社畜は2度目の人生を謳歌する

ヨナ

屋台を準備します



「ふぅ、こんなところでしょうか」

ネムスは額の汗をぬぐいながらそう呟いた。ネムスは現在、屋台を出すための準備を行っている。屋台を出すのには許可が必要だったりはしない。そこはすでに確認済みである。

屋台自体は既にマルダに頼んである。マルダはネムスが屋台をやると言ったことに驚いていたが。どうして驚いたかというと商人見習いで屋台をやりたいという人は少ないのだ。通常、屋台をやる場合は費用と売り上げがほぼトントンになる。僅かな利益は生活費として消えるため儲からない。
マルダはそれを説明してネムスを説得しようとしたがネムスはこの世界にはない料理という勝算があるため屋台をすることにした。

準備が終わったネムスは食材を仕入れて自分の部屋で試作品を作り始める。若い頃に作ったことはあったが年を取ってからは妻に作ってもらうか、スーパーで惣菜を買っていたのでレシピを見ながら作る。
幸いネムスは初めてなのにやたらアレンジしたがる料理音痴ではないので素直にレシピの通りに作る。

二度揚げするとカラッと美味しいと書いてあったので二度揚げする。幸い【ショップ】で買ったコンロは二口あったので左の油を160度、右の油を200度にした。念のため温度計も【ショップ】で買ってある。


ネムスが唐揚げを揚げ始めるといい匂いが漂う。ネムスはこれならば呼びに行かなくてもクゥは来るだろうと予測してドンドン唐揚げを揚げていく。

バタンッ

ネムスの予想通り扉を勢いよく開けてクゥが入ってきた。ネムスがそちらを見ると獲物を前にした肉食獣のごとく目を爛々と輝かせてヨダレを垂らしているクゥがいた。

「いらっしゃい。約束の料理はできているから召し上がれ」
ネムスは皿に盛った唐揚げをクゥの前に差し出す。醤油がないので塩唐揚げだがネムスは十分のだろうと思っている。

「ん、肉」
パク、ハグ、モグ
「んま」
クゥは勢いよく食べ始める。手づかみで食べ始めたクゥにネムスはフォークでも用意すればよかったと思いながら自分も食べる。ネムスには料理がどうというよりも肉そのものが日本よりも美味く感じられた。
この日本で食べるために育てられたソレよりもこの世界では野生の中で育ったものの方が美味いのだろう。

クゥの食べる勢いを見ておそらく足りないだろうと思ってさらに揚げ始める。

トントン
「ネムスさん、入ってもいいですか?」
「はい」
扉がノックされてマルダの声が聞こえたのでネムスは答えた。さっきクゥが入ってきた時もそうだったがネムスは安全な日本にいた時の習慣が抜けずに鍵をかけ忘れることがある。

「なんだか部屋の外まで美味しそうな匂いが漂っていますが、、、」
「ああ、屋台で出す料理の試作をしていたんです。ご迷惑でしたらすみません」
「いえ、迷惑ということはありませんよ。あら?クゥさん。ネムスさんにもお友達が出来ていたんですね。よかったです」
「ええ、お隣さんで。マルダさんも良かったら如何ですか?唐揚げと言うのですが」
「唐揚げ、聞いたことありませんね。1ついただきましょう」
マルダさんも手で唐揚げをつまんで口に運ぶ。歴戦の侍女長のようなマルダさんが手で食べるのにネムスは驚いた。この世界では手で食べるのは意外と普通のことなのかもしれない。

「まぁ、これは美味しいですね。お肉はホロホロ鳥のお肉なのでしょうが焼いたものとも違う食感で素晴らしいです」
「それは良かったです。よかったらレモンを少し絞ってかけてみてください」
「こうかしら?、、、あら、味がさっぱりして美味しいわ。歳をとってから脂っこいものが苦手になってしまったから助かるわ」

それからしばらく唐揚げを食べながら談笑した後、これなら売れるとマルダが断言して去っていった。

「ネムス、屋台、やる?」
「ええ。明日からやろうと思ってます」
「クゥも、やる」
「それは、、手伝ってくれるということですか?」
「ん」
「ありがとうございます。ですが資金が心許なくて、報酬の方が払えるかどうか、、」
「報酬、唐揚げ」
「報酬は唐揚げでいいと?」
「ん」
「それでしたら大丈夫です。では明日からよろしくお願いします」

こうしてネムスは手伝いを1人確保した。もともとどれくらい客が来るかわからないがたくさん来たら1人で唐揚げ話を揚げながら接客は大変だとネムスは思っていたので助かった。


その後、満腹になったクゥは部屋に戻り、明日も食べるだろう唐揚げを想像しながら眠りについた。
ネムスも一通り片付けた後、早めにベッドに入る。この世界では冷蔵庫がないため使う食材、特に肉は当日の朝に仕入れなければいけない。そのため早く起きるために早めに眠るのだ。

唐揚げを堪能した2人はぐっすりと眠ったが『寮』にいる他の人達はどこからか漂ってくる美味しそうな肉の匂いになかなか寝付けずにいることにネムスは気がつくことはなかった。

俗に言う飯テロである。






所持金:
銀貨2枚、銅貨1枚(21000ゴル)

【ショップ】内通貨:
2860円






「社畜は2度目の人生を謳歌する」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く