お前ら『神器』って自覚ある?
3話
「……うっぷ」
「ご主人様、大丈夫ですか?」
「ああうん、ちょっと緊張して……」
深呼吸し、目の前の建物を見上げる。
『アーネスト学院』……今日から俺が―――いや、俺たちが通う学院。
「何に緊張するのよ。入学式と戦闘試験をしたら終わりでしょ?」
「ご主人様ヘタレだー!」
ヘタレってお前……
「はぁ……ふぅ……」
「ヘタレご主人様!早く行こっ!」
「ヘタレご主人様はやめてくれない?傷つくから」
「いいから行こー!」
アルマに引っ張られながら、学院の中に入る。
「ねぇヘタレご主人」
「その呼び方を定着させようとするな。なんだ?」
「戦闘試験って、何するのかしら?」
戦闘試験。
そもそも、この世界には『モンスター』が存在する。
モンスターは『魔王』が残した負の産物とかなんとか言われているが、実際の所よくわかっていない。
まあ簡単に言うなら、モンスターは『神器』でしか討伐できない。
だからこの『アーネスト学院』に、『神器』が使える少年少女を集め、モンスターを討伐する者を育成する……との事らしい。
で、現段階でどれほど戦えるかを調べるために、戦闘試験を行うらしい。
「……まあ、戦闘試験っていうからには、戦うんじゃないか?」
「………………はぁ~~~……」
「ど、どうした急に」
「……戦うって事は、必然的にあたしを使うでしょ?」
「そりゃそうだ。お前がいないと俺の攻撃手段がなくなるからな」
俺の言葉を聞いたリリアナが、めんどくさそうに肩を落とす。
「まあそう言うなよ。お前が一番頼りなんだからさ」
「た、頼り?一番?……ふふ、まあそりゃそうよね!あたしは泣く子も黙る『聖剣』だし?ご主人があたしを必要とするのも?まあ仕方がないと言うか?」
チョロいなこの『聖剣』。
「はいはーい!ご主人様、アルマはー?」
「んー……アルマとソフィアは、今日はお休みかな」
「えー?!なんでなんで!アルマもご主人様の役に立ちたいよー!」
「ご主人様、私たちは力不足ですか?不必要ですか?それでしたら、相応のバツを受けます!何なりと言ってください!……ふへ、ふへへへ……♪」
相変わらずこいつはブッ飛んでんな!
「違う。手の内を見せるのは良くないと思うんだよ」
「手の内……ですか?」
「ああ。『アーネスト学院』は、普通の授業に戦闘訓練、そして戦闘試験が導入されている。ここでアルマやソフィアの『聖盾』と『聖鎧』を見せたら、次の戦闘訓練とかで対策されるだろ?」
普通の授業に戦闘訓練が導入されている……簡単な話、勝てば点数が増える。負ければ減る。
今回アルマとソフィアを見せれば……すぐに対策されてしまう。
だから使わない。簡単な理由だ。
「そうですか……確かに一理あります。それでしたら、私とアルマは大人しく待っておくとしましょう」
「えー……でもー……」
「頼むアルマ、俺とリリアナを信じて待っててくれ」
「……ご主人様がそこまで言うなら、大人しく待ってる」
むくれるアルマの頭を撫で、『戦闘用グラウンド』に向かう。
……さて、暴れようか。
―――――――――――――――――――――――――
学院を歩くこと5分、グラウンドに着いた。
グラウンド―――いや、闘技場じゃねえか。
俺たちは闘技場の観客席に座り、闘技場の真ん中に立つ人に注目していた。
『あー……あー……やあやあ、ワタシは学院長の『シエラ』だ!新入生の諸君、よろしく頼むぞ!』
闘技場の真ん中で、綺麗な女性が司会を行っていた。
あれが学院長の『シエラ・マスカレード』……現時点で最強の『神器使い』か。
『それでは……ただいまより!第23回、『アーネスト学院』入学式、及び戦闘試験を開始する!』
『ウォオオオオオオオオオオオオオッ!』と、闘技場が歓声に包まれる。
『新入生の相手は在校生が行う!先輩の胸を借りるつもりでドーンとぶつかって行け!怪我の心配も無用だ。闘技場には特殊な魔法細工が施されている!死ぬ事はない!痛みはあるがな!かっかっか!』
……在校生と戦うのか。
やっぱり在校生の方が経験があるだろうからな……ちょっと厳しい戦いになりそうだ。
「……嬉しそうね」
「んあ?」
「ご主人の顔、イキイキしてるわ。そんなイキイキした顔のご主人、久しぶりに見た」
「ああ、そうかもな」
自分より強いかも知れない相手と戦える……楽しみだ。
「……確か、自分の順番になったら放送が入るんだよな?」
「はい。そうだったと思われます」
『この戦闘試験の結果、そして戦闘内容によってクラスを振り分けるぞ!上位のクラスに入りたいなら、先輩を倒し、教師に実力を見せるがいい!それでは―――開幕だッ!』
再び、闘技場が歓声に包まれる。
「……リリアナ」
「ん?」
「勝つぞ」
「誰に言ってんのよ。あたしは天下無双の『聖剣』よ?あたしに斬れない物はない……勝つか負けるかは、ご主人の腕次第よ」
『それでは第1試合!『サリス・ドゥーマ』!闘技場に降りてくるがいい!』
いや、闘技場って。グラウンドじゃないのかよ?
