社畜は2度目の人生を謳歌する

ヨナ

お世話になります




「成る程〜、ゴルディールのお爺ちゃんの紹介ですか〜。じゃあ〜中へどうぞ〜」

紹介状を読んだミルデガルドは1つ頷いてネムスを中に通す。
店はそこそこ大きく、商品も綺麗に並べられていた。ミルデガルドは従業員が挨拶してくるのに軽く手を挙げて返して店の奥にネムスを連れて行く。

「おかえりなさいませ、お嬢様。そちらの少年は?」
執事風の老紳士がミルデガルドに挨拶をして、後ろに続くネムスに目を向ける。
「この子は〜新入り君だよ〜!」
「この少年がウチの見習い部門に?そのような予定は聞いていませんが」
「あ〜、私もさっき聞いたんだけど〜でも紹介状が〜ゴルディールのお爺ちゃんだったからね〜」
「なんと!あのゴルディール殿の紹介ですか!それは断るわけにはいきませんね」

老紳士がネムスに向き直る。
「私はファザルと申します。このファウード商会の番頭を務めさせていただいております」
「私はネムスと言います。これからご指導ご鞭撻のほどをよろしくお願いいたします」
ネムスの見た目にそぐわないしっかりとした受け答えにピクリと眉を動かしたがそれ以外反応を見せなかった。

「じゃあ〜奥の部屋使うよ〜」

そう言ってネムスが通されたのは応接室のような部屋だった。ネムスとミルデガルドはテーブルを挟んで向かい合って座る。ファザルは既に仕事に戻っていてここにはいない。
「う〜ん、それじゃあウチに入るのは認めるけど〜いくつか確認するよ〜」
「はい」
「ん〜何から聞こうかな〜?やっぱり本題を最初に終わらせよぉ〜」
ミルデガルドは両手を胸の前でポンと合わせてほんわか微笑む。

「君は〜何か特別な力を持ってるよね〜?」
「なんのことでしょう」
内心ドキリとしながら表情には全く出さずにネムスは言葉を返す。ショップがバレないように塩を出した以外はショップを使っていない。もしバレたとすればゴルディールの紹介状に何か書いてあったか?ネムスは思考を回す。

「んふ〜。隠さなくていいのですよ〜。私には特殊な目があるのですぅ〜。ユニークギフト【魔眼】。人とは〜違うものが見えてるのですよぉ〜。
私は〜人のオーラが見えるんですぅ〜。優しい人〜、怖い人〜、危ない人〜、それぞれオーラが違うんですよぉ〜。
その中でもぉ〜ユニークギフトを持っている人の〜オーラは〜特別なんです〜」
「、、、、成る程。でしたら隠す必要はありませんね。はい、あなたの言う通り私はユニークギフトを持っています」
ネムスは素直に認めることにした。そういう力があるとは予想外だがバレたのならこれ以上隠そうとするのは下策である。


「ああ〜、どんなギフトかは言わなくていいですよぉ〜。それは秘密にすべきことですから〜。話したくなったら話せばいいのですよ〜」
「ご配慮ありがとうございます」

「後〜、紹介状に書いてありましたが〜【異空間収納】も持っているそうですね〜?そっちは初めから〜秘密にしないほうが〜これからはやり易いですよ〜」
「そのような方針ならば指示に従いましょう」
「いえいえ〜、命令ではないですよ〜。でもウチに所属すれば〜安全ですから〜、先の商売を考えれば〜隠さないほうが〜やり易いですよ〜」
「そうでしたか。ではそのようにします」
この助言が善意にしろなんらかの意図があるにしろNOという選択肢はない。これからはミルデガルドは上司どころか社長になるのだ。上の人間の助言は命令と変わらない。


「ネムス君は〜宿は取ってますかぁ〜?」
「はい。2泊ですが」
「それなら〜ちょうどいいですね〜。ウチの〜見習いの子達は〜みんな同じところに住んでるので〜ネムス君もそこに住んでもらいますぅ〜。
明日はそこを〜案内するので〜明後日からそこに住んでくださいね〜?」
「はい。わかりました」
ネムスは社員寮と認識する。正直宿の出費は大きいのでネムスは助かる。おそらく給料から天引きになるのだろうと予測する。

「それでは〜また明日〜」
「はい。改めてこれからよろしくお願いします」
出口まで見送りに来てくれたミルデガルドに深々と頭を下げてネムスは店を出た。



「うふふ〜、ネムス君かぁ。可愛い子だなぁ〜。気に入っちゃった〜」
去っていくネムスの背中を眺めながらミルデガルドは上機嫌につぶやく。偶然そこに通りかかったファザルはその呟きを聞いて新しく入る少年に同情の眼差しを向けた。


このファウード商会で育った商人たちはみんな一人前の商人になる。だがそれ以上の大物になることはない。平凡な商人にしかなれないのだ。それにはある理由がある。

商会長のミルデガルドの持つ特性ゆえにである。本人に自覚はないがミルデガルドは才能を潰す天才なのだ。もちろん意図して潰しているわけではない。色々な事情が重なって才能を潰してしまうのだ。

事情というのはまずミルデガルドの眼だ。【魔眼】を抜きにしてもミルデガルドは優れた選定眼を持つ。その眼で才能を見抜くのだ。
そしてミルデガルドは才能のある子供をとても気にいる。本人の好みとして歳下が好きなのだ。優秀であればなおさら。
さらにミルデガルドは気に入った人を甘やかすタイプなのだ。好きな人に1から10まで手を貸してやり、ドロドロに甘やかす。
そうして子供の頃に甘やかされて育ったものは才能があっても大成するわけもない。

大成する才能を持つ子供はファウード商会ではその才能を意図せず潰されてしまうのだ。


ファザルはミルデガルドを主人と定め、一生尽くす所存なのでミルデガルドのやることに口出ししたりはしない。だが犠牲となる少年に同情しないわけではないのだ。

ミルデガルドに気に入られてしまったネムスに同情の眼を向けるのも当然である。




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コメント

  • だね

    @ヨナ
    がんばれー!応援してるで

    0
  • ヨナ

    忙しくて時間が取れないのもありますけど、素人なのでネタに詰まってしまって、、、

    頑張ります

    1
  • だね

    なんか久しぶりの投稿ですね
    やっぱ忙しいんですか?

    1
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