死に戻りと成長チートで異世界救済 ~バチ当たりヒキニートの異世界冒険譚~

平尾正和/ほーち

第75話『なにはなくともお金は大事』

 ひとしりきデルフィと笑い転げた後、尋問タイムが始まった。


 ことここに至って隠し事をしてもしょうがないので、死に戻りのこと、世界救済の使命の詳細や1年の期限のこと、そしてステータスのことなどを包み隠さず話した。


「ふーん。つまり私はショウスケの使命に巻き込まれたってわけね」


「えっと……怒ってる?」


「ふふ、まさか。みんなが全部忘れても、私だけはショウスケのことを覚えてるって、なんかいいなって思ってね」


「へへ……。まあテキロもいるけど」


「……それは余計」


「いや、余計って。アイツはアイツで役に立つぜ?」


「そういう意味じゃない。いまあの子の話を出すのが余計って言ってんの」


「いや……まぁ……はい……」


 うーん、女心ってのは難しいね。


「で、今度は俺から質問なんだけど」


「ん?」


「配偶者ってどゆこと?」


「あ……」


 デルフィは何か思い出したような表情を見せた後、どんどん顔を赤くしている。


「俺らって、いつ結婚したわけ? いや、俺は嬉しいんだけどさ」


「……誓ったでしょ?」


「はい?」


「誓ったでしょ! 私のすべてを受け入れるって!!」


「……あの時?」


 おおう、そんな内容の誓いだったのかよ。


「そうよ!! 今さらナシとか言わないわよね!?」


 そっかぁ。


 あれはプロポーズだったのかぁ。


 プロポーズ女の子にさせて……、俺ってやっぱまだまだ情けない男だねぇ。


「ねぇ……嫌じゃないよね?」


「嫌なわけないじゃんか。望むところだっての!!」


「そ……よかった」


 そこで、俺の腹の虫がグゥと鳴る。


「あ……腹減った。耐えれるけど、飯食いたい」


「どこか行く?」


「……このカッコで?」


 今さらながら、このみすぼらしいい格好で街の中ウロウロしてこの宿まで来たことが恥ずかしくなってきたよ……。


「しょうがないわね。下で軽食買ってきてあげるわよ」


「苦労かけるねぇ……」




**********




 デルフィが持ってきたあまり美味しくないサンドイッチを食べながら、今後の方針について話し合う。


「ひとつ聞きたいんだけど、その”ステータス”っていうので、私のは確認できるの?」


「あ……どうなんだろ?」


 とりあえず俺のステータス出して……、それからデルフィーヌってとこに意識を集中すると……。


「あ、出た」




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名前:デルフィーヌ・ヤマオカ
職業:魔道弓士
レベル:121
配偶者:山岡勝介


HP:12462
MP:2495631(80867)


【スキル】SP:236,362,124
ハイエルフの誓約
古竜の加護
弓術:Lv7
短剣術:Lv3
風魔法:Lv6
地魔術:Lv1
水魔術:Lv1
火魔術:Lv1
風魔術:Lv5
炎魔術:Lv8
氷魔術Lv:8
雷魔術:Lv8
無魔術:Lv8
聖魔術:Lv8
生活魔術:Lv6
多重詠唱:Lv3
詠唱短縮:Lv5
魔力感知:Lv6
魔力操作:Lv8
気配察知:Lv7
危機察知:Lv2
気配隠匿:Lv7
精神耐性:Lv3
視覚強化:Lv5
夜目:Lv4
樹上移動術:Lv7
採取:Lv5
草刈鎌術:Lv4
野鋏術:Lv5
掬鋤術:Lv3
解体術:Lv2
気絶耐性:Lv1
酔い耐性:Lv3
空腹耐性:Lv7
・・・・・
・・・
・・



