングニル、それにレーヴァテインか……
『最上位神器』が、リリアナたち以外に3人もいるなんて……
「〈我が下に目覚めよ―――創造破壊を繰り返す弓、『月弓 ピナカ』〉」
「〈我が下に目覚めよ―――命を狩る反逆の爪、『魂鎌 ソウルイーター』〉」
弓と鎌……か。
ピナカは『上位神器』だったはずだ……よく見とかないと。
「―――始めッ!」
「〈喰らえ、喰らえ、喰らえ。その魂の輝きを、死神の鎌が狩りとろう〉」
『〈デス・サイズ〉』
ジェルムの握る鎌が―――巨大化。
その大きさ、元の大きさの3倍以上。
「ふ―――っ!」
振り上げ、ジェルムが距離を詰める。
「〈月を撃て、太陽を撃て、地を撃て、天を撃て。我が月弓に、貫けぬ物は無し〉」
『〈ネグロ・ルーナ〉』
赤黒い雷。
三日月の形をした弓に、赤黒い雷が宿った。
「撃つ―――ッ!」
「チッ―――」
『バチィッ!』
赤黒い雷の矢と、巨大な鎌がぶつかった。
「〈死神の鎌は1つにあらず。亡霊悪霊を従え、我が力となれ〉」
『〈ファントム・レイド〉』
『ヴンッ』と、ジェルムの姿がブレた。
何があったか理解をする前に、ミロードが地面に倒れる。
ミロードの背後―――そこには、もう1人のジェルムが立っていた。
「……勝者、ジェルム!」
部屋にいたリリアナとソフィアを連れ、Sクラスにやって来た。
クラスの人数は18人。
俺とリリアナ、アルマとソフィア以外に、14人もいるって事だ。
「早速で悪いが……今日は、クラス内で戦闘訓練を行う」
セシル先生の言葉に、全員の表情が引き締まる。
「『神器使い』は8人か……それじゃ、適当に相手を組むぞ」
クラス全体を見回すセシル先生が―――俺を指さした。
「最初はアルバトスと『ルーシャ』……次がサリスと『バルトナ』。その次が『レテイン』と『グローリア』。最後が『ミロード』と『ジェルム』……以上の順番で行う。この後、10時より始めるので、それまでに昨日のグラウンドに来るように……以上だ」
……いきなり戦闘訓練か。
初日だから軽く挨拶するだけかと思ったけど……さすが『アーネスト学院』。意識が高いな。
「―――ちょっとあなた」
「………………ん、あ?俺?」
「あなたよ!ボーッとした顔のあなた!」
紫髪の少女が、隣に女を連れて立っていた。
こいつは……俺と戦う事になっている、『ルーシャ・ドレイク』……だったような気がする。
「……なんか用?」
「いえ、ワタクシに負ける不幸な人の顔を見ておこうと思いましてね……見れば、昨日散々目立っていた人ではないですか」
「目立ってたって……目立ってたの?」
「えぇ、赤髪の女の子とあなたのせいで、ワタクシがまったく目立てなかったですわ!」
……それって、俺が悪いの?
「もちろん、これはワタクシの勝手な気持ち……あなたには関係がないですわ」
「……うん、そだね」
「ですが、戦闘訓練は手を抜きませんから……では、グラウンドで会いましょう」
クルリと優雅に反転し、ルーシャが教室の外に出ていく。
……なんか、変なのに絡まれたなぁ。
「おうお前……アルバトス、だっけか?」
「……誰?」
「あ、俺は『レテイン・バーニング』!こいつは俺の『神器』の『ルーン』ってんだ!」
ボサボサの茶髪のレテインと、大人しい青髪のルーンが近づいてくる。
「えっと……何か用?」
「さっきのやつ……ルーシャな。あいつ、自分より目立つやつがいると、手当たり次第に挑戦状を叩き付ける自信家でさ……何言われたか知らないけど、あんまり気にするなよ?」
「ああ、うん……ありがとな」
「おう!お互いに頑張ろうぜ!」
ガッシリと握手を交わし、レテインが清々しい笑みを見せる。
「そんじゃ、グラウンド行こーぜ!アルバトス!」
「あ、ああ……行くぞ、お前ら」
「えぇ」
「はーい!」
「はい」
―――――――――――――――――――――――――
「時間通りだな……それでは、戦闘訓練を始める。アルバトスとルーシャ、前へ」
立ち上がり、ルーシャと向かい合う。
「昨日の戦闘試験と同様、死ぬこともないし、傷を負うこともない。だが、痛みはある……いいな?」
「ういっす」
「はい」
……ルーシャの『神器』は、あの桃髪の少女か。
『神器』の性能は、見た目ではわからない……アルマだって幼女なのに、『神器』としての性能はバカにならない。
「それでは……構えて」
「〈我、神の創造せし武具を操りし者。結ばれし契約に従い、汝に真の名を与えん〉」
ルーシャの詠唱に従い、隣の少女が輝き始める。
「〈我が下に目覚めよ―――双蛇を宿す、翼持ちし杖、『蛇杖 ケリュケイオン』〉っ!」
……黒い杖……って事は、魔法を使うのか。
「……アルマ、お前も来い」
「おー!やっとでばーん!」
