スキルイータ

北きつね

第二百三話


 ゼーウ街の事は、ルートガーと元老院に任せる事になった。
 ルートガーの執務室に遅れて、ミュルダ老とメリエーラ老が入ってきた、けが人はクリスとオリヴィエが見ている。

 メリエーラ老が出されたコーヒーに口を付けながら俺に話しかけてくる。

「ツクモ様」
「ん?」

「先日の全体会議を襲おうとしていた愚か者だが・・・」
「あぁなにか解ったのか?」

 メリエーラ老に一任した。エルフ大陸から来ていた馬鹿どもか・・・。すっかり忘れていた。

「どうやら、奴らの住んでいた集落が、金属を纏った魔物に襲撃されて、滅ぼされてしまったようでな」
「え?老。ちょっとまって欲しい」

「特徴が全く同じだ」
「すまん。チアル。オリヴィエを呼んできて欲しい」
「わかった」

 クローン・チアルが部屋からドアを開けないで出ていく。

「それで、老。間違いないのか?」
「いくつかの相違点はあるが、同じだと推定する事は出来る」
「そうだな。実物を見ていないからな。それで、俺が聞きたいのは、”同じ個体”だと思うか?という事だが?」
「ワシの感想では、違う個体だと思う。ゼーウ街の方に出た魔物は、銅の様な色をしていたという事だが、エルフ大陸の者は銀色だという話だ、それに、ゼーウ街の方はさらっていったが、エルフ大陸はほぼ全員を殺している」

「老。わからない魔物に関しては、元老院とルートガーからの報告を聞いてからになると思うが、エルフの愚か者はそれでどうして、メリエーラ老の命を狙った?」
「ツクモ様。正確には、ワシの命ではない」
「どういう事だ?」
「人手が欲しいとのスキルカードが欲しかったようだ」
「人手とスキルカード?」

「はい。人手は、ワシを捕まえでもして、奴隷を奪うつもりで居たようじゃ」
「そうか、スキルカードは、老を捕らえる事で、俺を脅して交換するつもりだったのだな」
「そうじゃ」

 行動はともかく、なにかを考えていたのは間違いないだろう。少ないかもしれないが、情報を持っているのは間違いなさそうだな。

「マスター」
「あぁオリヴィエ。彼らの様子はどうだ?」
「今、クリスが見ていますが、問題は無いようです。神殿区から来た神官も同じ意見のようです。少し休ませれば大丈夫だという事です」
「わかった。ありがとう。それで、話は聞いたか?」
「はい。同じ種類の魔物が出たという事ですが?」
「あぁ悪いけど、ローレンツの所に人を出して、アトフィア教の大陸でも同じ様な事が起きていないか確認してくれ。あと、商隊とかの噂話を含めて聞いた事がないか確認してくれ」

 ルートガーとメリエーラ老とミュルダ老を見る。

「話は、ルートガーに集約するようにしてくれ」
「かしこまりました」

 オリヴィエが執務室から出ていく

「老。ルート。これでいいよな?」

 ミュルダ老とメリエーラ老とルートガーとモデストがうなずく。
 これで、アトフィア教の大陸でも同じ魔物が出てくるとなったら、なぜチアル大陸に出てこないのかが問題になってくる。
 問題になってくるが、調べる事も何もできない。

「なぁルート。ゼーウ街の帰還率が下がっているのは、この魔物が影響していると思うか?」
「どうでしょう。現状ではなんとも言えないと思います」
「そうだよな。この件は、俺は報告を待っていればいいよな?」
「そうしてください。絶対に、自分から調査に赴いたりしないでくださいね」
「わかっているよ」
「約束ですよ」
「わかった。わかった」
「本当に、本当に、本当に、お願いしますよ」
「わかったよ。いい加減にしないと、泣くぞ?」
「何度でもいいますよ。俺が、街の代官になったのは、別に貴方を自由にするためじゃないのですからね」
「はい。はい」

