社畜は2度目の人生を謳歌する

ヨナ

異世界に来ました



誠は意識が戻ると森の中にいた。もちろん特に動じた様子はない。

「貴方が西條誠で間違いありませんね?」
「はい」

森の中でポツンと立っていた誠の目の前に手のひらサイズの羽根の生えた女の子が現れる。誠は驚きもせずに答えながら元の世界には女の子がおままごとで使う人形にこんな感じのがあったなと思った。

「私は識別番号109756、世界管理担当神補佐妖精です。私は貴方にこの世界のことと貴方自身のことを教えることが役目です」
「そうでしたか。よろしくお願いいたします」
誠は新人時代に行った新人教育合宿のことを思い出した。それは新人教育とは名ばかりの精神論ばかり言われ続け、上司に従順な人材を育成、厳選する場だった。

「まず貴方自身のことを説明します」
妖精は淡々と説明していく。人型の妖精ではあるが感情は保持しておらずプログラムが存在するだけだった。誠はライトノベルや漫画などの娯楽を嗜んだことはなかったのでそういうものだと認識していたが。

「自分の身体を見てください。貴方の身体は現在10歳。顔や髪の色、瞳の色もこの世界にいても違和感がないように作り変えられています」
妖精は何処からともなく手鏡を出してみせる。
「そうですか」
誠は鏡を通して自分の顔を一瞥した後、特に手を握ったり腕を動かしたりしながら身体の動作確認を行う。

「次に《ステータスオープン》と唱えてください」
「はい。《ステータスオープン》」

すると誠の目の前に半透明の画面が現れる。


名前:ネムス
種族:人

☆異世界言語
☆異空間収納
☆ショップ


「そこに表示されているのが貴方の情報です。それは貴方にしか見れず、この世界の人間ならば誰にでもステータスを表示させることはできます。
そこに表示させれていように西條誠はこの瞬間をもって消え、貴方の名前はネムスとなりました」
「ネムス、、、わかりました」
誠はネムスとなった。


「次にこの世界のことを説明します。この世界は俗に言う剣と魔法のファンタジー世界で魔王や勇者も存在します。魔王や勇者知っていますか?」
「魔王、、、あの音楽のではありませんよね?勇者は言葉からして勇気ある者といった感じですか?」
「勇者とは人類の英雄のことで魔王とは別大陸にいる魔族という種族の王のことです」
ネムスは白人の黒人差別のようなものであると認識した。人種間戦争は世界が変わっても起こるのだろうと考える。

「この世界は科学が全く進歩していない代わりに魔法と呼ばれる力が存在して、文明は中世から近代の間くらいです」
「魔法ですか」
ネムスは古い人間だったため、現代の発展した科学技術を魔法のようだと考えていた。どちらもよくわからないけどすごい技術だと認識した。つまり科学と魔法の区別をしなかったのだ。

「この世界の人は全員魔法を使うことができます。大なり小なり才能に差はありますが。もちろん貴方も使うことができます。身体がこの世界の人間と同じく作りかえられていますから」
「そうですか」
「魔法の使い方はこの世界で自分で学んでください。生活の中で使われているのでこの世界で生きていくには必要なことでしょう」
「わかりました」
ネムスは会社のことを思い出す。出向先を指示されて実地で必要な技術を身につけろと言われる。上司はその辺りの配慮をすることはない。


「続いてこの世界の生活についてですが貴方がいた世界と大きく違うところがいくつかあります。
1つは種族。貴方のいた世界で知的生命体は人間だけでしたがこの世界では人間の他にも獣人やエルフ、魔族など多くの種類があります。種族ごとに特徴はありますがそれは自分で調べてください」
「はい」
「2つ目は日常的な戦いがあること。種族問わず生物の敵として魔物という存在がいます。貴方の世界でいう野生の獣ですが数は段違いに多く、人の生活圏の町や村から出ると襲われることが多々あります」
「なるほど」
ネムスは地球にいた頃、平凡な顔で非常に疲れた雰囲気を出していたので獲物と思われたのかオヤジ狩りに会うことが何度かあった。もちろん戦闘技能などないので素直に財布を渡していたが。ネムスにとって襲われるというのはチンピラから襲われるイメージがあったのでその時のことを思い出した。


「最後にギフトについて説明しましょう。もう一度ステータスを出してください」
「はい」
ネムスは素直に指示に従う。
「名前と種族の下に書いてある3つが貴方の保有するギフトです。そもそもギフトとは神から与えられる異能で魔法とも違います。多種多様なギフトがあり、100人に1人はギフトを持っています。貴方のように複数持っている人はごく稀ですが」
「そうですか」
どうやら自分は魔法使いになったようだ、とネムスは思った。それからサラリーマン時代を思い出す。優秀な新入社員はあまり良い生活を送っていなかった。優秀だから出世は早くため同僚から嫉妬され、直属の上司からは煙たがられ、会社の上層部からは使い潰す勢いで仕事を任され、女性陣から群がられる。人は優秀であっても優秀であることがバレれば面倒なことになることをネムスは学んでいた。

「貴方のギフトについて説明する。
1つ目の異世界言語は言葉通りこの世界の言語を話せるし、読み書きもできるようになる。もともとこの世界の言語は統一されているから気にしなくていい」
ネムスは素直に感謝する。歳をとるにつれて自分の記憶力が衰えていることは感じていたし、もともとの学習能力も平凡だ。言語を1つ覚えるというのは大変なことだろう。

「2つ目の異空間収納は物を異空間に入れて持ち運べる能力。実際にステータスの異空間収納の部分に触れてみてください」
ネムスが言われた通りにするとステータスのとなりにもう1つ画面が現れる。画面にはいくつもの正方形が並んでいるだけだ。

「自分の所有物をその画面に当てると異空間に収納できます。収納したものはその四角の中に表示され、取り出したいときはその四角に触れると出てきます」
物の持ち運びには便利だ。科学の発展していない世界ならば自動車などはないだろう。もしかしたら何か魔法の移動方法があるかもしれないが、もしなかったら中世の文明ならば馬車で移動だ。この異空間収納は商人に重宝されることになる。


「最後にショップですがこれはユニークギフト、つまり世界でただ1人貴方しか持っていないギフトです」
「はい」
唯一という言葉にネムスは顔をしかめる。

「まずショップの文字に触れてください」
するとまた新たな画面が現れる。
「その画面は貴方の世界でいうところのネット通販の画面になっているはずです。そして右上にある数字が貴方の所持金、現在は0です。つまり貴方は貴方がいた世界のものを購入できるというわけです。
もちろん規制もあります。この世界ではあり得ない自動車などの機械は購入不可、もしくは魔法による道具に変換されて購入することになります」
「なるほど」
「所持金の増やし方は左下にある売却の文字に触れてください。そうするとさらに渦巻きのような画面が出てきますから所有物をそこに入れると換金できます。換金レートは決まっていますが貴方が知る方法はありません」
「わかりました」
換金額が全くの不明という理不尽も特に不満を漏らさずにネムスは受け入れる。


「では説明は以上です。何かご質問はありますか?」






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