「ご主人様、私は?」
「お前はいいや」
「はっ、くぅんん……♪」
喜ぶソフィアを無視して、リリアナとアルマと手を繋ぐ。
「〈我、神の創造せし武具を操りし者。結ばれし契約に従い、汝に真の名を与えん〉」
左手のリリアナが、右手のアルマが輝き出し、姿を変え始める。
「〈我が下に目覚めよ―――魔を払いし聖なる剣、『聖剣 エクスカリバー』―――生命を守りし守護の盾、『聖盾 イージス』〉」
神々しく輝く聖剣と、美しく光る聖盾が握られる。
……正直、杖を使う相手なら、アルマだけで充分なんだよな。
「……リリアナ、お前の出番は無さそうだ」
『そう……それは良いことだわ』
「準備はいいな?それでは―――始めッ!」
セシル先生の声と共に、ルーシャの手に握られている杖が黒く輝き始める。
「〈混ざりし翼蛇、その禍々しき口から毒を吹き、苦しむ者に安らかな死を与えよ〉」
『―――〈翼蛇の邪息〉っ!』
黒い霧のような物が、杖から放たれる。
……よし、行くか。
「―――アルマッ!」
『いつでもいいよ!ご主人様っ!』
「〈全知全能の知恵よ。今ここに収束し、魔術を吸う障壁とならん〉ッ!」
『〈アテナ・ブレス〉っ!』
迫る黒霧が―――聖盾に吸い込まれた。
「え……なに、それ……」
「返すぜ―――ッ!」
『とりゃあああああああっ!』
聖盾が怪しく光った―――かと思うと、黒霧が放たれた。
これが『聖盾 イージス』の能力……魔法を吸収し、放出する事ができる。
リリアナの『聖剣 エクスカリバー』の能力『グラン・セイバー』も強力だが……イージスの力は、相手が魔法を使うなら、無敵と言っても過言ではない力を発揮する。
「そんな……魔法を―――」
『ボシュゥゥゥゥゥゥン……』と、ルーシャが黒霧に包まれた。
やがて黒霧が晴れ、そこには倒れた少女の姿。
「……勝者、アルバトスッ!」
「よっし……〈武器化解除〉」
聖剣と聖盾が変化し……元のリリアナとアルマの姿に戻る。
「すげーなアルバトス!」
「レテイン……たまたま運が良かっただけだ」
「それでもだ!強いな、お前!」
「次!サリスとバルトナ、前へ!」
……サリス・ドゥーマ……こいつの力、しっかり見とかないといけないな。
「……トリア」
「うん」
「行くよ、オディン」
「御意」
それぞれの『神器』に呼び掛け、集中を深めていく。
「構えて」
「「〈〈我、神の創造せし武具を操りし者。結ばれし契約に従い、汝に真の名を与えん〉〉」」
サリスとバルトナが同時に詠唱を始める。
「―――〈我が下に目覚めよ―――愚民を踏み潰す絶対神の鎚、『魔鎚 ミョルニル』〉」
「〈我が下に目覚めよ―――勝利を呼びし主神の槍、『神槍 グングニル』〉ッ!」
ミョルニルに……グングニル?!
それって、リリアナたちと同じ『最上位神器』じゃないか?!
「―――始めッ!」
セシル先生の合図―――それと同時、バルトナが鋭く踏み込んだ。
ちょっと遠いが、あの槍だったら届く間合いだ。
さあ……どう避けるんだ―――
「〈震えろ愚民、恐れろ愚者。神の下に抗う事は許されないのだ〉」
『〈トール・インパクト〉』
大きく上に飛んだサリスが―――鎚を振った。
上空で、何もない所に、なんの力も入れずに、ただ振った。
だが―――直後。
『ズドッ―――ゴォオオオオオオオンンッッ!!』
「……またクレーターか」
「うはー……すげぇ威力だな」
隣で腕を組むレテインが、苦笑を浮かべる。
……なんて威力だ。
上空で鎚を振っただけなのに……ここまでの威力が出るなんて。
「……勝者、サリス!」
「〈武器化解除〉……」
無口な少女2人が、ちょこんと俺のうしろに座った。
「次は……レテインとグローリアだ、前へ」
「おっ……ちょっと行ってくるぜ、アルバトス!」
「おう、頑張れよ」
レテインを見送り―――後ろに座る、サリスをチラ見する。
……スッゲー怖い……全然喋らないし……何者なんだろうな。
「行くぜルーン!」
「う、ううう、うん……」
「……グラルテストォ……」
「おう」
「構えて」
「「〈〈我、神の創造せし武具を操りし者。結ばれし契約に従い、汝に真の名を与えん〉〉」」
レテインとグローリアが同時に詠唱を始める。
「〈我が下に目覚めよッ!―――蒼き炎を纏いし杖ッ!『蒼杖 レーヴァテイン』〉ッ!」
「〈我が下に目覚めよォ―――竜を討ちし怒れる剣ィ、『怒剣 グラム』ゥ〉」
……なんか、グローリアの話し方、独特だな。
「始めッ!」
「―――〈怒れェ、憤れェ。憤怒に身を任しィ、目の前の敵を討つべしィ〉」
『〈ドラゴン・スレイヤー〉』
グローリアの体が輝いた―――かと思うと、凄まじい速さでレテインとの間合いを詰め始めた。
あれは―――肉体強化の魔法か?