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 あ、苗字変わってる。


 うへへ……。


「何ニヤニヤしてんのよ?」


「ああ、いや、なんでもない。ちゃんと見れたよ」


 んー、見れるのはHP/MPとスキルだけか……。


 やっぱMPはチートだな。


 あとSPもえげつないことになってんな。


 まぁ餓鬼はもちろん飛行系の妖怪とテカブツ、あとコンちゃんが生み出した妖怪も倒しまくってたもんなぁ。


 しかしSPがあるってことは……、おお、習得可能スキルも出たなぁ。


「ねぇ、なんか覚えたいスキルってある?」


「スキル……?」


「ほら、さっき説明した”天啓”を自由に操作できるってやつ。例えば武術とか、魔法とか……。あと今使えるもののレベルアップも可能だけど」


「いきなりそう言われても……」


「んじゃあ、わかりやすく<多重詠唱>と<詠唱短縮>をレベルマックスまで上げてみるね」


「……ん? なにこれ?」


「お、なんか通知みたいなの来た?」


「通知? いえ……、なんというか、なにか閃いた……みたいな。そうね、天啓が降りてきたのとおなじ感覚ね」


 さすがに通知来るのは俺だけか。


「んじゃあとりあえず『灯火』あたりで試してみる?」


「うーん、試すまでもなく出来るってのが分かるんだけど……まぁ念のため」


 そして11個の灯りがすぐに現れる。


「あら、凄いわね」


「これ、『風陣』でも同じこと出来るからね」


「……そのようね」


 結局、スキルに関しては今のままでも充分活動出来るわけだし、今後必要に応じて覚えていこう、ということになった。


 ただ、話の流れで出た<アイテムボックス>に関しては便利そうなので覚えたい、と言われたが、【習得可能スキル】にも【習得不可能スキル】にも表示されなかった。


 どうやら『異世界転移基本パック』は異世界人の固有スキルらしい。




**********




「とりあえずその格好なんとかしないとね」


「そうだねぇ……」


 前回は生きるのに必死で格好のことなんか気にしてなかったけど、今回は変に余裕があるので、格好の方まで気が回ってしまうのだ。


「とりあえず明日服屋にでも行く?」


「うーん、そうしたいのは山々だけど……お金ある?」


「あ……」


「ちなみに俺は魔石売った20Gだけ。しかも魔術士ギルドに100G借金あり」


 デルフィが慌ててギルドカードと財布を確認する。


「……100Gもないわ。月末の宿代も払えないじゃない……」


 さて、当面の目標が出来た。


 お金だ。


 いくら人外の強さを持っていても、お金がなければ生活はままならい。


「手っ取り早いのはゴーレム狩りかなぁ」


「そうねぇ。でもその格好じゃあフェイトン山の受付は通してくれなさそうねぇ。武器もないし。とりあえず冒険者ギルドに登録してEランクまで上げましょうか」


「このカッコでギルド行くの恥ずかしいなぁ……」


 今日も一応行ったのは行ったけど、あの時はテンパってたからなぁ。


 冷静な状態だと厳しいわ……。


「私のマント貸してあげるわよ。膝ぐらいまでなら隠れるでしょ」


「すまないねぇ……」


 その日はそのままデルフィの宿に泊まった。


 この宿屋は部屋単位での料金設定なので、1人ぐらい住人が増えても文句は言われないみたいだ。




 翌朝、人が少ない時間に冒険者ギルドへ行く。


 一応デルフィのマントで膝ぐらいまでは隠れているので、多少見れる格好なはずだ。


 ペラッペラの靴だけはあんま見ないで欲しいけど……。


「おお、デルフィーヌちゃんなになにー? 彼氏?」


 現れたのはイケメン蜥蜴のフェデーレさん。


 なんだか懐かしいなぁ……。


「夫よ」


「え……」


 予想外の答えに固まるフェデーレさん。


「ども、デルフィーヌの夫のショウスケです。妻がいつもお世話になってます。今日は冒険者ギルドへ登録しに来ました」


「えっと、あの……冗談……だよね?」


「冗談言ってどうすんのよ。早く手続きしてちょうだい」


「あ……そう。えーっと、ショウスケさんですね? じゃあこちらへ」


 うーん、夫として堂々と紹介されるのは気分がいいけど、この空気は微妙だねぇ。


 結局デルフィも恥ずかしくなったのか、顔赤くしてうつむいてるし。


「じゃ、よろしくお願いします」


 とりあえず一通りの説明を受け、Gランク冒険者として登録を完了。


 そのままデルフィとパーティ登録を行い、薬草採取とFランク魔物討伐の依頼を受ける。


 パーティー名は考えるのが面倒なので『ヤマオカズ』にしといた。




 採取キット2人分をレンタルし、街の外へ出る。


 とりあえず<採取>や<草刈鎌術>等、採取に必要なスキルをお互いマックスまで上げ、狩りに役立つ<気配察知><魔力感知><気配隠匿>も、デルフィの了承を得てマックスに。


 ついでに<アイテムボックス>の<自動解体オプション>も習得しておいた。


 シェリジュの森程度なら今のレベルでも問題ないんだけど、どうせ上げるんなら早めに上げて、難易度が低い場所でスキルに慣れておいたほうがいいだろう。


 早速森に入り、採取と狩猟を開始。


 とりあえずFランクの魔物を中心に狩りつつ、目についた薬草を採取していく。


 自分たちでも驚くほど効率よく事が運び、午前中だけで500G分ぐらい稼げた。


 いやぁ、<アイテムボックス>の自動解体オプション便利だわ。


 一旦街に戻り、採取した薬草と完璧に解体された魔物を納品する。


「……デルフィーヌちゃん、旦那さん何者?」


 大量の納品に驚くフェデーレさん。


 そりゃそうだよな、冒険者登録初日で半日で500G稼ぐとか普通ありえないし。


 デルフィはつい昨日までは薬草をちびちびと採取してただけの見習い冒険者みたいな存在だったから、効率良くなった分の功績は全部俺の手柄って思われるだろうし。


 まぁその辺はデルフィも気にしてないけどね。


 とりあえず半日で無事Fランクになった俺は、すこしばかり懐に余裕ができたので、午後からデルフィとともに街へ繰り出し、最低限格好のつく服を手に入れることに成功した。 



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