『それでは―――試合、開始ッ!』
「……ご主人様」
「ん、どしたソフィア?」
「……と、トイレに行ってもよろしいでしょうか」
「……行ってらっしゃい」
少し顔を赤くしたソフィアが、イソイソとトイレに向かう。
「……ご主人様ー」
「ん?」
「暇ー」
「……もうちょい我慢してくれ」
「えー、遊んで遊んでー!」
騒がしいアルマを無視し、闘技場に目を向ける―――
『ズドッ―――ゴォオオオオオオオンンッッ!!』
「な……はぁ?!」
「なに、今の……?!」
闘技場のど真ん中。
そこに、無かったはずのクレーターができていた。
「……あいつの『神器』か……?!」
「見た感じ、ハンマーかしら……でも、あんな威力が出るなんて……」
「……ご主人様……」
ギュッと、アルマが不安そうに抱きついてくる。
……なんだあの威力は……?
腕力か?それとも、『神器』の特性か?
『試合終了!サリス・ドゥーマの勝利!』
沈黙に包まれていた闘技場が……割れんばかりの拍手に包まれた。
「……あんなのがいるのか」
「スゴいわね……」
『どんどん行くぞ!第2試合!アルバトス・スカルデッド!』
「おっ……行くか、リリアナ」
「えぇ……見せてあげましょう、ご主人の強さを」
―――――――――――――――――――――――――
「よし……リリアナ、準備は?」
「いつでもいいわ」
闘技場の中。
俺は、2つ年上の男と向かい合っていた。
「ご主人様ー!頑張ってー!」
俺の背後―――闘技場の下で、アルマとソフィアが見守ってくれている。
「ふん……お前のようなチビが入学を許されるとは、時代も進んだものだな……おいお前!」
杖を構える男が話し掛けてくる。
「痛い目に遭いたくないなら、棄権しろ……さもなくば、遠慮なく叩き潰すぞ」
「へぇ……そりゃ楽しみだな、先輩」
「はぁ……めんどくさいから、早めに終わらせてよね?」
ヤバイ、リリアナのテンションが下がってきた。
『それでは……試合開始ッ!』
「―――〈浄化の紅炎〉ッ!」
『ゴオッ!』と、紅い炎が飛んでくる。
その距離、およそ30メートル。
―――こんなの、簡単に避けられるっての。
「リリアナ」
「ん」
横っ飛びで紅炎を回避し、リリアナと手を繋いで―――
「―――〈我、神の創造せし武具を操りし者。結ばれし契約に従い、汝に真の名を与えん〉」
再び紅炎が放たれる―――いや、その前にリリアナが武器化する方が早い。
「〈我が下に目覚めよ―――魔を払いし聖なる剣、『聖剣 エクスカリバー』〉」
リリアナの姿が輝く。
それと同時、体がどんどん小さくなり―――美しい聖剣へと姿を変えた。
『……武器化ってキツいんだから、なるべく早く終わらせてよね』
「わかってるっての」
聖剣を構え、迫る紅炎と対峙する。
「バカめ―――燃え尽きて終わりだ!」
静かに。あくまで静かに。
心を乱せば、詠唱が乱れる。
「〈聖なる力よ。今ここに集いて、森羅万象を裂く刃とならん〉ッ!」
『〈グラン・セイバー〉ッ!』
輝き始めた聖剣を振り上げ―――振り下ろす。
「なっ―――ぐはっ?!」
振り下ろすと同時に出る衝撃波。
剣から出た衝撃波が、紅炎を裂き―――その先にいた先輩の体を斬った。
「……さすがリリアナ」
『ふん!こんなのザコじゃない!』
『決着!アルバトス・スカルデッドの勝利!』
「さっすがご主人様っ!」
「お見事です」
さて……どのクラスに振り分けられるかな?
