お前ら『神器』って自覚ある?

ibis

5話

「今日からこのSクラスの担任になる、『セシル・フーパー』だ。お前らは学院から選ばれた18人……その自覚を持って、この3年間しっかり『神器使い』としての勉強をしてくれ」

 部屋にいたリリアナとソフィアを連れ、Sクラスにやって来た。
 クラスの人数は18人。
 俺とリリアナ、アルマとソフィア以外に、14人もいるって事だ。

「早速で悪いが……今日は、クラス内で戦闘訓練を行う」

 セシル先生の言葉に、全員の表情が引き締まる。

「『神器使い』は8人か……それじゃ、適当に相手を組むぞ」

 クラス全体を見回すセシル先生が―――俺を指さした。

「最初はアルバトスと『ルーシャ』……次がサリスと『バルトナ』。その次が『レテイン』と『グローリア』。最後が『ミロード』と『ジェルム』……以上の順番で行う。この後、10時より始めるので、それまでに昨日のグラウンドに来るように……以上だ」

 ……いきなり戦闘訓練か。
 初日だから軽く挨拶するだけかと思ったけど……さすが『アーネスト学院』。意識が高いな。

「―――ちょっとあなた」
「………………ん、あ?俺?」
「あなたよ!ボーッとした顔のあなた!」

 紫髪の少女が、隣に女を連れて立っていた。
 こいつは……俺と戦う事になっている、『ルーシャ・ドレイク』……だったような気がする。

「……なんか用?」
「いえ、ワタクシに負ける不幸な人の顔を見ておこうと思いましてね……見れば、昨日散々目立っていた人ではないですか」
「目立ってたって……目立ってたの?」
「えぇ、赤髪の女の子とあなたのせいで、ワタクシがまったく目立てなかったですわ!」

 ……それって、俺が悪いの?

「もちろん、これはワタクシの勝手な気持ち……あなたには関係がないですわ」
「……うん、そだね」
「ですが、戦闘訓練は手を抜きませんから……では、グラウンドで会いましょう」

 クルリと優雅に反転し、ルーシャが教室の外に出ていく。
 ……なんか、変なのに絡まれたなぁ。

「おうお前……アルバトス、だっけか?」
「……誰?」
「あ、俺は『レテイン・バーニング』!こいつは俺の『神器』の『ルーン』ってんだ!」

 ボサボサの茶髪のレテインと、大人しい青髪のルーンが近づいてくる。

「えっと……何か用?」
「さっきのやつ……ルーシャな。あいつ、自分より目立つやつがいると、手当たり次第に挑戦状を叩き付ける自信家でさ……何言われたか知らないけど、あんまり気にするなよ?」
「ああ、うん……ありがとな」
「おう!お互いに頑張ろうぜ!」