「ツクモ様。ワシからもお願いします。ツクモ様が調査に出かけられれば、解決の糸口まで見つけるかもしれませんが、今回は元老院とチアル街の代官に手柄を譲ってください」
「・・・。わかった」

 そうだよな。
 ルートガーに関しても、俺から代官の役目を奪ったと思われているかもしれない。
 一部の者は、間違いなく奪ったと考えるだろう。そう考える奴らは、実績を示さないと納得しないのだろう。元老院も似たような感じなのだろう。

「それじゃ任せた。俺は、ログハウスか洞窟に籠もるつもりだけど、問題ないよな?」
「はい。大丈夫です」

 ルートガーが微妙な顔をしているが気にしてもしょうがないだろう。

 今日の所は解散となった。

 俺の部屋がなくなった迎賓館ではなく、ブルーフォレストダンジョンからホームに向かう事にした。
 けが人は、そのままクリスとルートガーが預かって自由区にできた教会で治療を続けるようだ。

「チアル。先に戻って、シロとフラビアとリカルダに状況を説明しておいてくれ」
「マスターは?」
「少し、やる事を思い出した。すぐに戻ると伝えてくれ」
「かしこまりました」

 さて、ロックハンドに向かおう。
 イサークなら何らかの情報を握っている可能性がある。俺は動かないと言ったが、イサークを動かすのは問題ないだろう。

 ロックハンドの転移門の部屋に入ろうとしたら、ティリノが近づいてきた。

「マスター!」
「ん?」

「マスター。ロックハンドに行くのならご一緒します」

 クローン・ティリノがついてくるようだ。

「そうだな。ティリノが一緒のほうが、ダンジョンの構成を変えたりできるから丁度いいのかもしれないな」
「はい!」

 ホームに一旦入るがそのままロックハンドの転移門に入る。

 俺とティリノが、ロックハンドダンジョンからロックハンドに向かった。

 ん?港の方が騒がしいな?

「ティリノ。悪いけど、カイとウミとライとエリンとアズリとエルマンとエステルとレッシュを呼んできてくれ」
「マスター。一度に言われても困るの!」
「わかった。全員呼び出してくれ!」
「わかった!」

 ホームを開く必要はない。ロックハンドダンジョン経由で出てこられるのはわかっている。

 すぐに、チアルとペネムとクローエが来た。

「マスター。何か有りましたか?」
「わからない。ただ。港が騒がしい。他の者はまだだけで俺たちだけで行くぞ」
「はい!」

 港に向かう。
 騒がしいと思ったのは間違いなかった。

 戦闘音だ。

「イサーク!」
「ツクモ様!助かった」

「なにがあった!?」

 ピムが倒れている。
 ガーラントが盾で攻撃を防いでいるがジリ貧なのは目に見えて解る。

「あいつが海から現れた!」

 ”あいつ”?
 ガーラントと対峙している魔物を見る。ラ○ダ?某天空の城で出てくるロボット兵に酷似している。首周りや胴体は太くなっている。足も太いのだが全体は、あんな感じだ。
 金色をしているのが話に出てきた魔物とは違うだろう。

「イサーク。被害は?」
「ピムが腕の一撃を受けたが、他は大丈夫だ」
「どのくらいだ!」
「まだ5分くらいだ」

 丁度、シロたちが駆けつけてきた。

「カズトさん」「ツクモ様!」

「シロ。フラビア。リカルダ。ピムを回収して下がれ」
「はい」「はい!」「はっ」

 カイとウミが俺の前で本来の大きさに戻る。

「エリン!」
「うん。パパ!」

「カイ。ウミ!」
『はい!』『わかった!』

「ライ。防御!」
『はぁい!』

 エリンが攻撃に参加する。

 え?
 エリンでも押しきれない?