「〈渦巻け炎よッ!その身を焦がすほどの熱を放ちッ!歯向かう敵を殲滅せよッ!〉」
『〈カグツチ・渦ノ型〉』
レテインの杖から蒼炎が溢れ出す。
それが少しずつ形を変え―――
「なっ―――あああああああァ?!」
蒼炎の渦が、グローリアの姿を呑み込んだ。
……あれはダメだな。グローリアのやつ、負けたか―――
「―――はっはァ!やんじゃねェかァ!」
……意識が、ある?!
嘘だろ、このグラウンドは『死ぬ事も傷を負う事もないが、痛みはある』んだぞ?!
今グローリアの体には、実際に炎で包まれているような痛みが存在してるはずなのに!
「………………壊れてる……」
ボソリとしたサリスの呟き。
言う通りだ。壊れてるぞ、あいつの頭と体!
「〈羽ばたけ炎よッ!その身を焦がすほどの熱を放ちッ!歯向かう敵を殲滅せよッ!〉」
『〈カグツチ・鳥ノ型〉』
再び蒼炎が形を変え―――鳥の形を作り出す。
「行けッ!」
『ギュオンッ!』と、蒼鳥が上空のグローリアに襲い掛かる。
「遅ェ、なァ!」
迫る蒼鳥を、グローリアが切り落とそうとし―――
「しィ―――あァ?!」
「甘えな!」
急速に方向転換。
おいおいおい……放った魔法をあれだけ繊細に操作するとか、レテインもかなり化け物じゃねえか!
「落ちなッ―――!」
「ぐっ―――あああああああァッ!」
直撃。
蒼鳥が直撃し……グローリアが、ピクリとも動かなくなった。
……さすがに二度も直撃すれば、動けないみたいだな。
「……勝者、レテイン!」
「よっしゃあああ!」
……なるほど、あれだ。
さすがSクラスって感じだな。
「〈武器化解除〉……やったなルーン!」
「あ、うん。やや、やったねレテイン君」
「次、ミロードとジェルム」
緑髪の少女と白髪の少女が立ち上がり、前に出る。
……なんか、このクラス女子多くない?
「やったぜアルバトス!」
「おう、レテインもスゴかったな」
ハイタッチを交わし、レテインが俺の隣に座る。
「にしても……あのグローリアってやつ、強かったな」
「ああ、俺の蒼炎が直撃して、あんだけ元気だったやつはあいつが始めてだ」
……確かに。
レテインの蒼炎、あれはかなりの威力だった。
あれを食らって動けるなんて……
「構えて」
「「〈〈我、神の創造せし武具を操りし者。結ばれし契約に従い、汝に真の名を与えん〉〉」」
……にしても……ミョルニルにグングニル、それにレーヴァテインか……
『最上位神器』が、リリアナたち以外に3人もいるなんて……
「〈我が下に目覚めよ―――創造破壊を繰り返す弓、『月弓 ピナカ』〉」
「〈我が下に目覚めよ―――命を狩る反逆の爪、『魂鎌 ソウルイーター』〉」
弓と鎌……か。
ピナカは『上位神器』だったはずだ……よく見とかないと。
「―――始めッ!」
「〈喰らえ、喰らえ、喰らえ。その魂の輝きを、死神の鎌が狩りとろう〉」
『〈デス・サイズ〉』
ジェルムの握る鎌が―――巨大化。
その大きさ、元の大きさの3倍以上。
「ふ―――っ!」
振り上げ、ジェルムが距離を詰める。
「〈月を撃て、太陽を撃て、地を撃て、天を撃て。我が月弓に、貫けぬ物は無し〉」
『〈ネグロ・ルーナ〉』
赤黒い雷。
三日月の形をした弓に、赤黒い雷が宿った。
「撃つ―――ッ!」
「チッ―――」
『バチィッ!』
赤黒い雷の矢と、巨大な鎌がぶつかった。
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ミロードの背後―――そこには、もう1人のジェルムが立っていた。
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