社畜は2度目の人生を謳歌する

ヨナ

妹さんに会います



ネムスが趣味候補である料理、、、スープの研究を始めた日から寮にいる人数は倍に増えていた。ファウード商会の商隊に鉄血傭兵団が護衛するとなるとこの寮にいる見習い達にとってこれほどいい経験になるものはない。1年以上この寮にいる見習いは殆ど全てついて行っていたようだ。

ネムスの部屋の右隣の人もついて行っていたようで帰ってきていたが活動時間が違うのか顔を合わせることはなかった。左隣はもともと空室だった。

ネムスのスープの研究は色々な骨を試したり、薬味を加えたり、煮る時間を変えたりしながら研究を重ねていた。研究のせいでアルバイト以外は部屋にこもりがちになってマルダに心配されることとなった以外は問題なく過ごしていた。


商隊が帰ってきて10日以上経ったある日、その日もネムスは部屋でスープの研究をしていた。

コンコンコン

「ネムス君〜いますかぁ〜?」
扉をノックする音と間延びしたようなのんびりとした声が聞こえた。
「はい。ちょっと待ってください」
ミルデガルドは時々遊びに来るのでいつものようにネムスは鍋などを【異空間収納】に仕舞って出迎えようとするが

ドガンッ!

「邪魔するぞ!」

扉を蹴破るような勢いで部屋に入ってきたことにネムスは驚いた。ミルデガルドが訪ねて来たと思っていたら彼女らしからぬ勢いで扉が開かれたためだ。鍋を仕舞おうとした体勢のまま固まってしまった。

入って来たのはミルデガルドではなかった。ミルデガルドと同じ金髪であるが肌の色は褐色。胸が大きく腰はくびれているがその格好はミルデガルドとは大きく違う。ミルデガルドは普段はフワッとしたワンピースを着てるが目の前の女性は俗に言うビキニアーマーを着ていた。ネムスはビキニアーマーの存在を知らなかったがどこかの民族的な衣服だと認識した。


「お前が姉さんのお気に入りか!アタシはアンジェリカよろしくな」
ニカッと笑ってネムスに自己紹介した。その後ろから入って来たのミルデガルドは困った顔をしていた。
「も〜、アーちゃんダメだよ〜。勝手に扉を開けちゃ〜。ごめんね〜ネムス君〜」
「いえ、お気になさらず」
ネムスはすぐに立ち直った。アンジェリカと名乗った女性が姉さんと呼んでいたところからミルデガルドの身内と判断する。社長の身内ならば無礼を働いてはいけない。

「私はネムスと言います。よろしくお願いします」
ネムスは頭を下げながら名乗り、アンジェリカを観察する。褐色の肌をしているが胸元や腰のあたりに日焼けの境目がある。つまり肌の色は人種的な違いではなく、日焼けによるものだ。よく見れば顔立ちもミルデガルドと似ている。

「堅っ苦しい挨拶はいいぜ。アタシは鉄血傭兵団の団長をやってる。ファウード商会と鉄血傭兵団が組んでるのはアタシと姉さんが姉妹だからだ」
そう言って背中を見せる。アンジェリカは背中に子供の身の丈ほどもある大剣を背負っていた。身体付きを観察し直すと鍛え上げられていることがわかる。腹筋は割れているし、腕にも筋肉がついている。だが女性的なしなやかさも残したチーターのような身体だ。

「今日は〜遠征に行ってた〜アーちゃんが帰って来たので〜ネムス君に〜紹介しに来たんですよ〜」
「そうでしたか」
ファウード商会と鉄血傭兵団のトップが揃って訪ねてくるところを誰かに見られてないか心配になった。会社でも社長に贔屓にされている人は同僚から嫌われる傾向があったからだ。

「それにしてもそれは鍋だろ?お前料理するのか?食堂に食いにいけばいいじゃんか」
「ああ、いえ。これは食べるためというより趣味のようなものです」
「料理がか?変わってるな」
ネムスは知らないことだが、この世界では料理は食べるためにやっていることで趣味にする人は少ない。

「それ出来てんのか?アタシにも食わせてくれよ」
「ええ、わかりました。ミルデガルドさんも入れますか?」
「はい〜ご馳走になります〜」
ネムスは【異空間収納】から器を2つ出して鍋の中のスープを盛る。具材はジャガイモと小さく切られた野菜だけだ。
今鍋にあるのはこれまで作った中では1番美味しく出来ているやつだ。骨から出汁をとったスープと野菜出汁を7:3で混ぜたものだ。
骨も野菜くずも肉屋と八百屋にアルバイトに行った時に廃棄されるものをタダで貰ったので元手はかかっていない。

「お?んん??肉が入ってねえのに肉の味がするぞ?」
「本当ですね〜。初めて食べた味ですが〜美味しいです〜」
「そうですか。それは良かった」
2人が食べている様子を見てネムスはこれまでスープは自分を味覚を基準に作って来たことに気がついた。味覚はそれぞれ違っているだろうし、日本とは文字通り別世界なのだから尚更だろう。
「おかわりだ!」
「はい」
アンジェリカはおかわりを要求する。なかなか気に入ったようだ。


「ふぅ、美味かった。どうやって作るんだ?」
「申し訳ありませんがそれは秘密です。いずれギルドで登録するつもりですから」
「まぁ〜、ネムス君は〜凄いですねえ〜。ちゃんと〜先のことを考えていて〜偉いですよぉ〜」
ミルデガルドがほんわかした雰囲気でネムスの頭を撫でる。当のネムスはなんとも言えない顔をしていた。ネムスは日本で50過ぎまで生きていたのでミルデガルドは息子ほど歳が離れている。さらに時々訪ねてくるミルデガルドだが今回のようにひたすらネムスを褒め続けるので困るのだ。
ネムスはこれだけ肯定され続けたら子供はダメになるだろうなと思った。


いつのまにかミルデガルドの膝の上に乗せられて撫で回されている。その様子を見ていたソワソワした様子でアンジェリカもジリジリと近寄って来てツンツンとネムスの頬を突き始める。
「ネムス、アタシは今回みたいな遠征がない限りこの街にいるから困ったことがあったら言うんだぞ?」
「はい」
「む〜、ネムス君は私が〜面倒見るんですぅ〜!」
「は、はぁ」

この姉妹は好みがとても似通っている。あまり知られていることではないが2人とも年下好きショタコンなのだ。


そんな3人の様子を扉の外から見ていたマルダは自分が仕える2人の主人の様子に額に手を当てて溜息をついた。






所持金:
銀貨3枚、銅貨6枚(36000ゴル)

【ショップ】内通貨:
5010円







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