「イサーク!ナーシャは?」
「家だ!カトリナと逃した」

 ナーシャが居ない事が気になったが、さらわれたわけではなさそうだ。

 エリンとカイとウミの攻撃でも一歩も引かない。

「アズリ!鑑定!」
「マスター!物理半減とスキル半減と状態異常無効がある。体力Sで魔力Cだ。スキルはなさそうだ物理攻撃だけ」
「イサーク!聞いたか?」
「おぉ!削ればいいな」
「腕の攻撃に注意しろ!」
「わかっている!」

「ガーラント。どのくらい持ちそうだ?」
「あと、2-3発でダメじゃ」

「わかった。ライ。ガーラントに盾を渡せ。総ミスリルがあるだろう」
『うん』
「ガーラント。ライから盾を受け取れ、総ミスリルの盾がある」
「おっおぉ!」

 防御に関してはこれで大丈夫そうだ。

 攻撃をしていた、イサークの剣が折れる。
 ダメージが通っているようには思えない。

「イサーク。これを受け取れ」

 俺が作った剣だが、重くて俺には使いにくいものだったが、イサークなら大丈夫だろう。

「悪い!」

 イサークが折れた剣を魔物に投げた。

「マスター。全然効いてない。カイ兄やウミ姉の攻撃もダメ!」
「ステファナ。リーリア。スキル攻撃。絞らなくていい。全力で行け!」
「はい」「はい」

「カイ。ウミ。オリヴィエ。レイニー。エリン。スキル攻撃に移行。一旦下がれ!」

 どうやら、この仮称ラ○ダの操作制御はそれほど賢くないようだ。
 一度攻撃を始めると、その攻撃対象が倒れるかしない限り攻撃を続けるようだ。

 カイやウミたちが一旦引いても、ガーラントへの攻撃を続けている。

 ステファナとリーリアとウミの多彩なスキル攻撃がヒットするが、ダメージが通っているようには思えない。
 状態異常は意味がない上に、物理攻撃が効かない。スキル攻撃も効いているのか微妙な感じだ。

 え?

「帰っていく?」

 イサークの呟きが全てだ。

 ラ○ダは、攻撃の手を緩めて、踵を返して海の方に向かっていく

「クローエ。クローンをつけられるか?」
「うん。できる!」
「頼む」

 暫く海の方を見ていたが、戻ってくる様子がない事から、臨戦態勢を解除する。

「それで、イサーク。どういう事だ?」
「俺にも・・・わからない。今日、カトリナが帰る船が来る予定になっていて、皆で待っていたら、海から奴が現れて、カトリナを襲った」
「カトリナは?」
「かすり傷だけだ。今、ナーシャがついている」
「そうか、エーファ!」
「はい」
「カトリナとナーシャはわかるな?」
「はい」
「行って治療をしてやってくれ」
「かしこまりました」
「すまん。ツクモ様」

「それで?」
「あとは、見てのとおりだ。カトリナの次に狙われたのは、ピムだ」
「そうか・・・」

 狙いがわからないから、なんとも言えないけど近くに居た者から狙ったのか?

「ピムも何回かは避けられたのだが、しなる腕にやられた」
「そうか」
「あの魔物は、初めてなのか?」
「始めてみた」
「聞いたこともないのか?」
「ないな」「ワシも初めて見た」

 息も落ち着いてガーラントも話に参加してきた。
 どうやら、何か大陸なの、星全体なのか・・・。わからないが、何かが発生しているのは間違いないようだ。

「マスター!」
「なにか解ったのか?」

 クローン・クローエが尾行したのだがなにかわかったようだ

「うん」
「どうした?」

 失敗したか?

「うーん。どう言っていいのか?」
「そのまま言ってくれればいいぞ?」
「うん。あの、魔物だけど、海の中を進んでいって、急に止まったと思ったら、バラバラになっちゃった。今、クローンが残された魔核と骨格を持って戻ってきている」
「了解。ホームに運んでおいてくれ」
「はぁーい」

 途中でバラした?
 状況が読めない。魔核を調べれば、なにか情報が読み取れるかもしれない。

「ツクモ様?」
「あっそうだ。すっかり忘れていた。あの魔物の事で、知っている事がないか聞きに来たけど、なさそうだな」
「えぇ初めて見ましたし、聞いた事がありません」
「そうだよな」
「あれがどうしたのですか?」
「・・・。今、確認できている事だけど、ゼーウ街とエルフ大陸で確認できている」
「それは本当か?」
「全く同じなのかわからないけど、話だけでは同じ物だな。物理攻撃が殆ど効かなくて、スキル攻撃もダメだという事だ」
「そうか・・・。あっ!そうだ、俺の剣・・・なぁツクモ様」