「ご主人様、大丈夫ですか?」
「ああうん、ちょっと緊張して……」
深呼吸し、目の前の建物を見上げる。
『アーネスト学院』……今日から俺が―――いや、俺たちが通う学院。
「何に緊張するのよ。入学式と戦闘試験をしたら終わりでしょ?」
「ご主人様ヘタレだー!」
ヘタレってお前……
「はぁ……ふぅ……」
「ヘタレご主人様!早く行こっ!」
「ヘタレご主人様はやめてくれない?傷つくから」
「いいから行こー!」
アルマに引っ張られながら、学院の中に入る。
「ねぇヘタレご主人」
「その呼び方を定着させようとするな。なんだ?」
「戦闘試験って、何するのかしら?」
戦闘試験。
そもそも、この世界には『モンスター』が存在する。
モンスターは『魔王』が残した負の産物とかなんとか言われているが、実際の所よくわかっていない。
まあ簡単に言うなら、モンスターは『神器』でしか討伐できない。
だからこの『アーネスト学院』に、『神器』が使える少年少女を集め、モンスターを討伐する者を育成する……との事らしい。
で、現段階でどれほど戦えるかを調べるために、戦闘試験を行うらしい。
「……まあ、戦闘試験っていうからには、戦うんじゃないか?」
「………………はぁ~~~……」
「ど、どうした急に」
「……戦うって事は、必然的にあたしを使うでしょ?」
「そりゃそうだ。お前がいないと俺の攻撃手段がなくなるからな」
俺の言葉を聞いたリリアナが、めんどくさそうに肩を落とす。
「まあそう言うなよ。お前が一番頼りなんだからさ」
「た、頼り?一番?……ふふ、まあそりゃそうよね!あたしは泣く子も黙る『聖剣』だし?ご主人があたしを必要とするのも?まあ仕方がないと言うか?」
チョロいなこの『聖剣』。
「はいはーい!ご主人様、アルマはー?」
「んー……アルマとソフィアは、今日はお休みかな」
「えー?!なんでなんで!アルマもご主人様の役に立ちたいよー!」
「ご主人様、私たちは力不足ですか?不必要ですか?それでしたら、相応のバツを受けます!何なりと言ってください!……ふへ、ふへへへ……♪」
相変わらずこいつはブッ飛んでんな!
「違う。手の内を見せるのは良くないと思うんだよ」
「手の内……ですか?」
「ああ。『アーネスト学院』は、普通の授業に戦闘訓練、そして戦闘試験が導入されている。ここでアルマやソフィアの『聖盾』と『聖鎧』を見せたら、次の戦闘訓練とかで対策されるだろ?」
普通の授業に戦闘訓練が導入されている……簡単な話、勝てば点数が増える。負ければ減る。
今回アルマとソフィアを見せれば……すぐに対策されてしまう。
だから使わない。簡単な理由だ。
「そうですか……確かに一理あります。それでしたら、私とアルマは大人しく待っておくとしましょう」
「えー……でもー……」
「頼むアルマ、俺とリリアナを信じて待っててくれ」
「……ご主人様がそこまで言うなら、大人しく待ってる」
むくれるアルマの頭を撫で、『戦闘用グラウンド』に向かう。
……さて、暴れようか。
―――――――――――――――――――――――――
学院を歩くこと5分、グラウンドに着いた。
グラウンド―――いや、闘技場じゃねえか。
俺たちは闘技場の観客席に座り、闘技場の真ん中に立つ人に注目していた。
『あー……あー……やあやあ、ワタシは学院長の『シエラ』だ!新入生の諸君、よろしく頼むぞ!』
闘技場の真ん中で、綺麗な女性が司会を行っていた。
あれが学院長の『シエラ・マスカレード』……現時点で最強の『神器使い』か。
『それでは……ただいまより!第23回、『アーネスト学院』入学式、及び戦闘試験を開始する!』
『ウォオオオオオオオオオオオオオッ!』と、闘技場が歓声に包まれる。
『新入生の相手は在校生が行う!先輩の胸を借りるつもりでドーンとぶつかって行け!怪我の心配も無用だ。闘技場には特殊な魔法細工が施されている!死ぬ事はない!痛みはあるがな!かっかっか!』
……在校生と戦うのか。
やっぱり在校生の方が経験があるだろうからな……ちょっと厳しい戦いになりそうだ。
「……嬉しそうね」
「んあ?」
「ご主人の顔、イキイキしてるわ。そんなイキイキした顔のご主人、久しぶりに見た」
「ああ、そうかもな」
自分より強いかも知れない相手と戦える……楽しみだ。
「……確か、自分の順番になったら放送が入るんだよな?」
「はい。そうだったと思われます」
『この戦闘試験の結果、そして戦闘内容によってクラスを振り分けるぞ!上位のクラスに入りたいなら、先輩を倒し、教師に実力を見せるがいい!それでは―――開幕だッ!』
再び、闘技場が歓声に包まれる。
「……リリアナ」
「ん?」
「勝つぞ」
「誰に言ってんのよ。あたしは天下無双の『聖剣』よ?あたしに斬れない物はない……勝つか負けるかは、ご主人の腕次第よ」
『それでは第1試合!『サリス・ドゥーマ』!闘技場に降りてくるがいい!』
いや、闘技場って。グラウンドじゃないのかよ?