 ガッシリと握手を交わし、レテインが清々しい笑みを見せる。

「そんじゃ、グラウンド行こーぜ!アルバトス!」
「あ、ああ……行くぞ、お前ら」
「えぇ」
「はーい!」
「はい」

―――――――――――――――――――――――――

「時間通りだな……それでは、戦闘訓練を始める。アルバトスとルーシャ、前へ」

 立ち上がり、ルーシャと向かい合う。

「昨日の戦闘試験と同様、死ぬこともないし、傷を負うこともない。だが、痛みはある……いいな?」
「ういっす」
「はい」

 ……ルーシャの『神器』は、あの桃髪の少女か。
 『神器』の性能は、見た目ではわからない……アルマだって幼女なのに、『神器』としての性能はバカにならない。

「それでは……構えて」
「〈我、神の創造せし武具を操りし者。結ばれし契約に従い、汝にまことの名を与えん〉」

 ルーシャの詠唱に従い、隣の少女が輝き始める。

「〈我が下に目覚めよ―――双蛇を宿す、翼持ちし杖、『蛇杖 ケリュケイオン』〉っ!」

 ……黒い杖……って事は、魔法を使うのか。

「……アルマ、お前も来い」
「おー!やっとでばーん!」
「ご主人様、私は?」
「お前はいいや」
「はっ、くぅんん……♪」

 喜ぶソフィアを無視して、リリアナとアルマと手を繋ぐ。

「〈我、神の創造せし武具を操りし者。結ばれし契約に従い、汝に真の名を与えん〉」

 左手のリリアナが、右手のアルマが輝き出し、姿を変え始める。

「〈我が下に目覚めよ―――魔を払いし聖なる剣、『聖剣 エクスカリバー』―――生命いのちを守りし守護の盾、『聖盾 イージス』〉」

 神々しく輝く聖剣と、美しく光る聖盾が握られる。
 ……正直、杖を使う相手なら、アルマだけで充分なんだよな。

「……リリアナ、お前の出番は無さそうだ」
『そう……それは良いことだわ』
「準備はいいな?それでは―――始めッ!」

 セシル先生の声と共に、ルーシャの手に握られている杖が黒く輝き始める。

「〈混ざりし翼蛇、その禍々しき口から毒を吹き、苦しむ者に安らかな死を与えよ〉」
『―――〈翼蛇の邪息〉っ!』

 黒い霧のような物が、杖から放たれる。
 ……よし、行くか。

「―――アルマッ!」
『いつでもいいよ!ご主人様っ!』
「〈全知全能の知恵よ。今ここに収束し、魔術を吸う障壁とならん〉ッ!」
『〈アテナ・ブレス〉っ!』

 迫る黒霧が―――聖盾に吸い込まれた。

「え……なに、それ……」
「返すぜ―――ッ!」
『とりゃあああああああっ!』

 聖盾が怪しく光った―――かと思うと、黒霧が放たれた。
 これが『聖盾 イージス』の能力……魔法を吸収し、放出する事ができる。
 リリアナの『聖剣 エクスカリバー』の能力『グラン・セイバー』も強力だが……イージスの力は、相手が魔法を使うなら、無敵と言っても過言ではない力を発揮する。

「そんな……魔法を―――」

 『ボシュゥゥゥゥゥゥン……』と、ルーシャが黒霧に包まれた。
 やがて黒霧が晴れ、そこには倒れた少女の姿。

「……勝者、アルバトスッ!」
「よっし……〈武器化解除〉」

 聖剣と聖盾が変化し……元のリリアナとアルマの姿に戻る。

「すげーなアルバトス!」
「レテイン……たまたま運が良かっただけだ」
「それでもだ!強いな、お前!」
「次!サリスとバルトナ、前へ!」

 ……サリス・ドゥーマ……こいつの力、しっかり見とかないといけないな。

「……トリア」
「うん」
「行くよ、オディン」
「御意」

 それぞれの『神器』に呼び掛け、集中を深めていく。

「構えて」
「「〈〈我、神の創造せし武具を操りし者。結ばれし契約に従い、汝に真の名を与えん〉〉」」

 サリスとバルトナが同時に詠唱を始める。

「―――〈我が下に目覚めよ―――愚民を踏み潰す絶対神の鎚、『魔鎚 ミョルニル』〉」
「〈我が下に目覚めよ―――勝利を呼びし主神の槍、『神槍 グングニル』〉ッ!」

 ミョルニルに……グングニル?!
 それって、リリアナたちと同じ『最上位神器』じゃないか?!

「―――始めッ!」

 セシル先生の合図―――それと同時、バルトナが鋭く踏み込んだ。
 ちょっと遠いが、あの槍だったら届く間合いだ。
 さあ……どう避けるんだ―――

「〈震えろ愚民、恐れろ愚者。神の下に抗う事は許されないのだ〉」
『〈トール・インパクト〉』

 大きく上に飛んだサリスが―――鎚を振った。
 上空で、何もない所に、なんの力も入れずに、ただ振った。
 だが―――直後。


































『ズドッ―――ゴォオオオオオオオンンッッ!!』




























「……またクレーターか」
「うはー……すげぇ威力だな」

 隣で腕を組むレテインが、苦笑を浮かべる。
 ……なんて威力だ。
 上空で鎚を振っただけなのに……ここまでの威力が出るなんて。

「……勝者、サリス!」
「〈武器化解除〉……」

 無口な少女2人が、ちょこんと俺のうしろに座った。

「次は……レテインとグローリアだ、前へ」
「おっ……ちょっと行ってくるぜ、アルバトス!」
「おう、頑張れよ」

 レテインを見送り―――後ろに座る、サリスをチラ見する。
 ……スッゲー怖い……全然喋らないし……何者なんだろうな。

「行くぜルーン!」
「う、ううう、うん……」
「……グラルテストォ……」
「おう」
「構えて」
「「〈〈我、神の創造せし武具を操りし者。結ばれし契約に従い、汝に真の名を与えん〉〉」」

 レテインとグローリアが同時に詠唱を始める。

「〈我が下に目覚めよッ!―――蒼き炎をまといし杖ッ!『蒼杖 レーヴァテイン』〉ッ!」
「〈我が下に目覚めよォ―――竜を討ちし怒れるつるぎィ、『怒剣 グラム』ゥ〉」

 ……なんか、グローリアの話し方、独特だな。

「始めッ!」
「―――〈いかれェ、いきどおれェ。憤怒に身を任しィ、目の前の敵を討つべしィ〉」
『〈ドラゴン・スレイヤー〉』

 グローリアの体が輝いた―――かと思うと、凄まじい速さでレテインとの間合いを詰め始めた。
 あれは―――肉体強化の魔法か?