「いいぞ。貸しておいてやる」
「助かる。ロックハンドには、まだ鍛冶屋の設備がなくて・・・。剣も修復ならできるが、新しい剣はまだ無理だから・・・」
「そうか・・・ガーラントは?」
「まずは、日用品で手一杯だ」
「それくらいなら言えば、チアル街から運ばせるぞ?」
「・・・。大丈夫だ」
「そうか、わかった。あの魔物以外では困っていないのだよな?」
「俺とガーラントとピムで勝てない魔物はあいつだけだな」
「わかった。今度、あいつが現れたら、戦わないで、ロックハンドダンジョンに逃げろ」
「いいのですか?」
「あぁお前たちの命のほうが大事だからな。ロックハンドダンジョンなら奴も入ってこられないと思う」
「わかりました。でも・・・」
「”でも”じゃない。イサーク。エルフ大陸では、いくつかの集落が奴にやられて壊滅したという情報もある。ゼーウ街でも未確認だが、何組かの冒険者がやられて帰ってきていない。奴はやばい。いいか、絶対に逃げろよ」
「・・・。わかりました。皆にも言っておきます」
「そうしてくれ」

 クローエが横に来て念話で話しかけてきた。

『マスター。ホームの中に運びました』

『アズリとオリヴィエとリーリアとステファナをホームに連れて行ってくれ』
『わかりました』

 クローエが皆にそれぞれ声をかけてからロックハンドダンジョンに入っていく。

『シロ』
『はい?』
『俺は、もう少し、イサークと話をしていく、ホームに戻って、あの魔物の検証をしてくれ、アズリとリーリアとオリヴィエが居ればなにかわかるかもしれないけど、シロとフラビアとリカルダも手伝ってくれ』
『わかりました!』

 シロとフラビアとリカルダも、ホームに移動を開始する。
 眷属は、辺りを警戒しているが、もう大丈夫そうだ。

「イサーク」
「はい!」
「お前の感じたことで構わない、あの魔物は何だと思う?」

「ツクモくん。心当たりがあるよ」
「ナーシャ」「ナーシャ!?」

「カトリナは大丈夫だったのか?」
「うん。なんともないというわけじゃないけど、頭を軽くうっているから、今は寝てもらっている」
「そうか・・・。それで?ナーシャ?心当たりが有るのだな」
「うん。多分、族長も知っていると思うけど・・・」
「ヨーンも?」
「ううん。獣人族の族長なら知っていると思う。あの魔物。人型って呼んでいるけど、あいつは魔物じゃない」
「魔物じゃない?」
「”守る者。身体は意思。心を持たず、武器は持たず、スキルは使わず、武器は通じず、スキルは通じず、腕のみで攻撃す、それは人型。神殿の最深部を、女神を守る者なり”」
「??」

 さすがは巫女候補と言ったところか?

「伝えられている言葉です」
「そうか、まさにという感じだな。でも、ここは神殿でもなければ、守るべき女神が居ないぞ?」
「はい。だから、不思議に思ったのですが、あまりにも歌にある事と一致しているので、心当たりとしては十分だと思います」
「そうだな。ナーシャの言うとおりだな」
「竜族もなにか知っているかもしれないな」
「はい」
「でも、獣人族にだけ伝わっているというのがわからないな」
「いえ、エルフにも、ドワーフにも似たような歌はあると思いますが、獣人族のように一族がまとまって過ごしているわけじゃないので、喪失したのかもしれません」
「そうか・・・。考えたらそうかもしれないな」
「はい」

 どうやら、戻って、ヨーンたちに確認したほうがいいかもしれないな。

 まずは、ホームに戻ってから考えるか?

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