死に戻りと成長チートで異世界救済 ~バチ当たりヒキニートの異世界冒険譚~

平尾正和/ほーち

第12話『基礎魔道講座』

「あれ、魔道講座って昨日ので終わりなんじゃ……?」


「魔力感知と魔力操作については教わらなくても出来る人が多いのよね。だから、アレはおねーさんからの特別サービスよ」


 やっぱちょいちょいエロいな、この人。


「基礎魔道講座っていうのは、魔法や魔術の原理を理解してもらう座学なのよ。まあ知らなくても魔術は使えるのだけど、知って理解しておいたほうがいいのよね。人によっては魔術効果が上がることもあるようだし」


「なるほど。じゃあお願いします」


「じゃあ、あのおじーちゃんについていってちょうだい」


 ハリエットさんが視線で示した先に、ヨボヨボのじいさんが立っていた。


「おい、用がすんだならさっさとどけ」


 不意に後ろから声が掛かる。


 誰か並んでんのは気付いてたけど、いきなり威圧的な声かけられるとちょっとビビるわ。


 振り向くと、そこには男が立っていた。


 なんか気難しそうな顔してんなぁ。


 鷲鼻が立派な、イケメンっちゃあイケメンだけど……目つきがなんかヤバい。


「はいはい、どうぞー」


 関わるとやばそうだからさっさと退散しよう。


「ハリエットさん! 今日は貴女あなたに似合う花を持ってきました!!」


「あのね、ヘクターさん。そういうのはいいから、ダギジリの根とか持ってきて下さいな……」


「あのような無粋なもの、貴女には似合いませんよ!!」


「はぁ……」


 なんか大変そうだな、ハリエットさん。


 まあ、あれだけ美人ならストーカーの1人や2人いそうだもんなぁ。


 とりあえず俺はこの無害そうなじいさんの世話になろう。


「よろしくのう、シュウスケくん。ふぉふぉふぉ」


「えーっと、ショウスケです」


「おお、そうかそうか、すまんのキョウスケくん」


「えーっと……」


 ま、いいか。




**********




 じいさんに連れられて入ったのは、20人ぐらいが入れる教室みたいなところだった。


 生徒は俺1人だったけど。


 じいさん、俺の名前覚えないくせに、授業は結構分かりやすかった。


 この世界の魔法ってのは、ファンタジーものでよくあるように、いろんな属性が力の源になっている。


 その属性ってのが、まず基本四元素である『地』『水』『火』『風』。


 そして比較的新しく提言された空間を司る新属性の『空』。


 原初属性といわれる『光』と『闇』。


 そしてどれにも属さない『無』。


 この8属性からなる。


 で、この8属性の力をいろいろ組み合わせつつ、魔力を動力源として何らかの現象を起こすことを魔法と言うんだそうな。


 さらに複数の属性を組み合わせた複合属性ってのもある。


 たとえば『火』×『風』=『炎』とか『水』×『火』=『氷』、『地』×『水』×『風』=『雷』みたいな感じ。


 他はわかるけど、なんで『火』と『水』で『氷』? って思ったら、『火』には熱を操る力もあるんだとか。


 なるほどねー。


 ただ魔法ってのは習得するにせよ使用するにせよ、気が遠くなるような修行が必要らしい。


 そこで魔法効果をある程度限定させることで覚えやすく、使いやすくしたものを魔術という。


 これら魔法や魔術を総合して魔道というんだと。




 じゃあここで攻撃魔術を例に<火魔法>と<火魔術>の違いをあげてみる。


 複合属性を含む各属性の攻撃魔術は『』『だん』『きゅう』『じん』『そう』『』『』『じん』の8種。


 <火魔術>の場合は『火矢かし』『火弾かだん』って感じになる。


 『火矢』ってのは細長い棒状の火を相手にぶつける魔術で、『火弾』は火を凝縮して弾丸状にすることで『火矢』より威力や射程を上げた魔術なんだが、『火矢』しか覚えてない術者は、どう頑張っても『火弾』を撃つことが出来ない。


