社畜は2度目の人生を謳歌する

ヨナ

世界を知ります



まだ日も登らないくらいうちにネムスは目覚める。元の世界にいた頃は3時間睡眠が基本だったのでまだ暗いうちに目が覚めたのだ。

部屋に備え付けられている蝋燭に昨日ショップで購入したマッチで火をつける。電気などはなく、灯りの確保は蝋燭の火のようだが他の人はどうやって火をつけているのだろうと考えた末に魔法の存在を思い出した。


悩んだ末にネムスは今日は塩を売りに行かずに商業ギルドの書庫で知識集めをすることにする。基本的な知識もなしに商談を行えばカモにされるのは目に見えている。

日が出るまでショップで何を売っているか確認して、明るくなるとすぐに朝食を食べてギルドに向かった。


ギルドにはすでに受付の人もいたし、商人もチラホラと確認できた。ネムスはそれらを無視して階段を上がって2階に向かう。
2階は大部分が書庫でいくつか個室もある。商談を行うときに使うらしい。ネムスは早速、目に付いた本を読む。本は全て手書きで元の世界のようなちゃんとした本ではなかったがネムスは気にしなかった。

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『種族について』

この世界には多様な種族が存在している。それを大きく分けると人間と魔族だ。別々の大陸に住むこの2種はいがみ合っている。

この2種もさらに細かく別れる。まずは人間から紹介していこう。
  人間の中で最も多い種族は人種だ。これといった特性がない代わりにどんなことでもそれなりにこなすことが出来る。
  獣人種。獣の耳や尻尾が生えた人間で優れた五感と高い身体能力を持つ。その代わり魔法を使うことが苦手。耳も尻尾も敏感なので無遠慮に触ると怒る。
  森人種。エルフとも呼ばれる。尖った耳を持ち、魔法が得意。自然と共に生きる種族。長命で平均して300年は生きる。
  土人種。ドワーフとも呼ばれる。身長は低いが筋骨隆々。男は髭を伸ばす。酒好きで物作りが得意。
  他にも精霊、竜人、魚人などが存在する。

対して魔族。どの種族もとても強力な力を持つが絶対数が少ない。
吸血鬼、悪魔、サキュバス、鬼人など様々な種がいるが詳細は不明。

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ネムスは次々と読み進めていく。熟読する必要はなく、基本的な知識を浅く広く取り入れることを優先する。

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『魔法』

魔法は誰にでも使える力である。理屈で言えば体内にある魔力と呼ばれるエネルギーを燃料として世界に干渉し、様々な事象を起こす。

魔法は大きく分けて2種類。生活魔法と戦闘魔法。生活魔法は誰にでも簡単に使えるが戦闘魔法は専門的な訓練と才能が必要。

ここでは生活魔法の使い方について教える。まずはじめに魔力を感じるところから始める。ヘソのあたりに手を置き、意識を集中する。するとお腹のあたりが温かくなってくるのでそれが手の方に移動するようにイメージする。次は手が温かくなってくる。
この時の温かい感覚が魔力である。手に移動することができたら魔法を唱える。
生活魔法は3種類。種火を生み出す魔法、水を出す魔法、光を出す魔法である。

これを使うにはイメージすれば良い。火なら火をイメージして唱える言葉はそれぞれなんでもいい。

これで誰にでも生活魔法が使える。もし使えなかった人は身体に何か異常がある可能性がある。早急に教会に行きなさい。

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ネムスが2冊目に手に取った本は魔法についてだった。本を読みながら実際にやってみる。ヘソに手を当てて意識を集中すると腹が温かくなる。ホッカイロを貼っている感じだ。
更に手に移動してイメージする。流石に書庫で火を使うわけには行かないので光の玉をイメージする。

「光よ」

特に装飾もなくシンプルに唱える。すると両手で握り込めるサイズの光の玉が出現した。手で触れてみるが特に熱はなく不思議な感じがしたがネムスはそういうものだと理解して深く考えなかった。
ネムスは元の世界からこうである。わからないものは無理に理解しようとせずにどうすればどうなるかだけ覚えて原理は深く考えないのだ。


ネムスは次々と本を読んでいく。流し読みというのを得意としているのだ。ブラック企業でデスクワークを行う時に一つ一つ書類を丁寧に読んでいれば仕事は全く減らない。流し読みをして大体の内容を把握しなければならないのだ。ネムスに限らずネムスの同僚たちもこの技能を身につけていた。


わかったことはこの世界は1年が12ヶ月で、1月が30日、特に曜日という概念はない。時計も存在せず、時間の区分は朝の鐘、昼の鐘、夜の鐘だけである。



このような常識的なものから主な魔物、薬草や文化などについて書かれた本なども読む。昼食も食べることなく、朝に来てから日が落ちるまでひたすら本を読み続けるネムスを心配して眠そうにしていた司書らしき男もネムスに声をかけた。

「君、大丈夫か?」
「え?ええ、はい」
「君、朝からいただろう。何か調べ物が見つからないのかい?探すのを手伝うが」
「あ、いえ。ちょうど見つかりましたので宿に戻ることにします。御心配おかけしてしまい申し訳ありません」
「いや、いいんだ。あんまり夢中になりすぎてはダメだよ。食事も取らないと」
「はい」

特に探し物をしているわけではなかったがネムスは話を合わせてごまかす。昼食を食べなかったのは本に没頭していたというのもあるが元の世界で1日1食で生活していたので取る必要性を感じなかったのだ。
だがまだ子供の体ではあるし、今後の成長のことを考えるとよく食べてよく寝る方が健康な体を作れるかもしれない。とは思ったもののネムスは特に健康になりたいとも思っていなかったので食事代のことを考えて宿で出る食事だけで十分だと判断した。


その後、宿に帰って食事をとり、眠りにつく。この街では多くの人が日が落ちれば眠るようなのでそれに合わせることにしたのだ。郷に入っては郷に従えというやつである。

明日の商談のことを考えながらネムスは眠りについた。




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