「〈渦巻け炎よッ!その身を焦がすほどの熱を放ちッ!歯向かう敵を殲滅せんめつせよッ!〉」
『〈カグツチ・渦ノ型〉』

 レテインの杖から蒼炎が溢れ出す。
 それが少しずつ形を変え―――

「なっ―――あああああああァ?!」

 蒼炎の渦が、グローリアの姿を呑み込んだ。
 ……あれはダメだな。グローリアのやつ、負けたか―――

「―――はっはァ!やんじゃねェかァ!」

 ……意識が、ある?!
 嘘だろ、このグラウンドは『死ぬ事も傷を負う事もないが、痛みはある』んだぞ?!
 今グローリアの体には、実際に炎で包まれているような痛みが存在してるはずなのに!

「………………壊れてる……」

 ボソリとしたサリスの呟き。
 言う通りだ。壊れてるぞ、あいつの頭と体!

「〈羽ばたけ炎よッ!その身を焦がすほどの熱を放ちッ!歯向かう敵を殲滅せよッ!〉」
『〈カグツチ・鳥ノ型〉』

 再び蒼炎が形を変え―――鳥の形を作り出す。

「行けッ!」

 『ギュオンッ!』と、蒼鳥が上空のグローリアに襲い掛かる。

おっせェ、なァ!」

 迫る蒼鳥を、グローリアが切り落とそうとし―――

「しィ―――あァ?!」
あめえな!」

 急速に方向転換。
 おいおいおい……放った魔法をあれだけ繊細に操作するとか、レテインもかなり化け物じゃねえか!

「落ちなッ―――!」
「ぐっ―――あああああああァッ!」

 直撃。
 蒼鳥が直撃し……グローリアが、ピクリとも動かなくなった。
 ……さすがに二度も直撃すれば、動けないみたいだな。

「……勝者、レテイン!」
「よっしゃあああ!」

 ……なるほど、あれだ。
 さすがSクラスって感じだな。

「〈武器化解除〉……やったなルーン!」
「あ、うん。やや、やったねレテイン君」
「次、ミロードとジェルム」

 緑髪の少女と白髪の少女が立ち上がり、前に出る。
 ……なんか、このクラス女子多くない?

「やったぜアルバトス!」
「おう、レテインもスゴかったな」

 ハイタッチを交わし、レテインが俺の隣に座る。

「にしても……あのグローリアってやつ、強かったな」
「ああ、俺の蒼炎が直撃して、あんだけ元気だったやつはあいつが始めてだ」

 ……確かに。
 レテインの蒼炎、あれはかなりの威力だった。
 あれを食らって動けるなんて……

「構えて」
「「〈〈我、神の創造せし武具を操りし者。結ばれし契約に従い、汝に真の名を与えん〉〉」」

 ……にしても……ミョルニルにグングニル、それにレーヴァテインか……
 『最上位神器』が、リリアナたち以外に3人もいるなんて……

「〈我が下に目覚めよ―――創造破壊を繰り返す弓、『月弓 ピナカ』〉」
「〈我が下に目覚めよ―――命を狩る反逆の爪、『魂鎌 ソウルイーター』〉」

 弓と鎌……か。
 ピナカは『上位神器』だったはずだ……よく見とかないと。

「―――始めッ!」
「〈喰らえ、喰らえ、喰らえ。その魂の輝きを、死神の鎌が狩りとろう〉」
『〈デス・サイズ〉』

 ジェルムの握る鎌が―――巨大化。
 その大きさ、元の大きさの3倍以上。

「ふ―――っ!」

 振り上げ、ジェルムが距離を詰める。

「〈月を撃て、太陽を撃て、地を撃て、天を撃て。我が月弓に、貫けぬ物は無し〉」
『〈ネグロ・ルーナ〉』

 赤黒い雷。
 三日月の形をした弓に、赤黒い雷が宿った。

「撃つ―――ッ!」
「チッ―――」

 『バチィッ!』
 赤黒い雷の矢と、巨大な鎌がぶつかった。

「〈死神の鎌は1つにあらず。亡霊悪霊を従え、我が力となれ〉」
『〈ファントム・レイド〉』

 『ヴンッ』と、ジェルムの姿がブレた。
 何があったか理解をする前に、ミロードが地面に倒れる。
 ミロードの背後―――そこには、もう1人のジェルムが立っていた。

「……勝者、ジェルム!」

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