 しかし<火魔法>をある程度使いこなせれば、矢の形だろうが弾の形だろうが、好きに撃てるんだけど、ものすごい修練が必要な上に、魔法は魔術に比べてコストパフォマンスが低い。


 つまり同程度の効果でも魔法のほうが、消費MPが大きいとってことだな。


 あと、魔術の方が先述した『炎』『雷』なんかの複合属性を使いやすいという利点もある。


 例えばあのクソ便利な『浄化』ってのは、8属性を全部使うんだと。


 『地』の研磨、『水』の洗浄、『火』の殺菌、『風』の乾燥、その他いろいろって感じで。


 それを素材や汚れによって適切に処理するってんだから『浄化』ってのは良く出来てるよ、ホント。


 これをいちいち魔法で処理しようとすると、千年に1人の超天才大魔道士が100年かけて習得できるかどうかってレベルなんだが、魔術として確立されれば簡単に使えるようになるんだとさ。


 この「魔法効果を魔術として確立させる」という研究こそ、魔術師ギルドの最も重要な役割だそうな。


 ちなみに魔術の習得方法だけど、お金払ってギルドで習得ってのが一般的らしいわ。


 くそー、やっぱ世の中金なのかー。


 あと、いくら魔術が使いやすいとはいえ、仮に習得しても使えるだけの能力がなければ使いこなせないこともあるんだとか。


 まあ、MPが足りない! みたいなことはあるだろうね、そりゃ。 


 それから、同じ魔術でも、術者の能力や魔力の込め方で効果を変化させるってのは出来るみたい。


 極端な話『火矢』に大量の魔力を込めて『火槍かそう』並みの威力をもたせることは可能なんだと。


 ただ、それなら『火槍』使ったほうが効率は良い、みたいな。


 そして魔道を操る者の呼び方だけど、魔術のみを使う者を『魔術士』、魔術メインで単属性の魔法を使えるのが『魔道士』、複数属性の魔法を使いこなせるのが『魔法使い』、ってな感じになる。


 そういや元の世界でやってたゲームに「魔術士と魔法使いじゃ格が違う」みたいな設定のがあったけど、この世界も似たような感じなのかね。


 この世界じゃ魔術が相当発展してるから、魔法使いはもちろん、魔道士すらほとんどいないらしいよ。




あと、気になるのは属性の競合。


「属性の競合? そらどういう意味じゃフクスケくん」


「ショウスケです。例えば『水』と『火』は相性が悪い、みたいな」


「ふーむ、つまり水をかければ火は消えるみたいなことを言いたいのかの?」


「そうそう、そんな感じ」


「では訊くがショーンくん。油が燃えた火に水をかけるとどうなるか知っとるかね?」


「ショウスケです」


 えーっと、そういや天ぷら鍋に火がついたら絶対水かけちゃダメなんだよな、たしか。


「火の勢いが強くなるんでしたっけ?」


「その通り! なかなか博識じゃのショウキチくん」


「ショウスケです。つまり、属性同士が干渉しあって威力が弱くなったり、みたいなことはないんですね?」


「当たり前じゃな。属性というのはいわば自然現象。自然現象に差異はあっても優劣はないのじゃよションボリくん」


「ショウスケです。じゃあ風が火を強めるから『風』は『火』に負ける、とか大地は水を吸うから『地』は『水』に勝つとか、そういうのはない、と?」


「『風』の力で空気を遮断すれば火は消えるし、水を吸った地面は弛くなるぞい? 強い光は濃い影を作るし、明るいところよりも暗いとろこでともした光のほうがより明るく感じるわな」


「なるほどなるほど」


「もし属性同士を掛け合わせて効果が落ちるならそれは魔術の出来が悪いか、術者の力不足か、使いドコロを間違えとるかじゃろうな、ミスターヤマガタ」


「ヤマオカです。いや、よくわかりました」


 そんなこんなで無事俺は基礎魔道講座を修了した。


「ふぉふぉふぉ。おつかれさんじゃったな。いやはや、ゴンスケくんは理解が早くて助かったわい」


「ショウスケです。ありがとうございました」


 しかし勉強してみて思ったけど、魔道ってのはなかなか奥が深いよ、ホント。





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