《冷姫》に告白をした結果泣かれてしまったが、なぜかその後積極的に話しかけてくる件

ささかま

プロローグ



「僕と付き合ってください!!」


 そう言って、頭を下げる。正直…この告白は乗り気ではない。なんせ…相手はあの《冷姫れいひめ》だ。僕は、これから精神を打ち砕かんとばかりに浴びせられる罵倒に耐えなければならないからだ。下を向いているからわからないが、きっと彼女は呆れているだろう。なにせ、彼女が男に告白されるのは日常茶飯事の事だからだ。そして、それを毒舌で返すことも。


 ーーおい、あの《冷姫》がついに百人斬りを達成したらしいぞ


 ーー告白した奴は、もう立ち直れないほどの罵声を浴びせられたとか…流石はあの《冷姫》、だよな…


 そう、彼女は告白に対して毒舌で返す。それも、立ち直れないほどキツイものを。それ故に、周りからは《冷姫》と呼ばれている。


 では、なぜ毒舌を浴びせられるのにも関わらず彼女に告白する人が後を絶たないのか。それは、彼女の美しさが理由の一つだろう。
 整った顔立ちに、艶のあるストレートの黒髪。また、その口調や仕草はどこかのお嬢様を思わせる程だ。とにかく、彼女はとても美しいのだ。
 さらに、彼女は生徒会長も務めている。そのカリスマ性から、多くの同年代や後輩から慕われている。


 そんな人物を自分の彼女に…そう思ってしまうのも無理はないだろう。まぁ、玉砕されるのだがね。


 さて、話を戻そう。なぜ僕が彼女に告白をすることになったのか。それは、昨日の出来事だった。




「あぁ…やっぱ、始業式ってつまんねぇな!」


 桜の舞い散る道を、いさむと並んで帰る。彼の名前は松本勇。中学校時代からの親友で、高校でも仲良くしてくれている。


「まぁね。でも、同じクラスになったんだし良いこともあったじゃん」


「まぁ…啓介けいすけと同じクラスになれたのはよかったけどさ…」


 久本啓介、それが僕の名前だ。容姿は悪くもなく、決して良くもない。学力も、上位に入る程ではないが下の方というわけでもない。…つまり、普通なのだ。スポーツが出来るわけでもなく、これといった特技もない。まぁ、精々少しばかり武術を会得している位だ。


「さて、じゃあ同じクラスになった祝いにラーメン行くか!」


「結構な頻度で行ってるけどね…」


 実際、一週間に一回は勇と一緒にラーメンを食べているだろう。まぁ、それはをしているからでもあるが…。




「へいっ!味噌大盛りお待ちっ!」


 そう言って、大将が僕達にラーメンを出してくれる。別に、僕達はなにかを頼んだわけじゃない。もう、何も言わなくても大将は解っているのだ…僕達がこれからなにをするのかを。


「よし、準備はいいか?よーい…ドンっ!!」


 大将がスタートの合図を出した瞬間、僕達は一斉にラーメンに食らいつく。勢いよく麺をすすり、大量のスープでそれを咽に流し込む。これは、戦争だ。如何に無駄のない動きで麺をすすれるか、またスープを飲むタイミングも見極めなければならない過酷な戦いだ。
 余談だが、このラーメンは大将が僕達の為に温度や麺の硬さ、塩分の量を調整してくれている。この勝負は、大将の協力もあって成り立っているのだ。普通のラーメンでやったら死んじゃうからね。


「ズズズ…終わったッ!俺の勝ちだ!」


「ズズ…いや、僕も終わった!」


 ほぼ同時に終わった…か。さて、決着は如何に。


「今のは…勇の勝ちだな」


「よっしゃあ!!勝ったぜっ!」


「クソっ…むせなければ勝てていたのに…」


 あそこで蒸せなければ、絶対に勝てていたはずだ…。だが、仕方ない。負けは負けだ。


「さて、なにを命令する?」


 そう、これがいつも僕達がやっているゲームだ。ラーメンを早く食べ終えた方が、負けた方に一つ命令をすることが出来るのだ。…拒否権は、ない。


「そーだなぁ…。じゃあ、あれだな」


「あれ…?」


 そう言って、彼が指を差したのは…窓?窓でなにかするのか?


「窓がどうかしたのか?」


「そうじゃねぇよ…もっと先を見てみろ」


 言われた通りに窓よりも先を見ると…あれはうちの制服か?をきた人が歩いている。いやまて、あれって…まさか!?


「お、おい。まさか…命令って…」


「あぁ!命令は《冷姫》に告れ、だ!」




 こうして冒頭に戻る訳だ。まぁ、どうせズタボロに言われるのだ。誰が、こんな冴えない普通の少年なんかを好きになるものか。そんな物好きはいないだろう。




 にしてもおかしいな…。いくら現実逃避をしていても罵声が飛んでこない。もはや呆れて言葉も出ないのか?そう思い、顔を上げてみると…彼女は泣いていた。


「えっ…?」


「あ、いやこれは…」


 え、ちょっと待ってくれ。なんで彼女は泣いているんだ!?まさか、泣くほど嫌だったのか?…いや、そうに違いないな。


「そ、そうですよね!僕なんかにこんなことされたら嫌ですよね!忘れてくださいっ!!」


「あ、ちょっとまっ…」


 彼女の言葉を聞く前に、告白した場所である屋上から走り去る。
 まさか、泣くほど嫌だったとは…これは、あとで勇に報告しなきゃな。ま、まぁ…泣かれた位だから逃げてきても文句は言われないよね。


 取り敢えず、僕は家で今日の事を懺悔するとしよう…。


 


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