『それでは―――試合、開始ッ!』
「……ご主人様」
「ん、どしたソフィア?」
「……と、トイレに行ってもよろしいでしょうか」
「……行ってらっしゃい」
少し顔を赤くしたソフィアが、イソイソとトイレに向かう。
「……ご主人様ー」
「ん?」
「暇ー」
「……もうちょい我慢してくれ」
「えー、遊んで遊んでー!」
騒がしいアルマを無視し、闘技場に目を向ける―――
『ズドッ―――ゴォオオオオオオオンンッッ!!』
「な……はぁ?!」
「なに、今の……?!」
闘技場のど真ん中。
そこに、無かったはずのクレーターができていた。
「……あいつの『神器』か……?!」
「見た感じ、ハンマーかしら……でも、あんな威力が出るなんて……」
「……ご主人様……」
ギュッと、アルマが不安そうに抱きついてくる。
……なんだあの威力は……?
腕力か?それとも、『神器』の特性か?
『試合終了!サリス・ドゥーマの勝利!』
沈黙に包まれていた闘技場が……割れんばかりの拍手に包まれた。
「……あんなのがいるのか」
「スゴいわね……」
『どんどん行くぞ!第2試合!アルバトス・スカルデッド!』
「おっ……行くか、リリアナ」
「えぇ……見せてあげましょう、ご主人の強さを」
―――――――――――――――――――――――――
「よし……リリアナ、準備は?」
「いつでもいいわ」
闘技場の中。
俺は、2つ年上の男と向かい合っていた。
「ご主人様ー!頑張ってー!」
俺の背後―――闘技場の下で、アルマとソフィアが見守ってくれている。
「ふん……お前のようなチビが入学を許されるとは、時代も進んだものだな……おいお前!」
杖を構える男が話し掛けてくる。
「痛い目に遭いたくないなら、棄権しろ……さもなくば、遠慮なく叩き潰すぞ」
「へぇ……そりゃ楽しみだな、先輩」
「はぁ……めんどくさいから、早めに終わらせてよね?」
ヤバイ、リリアナのテンションが下がってきた。
『それでは……試合開始ッ!』
「―――〈浄化の紅炎〉ッ!」
『ゴオッ!』と、紅い炎が飛んでくる。
その距離、およそ30メートル。
―――こんなの、簡単に避けられるっての。
「リリアナ」
「ん」
横っ飛びで紅炎を回避し、リリアナと手を繋いで―――
「―――〈我、神の創造せし武具を操りし者。結ばれし契約に従い、汝に真の名を与えん〉」
再び紅炎が放たれる―――いや、その前にリリアナが武器化する方が早い。
「〈我が下に目覚めよ―――魔を払いし聖なる剣、『聖剣 エクスカリバー』〉」
リリアナの姿が輝く。
それと同時、体がどんどん小さくなり―――美しい聖剣へと姿を変えた。
『……武器化ってキツいんだから、なるべく早く終わらせてよね』
「わかってるっての」
聖剣を構え、迫る紅炎と対峙する。
「バカめ―――燃え尽きて終わりだ!」
静かに。あくまで静かに。
心を乱せば、詠唱が乱れる。
「〈聖なる力よ。今ここに集いて、森羅万象を裂く刃とならん〉ッ!」
『〈グラン・セイバー〉ッ!』
輝き始めた聖剣を振り上げ―――振り下ろす。
「なっ―――ぐはっ?!」
振り下ろすと同時に出る衝撃波。
剣から出た衝撃波が、紅炎を裂き―――その先にいた先輩の体を斬った。
「……さすがリリアナ」
『ふん!こんなのザコじゃない!』
『決着!アルバトス・スカルデッドの勝利!』
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