社畜は2度目の人生を謳歌する

ヨナ

交渉します



翌日、朝食を食べた後ネムスは街中を見て回っていた。今日中に塩を売ることは決めていたがどこで売ればいいか探すのを忘れていたことに気がついたのだ。

大通りを一回りしてみたが結局わからず、この街で1番大きい商会に持ち込むことにした。


「いらっしゃいませ!本日はどのようなものをお求めでしょうか?」

店に入ると獣人の店員が元気に声をかけて来た。営業スマイルではなく心からの笑顔を向ける店員の若さが眩しく見えるネムスであった。

「申し訳ありません。今回は買いに来たのではなく、買い取ってもらいたいものがありまして」
「売り込みですか、、、たしかにウチの商会は大きいですからそういった方が時々来られるのですが買い取りの判断をできるのは商会長が認めた人だけでして、その人達は忙しいのでお時間を取ってもらえるかわかりませんよ?」
「ええ、時間があればで構いません」
「では少々お待ちください」
店員が奥に行ったのを見送って待っている間に店内を見て回る。そこで塩を見つけたが日本のものよりもずいぶん色が悪い。白というより茶色に近い色をしていた。もしかしたら綺麗な白い塩は珍しいかもしれない。ネムスは事前に調べずに持ち込んことを後悔し始めたがもう遅いと諦めた。


「お待たせしました!貴方はとても運がいいです!今日はなんと商会長がお時間があるそうで商談を受けてくださるとのことです!奥の部屋へどうぞ!」
「はい」
ネムスは表情に出さなかったが少し顔が強張る。これほど大きな商会を回すのならば商会長はやり手の商人だろう。日本は色々発達しすぎていて営業同士の商談など極々わずかしかない。尻の毛までむしられないようにしなければ。


ネムスは通された個室で一人で待つ。個室にはテーブルが背の低いテーブルが1つと、それを挟むようにソファが2つあった。なかなかの高級品のようでふかふかのソファに浅く腰をかけて座っている。

「ふむ、待たせたの」

そう時間を開けずに髭の蓄えた老人と執事のような格好をした男性が入ってくる。ネムスは慌てた様子もなく立ち上がり、頭を下げる。

「本日はお時間を取っていただきありがとうございます」
ネムスは平社員だったが上司に様々な仕事を押し付けられていたため、企業の社長や取締役との会合を何度も経験したことがある。自分より立場が上の人との交渉はいつものことである。

「気にすることはない。まぁ、座りなさい」
「はい、失礼します」
ネムスは背筋を伸ばして相手が座ったのを確認してから座る。執事の人は立ったまま老人の後ろに控えている。

「私はネムスと申します。よろしくお願いします」
「ほほ、知っておるよ。儂はゴルディールじゃ。主のことは調べさせてもらった。先日ギルドに登録したばかりじゃな?両親を失ったとか。今回は生活費を稼ぐためかの?」
「、、はい。御慧眼恐れ入ります」
ネムスは表情に出さずに驚く。目の前の人はギルドのランクが高いのだろう。優先的に情報をもらっている。だとしてもネムスがこの店に来てそれほど経っていないのに素性を調べ上げる情報収集力は普通ではない。

「ふむ。ゆっくり話をしてやりたいがそう時間が取れるものでもないでの、売り込みたいものを見せい」
「はい。こちらです」
腰に下げていた布袋をテーブルに置く。
「ふむ。見せてもらおう、、これは白い、粉?なんだねこれは」
「こちらは特殊な方法で加工された塩です」
「何じゃと!?」
ゴルディールの目つきが鋭くなる。後ろに控えていた執事の人がさりげなく進み出て塩をひとつまみして舐める。

「確かに塩です。従来のものよりも苦味がないかなり上質なもののようです」
「、、、そうか」
ゴルディールは険しい顔をして考え込む。ネムスは予想以上の反応に頭の中でこの塩の価値を上方修正し、金額をはじき出す。

「この重さならば20kgくらいじゃな?」
「はい」
この世界でも重さの単位は同じだった。重さに単位がなかったこの世界に過去の勇者がグラムという単位を持ち込んだそうだ。

「銀貨1枚で買い取ろう」
銀貨の価値は大体1枚で10000円。1500円の塩が1万と考えれば十分だが、、、
「ご冗談を、普通の塩でもそれくらいはします。この塩ならば金貨は出るでしょう」
困ったように笑いながらネムスは大幅に金額を上乗せする。ネムスも本心ではそれくらい出てくるとは思っていない。
「ほほほ、それは盛りすぎじゃな。出せて銀貨3枚じゃ。いくら特殊とはいえ砂糖のような高級品ではないのじゃぞ」
「おや、ですが売る相手を変えればいい。貴族様が相手ならばそれくらい出すのでは?希少で珍しいことを強調すれば金貨を数枚出す方も少なくないでしょう」
ネムスは貴族にあったことがないが元の世界であったことのある金持ち達を思い出す。彼等は自分に必要かどうかは無視して珍しさに飛びつく生き物だ。

「ほう、言いよるわ。じゃが貴族に売るにはそういうツテがなければならん。主では売れんじゃろう?
、、、、銀貨7枚じゃ。これ以上は交渉せんぞ」
「はい、ありがとうございます」
ネムスは満面の笑みを浮かべて頭を下げる。1500円が70000円に化けたのだ。この商談は大成功と言えるだろう。

「ゼフ」
「はっ。こちらを」
執事さんから代金の銀貨7枚が手渡される。さりげなく枚数を確認したネムスは早々に立ち去ろうとする。商談が成功したとはいえ大物を長時間相手にしてボロを出すかもしれない。
「本日はお時間をいただき
「ちょっと待つのじゃ。そう焦るでない。儂は主に興味が湧いた。少し話そうではないか。時間はあるじゃろう?」
「、はい」
ネムスは一瞬考えたが断れるものではないと判断して座り直す。そして話の内容を予想し、警戒する。おそらく、この塩の加工法や仕入れ先を聞いてくるのだろうとネムスは予想するが、、、、


「お主、異空間収納を使えるな?」


ネムスの予想とは違い言葉が飛んで来た。






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