社畜は2度目の人生を謳歌する

ヨナ

街に着きました



ネムスは自分のことを確認しながら街道を進む。妖精に言われた方向に進むと街道があったのだがどちらに進めばいいかわからなかったので勘で右に進んだ。何日かかるかわからないがいつかは集落に着くだろう。街規模か村規模かはわからないが。

ネムスは歩いていると最近感じ始めていた節々の痛みがなくなっていることに気がつく。それどころか若かった頃のように身体に体力があるようだ。本当に若い身体に造りかえられていることを実感した。


どれくらい進んだかは歩幅が変わっているのでどれくらいの距離を進んだかはわからないが日が暮れる前に人の住む場所を見つけることができた。そこはそこそこに大きな街のようで10メートルはあろうかという外壁が街全体を覆っていた。ネムスは魔物という外敵がいる環境では街の防衛は大変なのだろうと思った。

街に近づくと外壁には門があり、そこに列ができているのがわかった。おそらく入国審査的なものをやっているのだろうとネムスは予想する。
列は2列で片方は馬車が並んでいて、もう片方は人が並んでいる。ネムスは人が並んでいる方の列に並び、周囲の会話に耳をすませる。

「ったく、相変わらずここの入場審査は厳しいな!時間がかかってしょうがねぇ」
「ホントだよ。この領が他国と接してるからって厳しすぎねえか?ほら、ウチのサハラ王国と隣のアッカイド王国って仲良かったはずだろ」
「しょうがねえだろ。ここの領主のタバリン辺境伯は悪い人じゃねんだが堅物だからよう」
「そうよね。いい人なんだけど融通が効かなくて。この要塞都市ディートは領主様のお屋敷がある街だもの」

ネムスは次々と入ってくる情報を頭の中で整理する。
ここはサハラ王国のタバリン伯爵領、要塞都市ディート。隣の国はアッカイド王国で関係は良好。

更に並んでいる人達の格好から情報を読み取る。鉄か何かの鎧を着ている人が多い。冒険者が傭兵か。武器は剣、槍、弓、杖。銃火器は見当たらない。馬車が多いことから魔法的な移動手段はない、もしくは珍しい。
そして人。獣の耳や尻尾が生えている人がいたり、耳が尖っている人がいる。おそらくあれが多種族だろう。人間といがみ合っている気配はない。少なくてもこの街では種族差別はない。



こうしてネムスが情報収集をしていると気がつく人は気がつく。

「ゼフ、いるかの?」
「はい、ここに」
下品にならない程度に豪華な箱馬車に乗った老人が馬車の扉の外に立っていたお供に声をかける。
「あの少年、どう思う」
老人はネムスを指してゼフと呼ばれたお供に聞いた。
「はい、、、どこかチグハグな感じの少年かと」
「続けなさい」
「はい。容姿は美少年と呼べるほど整っております。しかしおそらく未成年であるにもかかわらずどこか老成した、倦怠感の漂う雰囲気を持っております。
一目では人種と思われますがもしかしたら見た目の変わりづらい長命種なのやもしれません」
「ふむ」
老人は蓄えたヒゲを撫でながら1つ頷く。

「そうかもしれん。先程から周囲の話に耳をすませたり、あたりを観察したりして情報収集を行っておる。もしもアレで見た目通りの年齢ならば将来大成するじゃろう」
「、、、監視をつけますか?」
「うむ。あの少年の情報を集めよ。じゃが勧誘するかもしれん。敵対はせぬようにな」
「はい」

こうしてネムスは街に入る前から目立たないという思惑は失敗したのだった。



日が傾いて着た頃、やっとネムスの番となる。門には門番が何人もいた。
「身分証の提示を」
「申し訳ありません。持っていません」
ネムスは正直に答える。
「ふむ、事情を話せ」
「はい。父と母が行商人で一緒に街を転々としていたのですが魔物に襲われて2人とも死んでしまって。私は父と母のお陰で逃げられたのですがまだ10歳のためギルドに登録はしていないのです」
「そうか、、、」

「ではこの水晶に触れ」
門番は一通り話を聞いた後、スイカほどの大きさの水晶を取り出した。ネムスは言われた通りに水晶に触れる。すると青く光った。
「ふむ。指名手配はないな。では身分証がないなら銅貨3枚支払ってもらわねばならん」
そう言われて異空間収納から出してポケットに入れておいた銀貨を一枚手渡す。
「ちょっと待て、、、ほら、お釣りの銅貨7枚だ。確かにご両親が亡くなったのは残念だがいつまでも落ち込んでてはいかんぞ。早いうちにギルドに登録し、前を向いて生きなさい」
「はい」
門番はネムスが出す疲れ切った雰囲気を両親が死んで落ち込んでいるのだと勘違いした。

ネムスは日が暮れる前に街に入れて一安心するが、すぐに気を引き締めて街の様子を伺いながら商業ギルドを探す。

ネムスはその過程で街で売っているものを見て回る。野菜、果物は元の世界と変わらない。ただのサラリーマンだったネムスにすでに解体されて切り身にされた肉を何の肉か見分けることはできない。魚は見当たらないみたいだ。

ネムスは他にも色々見ながら歩くが元の世界との大きな違いは武器屋だろう。この世界で武器の需要は高く、武器屋は多い。


買い物をしている人達の会話を聞いて情報を集める。とりあえず重要そうな貨幣の価値を把握した。銭貨、鉄貨、銅貨、銀貨、金貨、白金貨とあって10枚ごとに繰り上がる。物の値段と比較して10円、100円、1000円の価値に相当するのだろうとネムスは予測する。


門からまっすぐ大通りを進んだネムスは街の中心にたどり着いた。そこには石造りの大きな建物がいくつもあり、この街の主要な建物はここにあるのだろうとネムスは予想する。
その1つに商業ギルドと書いてある看板を掲げている建物を見つける。ネムスは日本語ではないのに文字が読めることに違和感を覚えた。文字が日本語の意味に変換されてわかるのではなく、自分自身が見たこともない文字を知っているのだ。違和感があって当然だろう。


これも神の力か、と結論を出したネムスは商業ギルドの中へと入った。







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