スキルイータ

北きつね

第百九十五話


 約一日の余裕ができた。
 クローン・クローエは、シロの肩ではなく俺の肩の方が好きなようだ。どういう個性なのかわからないが、問題はない。少しだけ、シロが嫉妬したので、抱きしめてキスしたら機嫌が良くなった。

 クローン・クローエが冷やかしていたが気にしてもしょうがない。

 どこでつづきをやろうかと思ったが、汚れる可能性もある事を伝えると、オリヴィエがログハウスの庭園を提案してきた。
 暫く行っていなかったから丁度いいかもしれないな。

 エーファやティタやティアやレッチェやレッシュやエルマンやエステルにも教えていなかったし丁度いいかもしれない。

 アズリとエリンも連れて、皆でログハウスの裏手にある。庭園に向かった。

 いろんな草木がそれこそいろいろな花をつけて、実を成している。

「こんな所が・・・」
「あれ?シロは、来たことなかった?」
「え?あっ初めてです」
「そうだったか・・・。悪かったな。案内したつもりになっていた。執事エントメイドドリュアスたちが管理している庭園で、ダンジョンやブルーフォルストで見つかった草木を集めている。花が咲けばビーナたちが蜜を集めている」
「そうだったのですね」

 暫く、シロは草木をエーファたちと眺めるようだ。

 俺は・・・。
//レベル10プログラム
 の、実験をする。

 ふむぅ・・・プログラムと言っているが、どうやら俺が考えているような物ではないな。

 これを誰かに教えるのは、面倒だな。
 でも、俺が作り続けるのはもっと面倒だ。

 サブセットの実験もしてみようとは思うが・・・!

「シロ!」
「はい!」
「少し手伝ってくれ」
「わかりました」

 サブセットもスキルカードの状態になる。
 試しに、オリヴィエに固定してみようとしたが出来なかった。

 クローン・クローエは、ティタやティアたちに混じって遊んでいる。

「シロ。このスキルカードを使ってみてくれ」

 プログラム・サブセットを渡す。
 何も考えないで作った物だ。何も出来ないはずだ。

「カズトさん。何も発動しません」
「ありがとう。何も発動しないのが正解だ。魔力が使われた感じは?」
「ありません」

 次は、スキル火とスキル風を組み合わせたサブセットだ。

「これは?」

 シロがスキルを発動したら、まずは火が発動してすぐに風が発動した。

 ここまでは想定通り。
 さて次だな。

 入力のサブセットスキルカード入力比較のサブセットスキルカード比較試験のサブセットスキルカード試験記憶のサブセットスキルカード記憶を作り出す。
 配置のサブセットスキルカード配置は、後でやってみればいい。

「シロ。次は、これを使ってみてくれ」
「これは?」
「説明するから、言われた通りに組み合わせてくれ」
「はい」

 『発動』と声が入力されたら、スキル風を発動する。

 これだけで4枚のスキルカードが必要になる。

 シロが、”発動”と宣言すると、風のスキルが発動した。

「カズトさん!」

 各サブセットを渡せば、俺以外でも作られる事ができる。
 これは大きな発見だな。

 あとは、複製を固定した魔核を作って、サブセットが複写できる事が確認して、最後に配置のサブセットスキルカード配置の実験をすれば、かなり融通が効くスキル道具を作る事ができそうだな。

 使ったら消えるのが怖くて、固定したけど、これって多分一回だけで消える類の物だとしたら使い物にならないよな?
 実験するつもりは無いけど・・・。マスターとして各種サブセットを作って、スキル複製を固定したレベル7の魔核を作って、アーティファクトとしてルートガーに渡せばいいな。

「マスター。お食事はどうされますか?」

 シロといろいろ実験をしていたら、時間が経つのを忘れてしまっていたようだ。

「そうだな。まだ日が高いから、ここで食事にするか?いいよな?」

 問題はないようだ。

 オリヴィエに食事の用意をしてもらった。

「カズトさん」
「ん?」
「この場所は、また来ていいですか?」
「気に入ったのか?」

 シロが可愛くうなずく。
 頭を撫でながら、問題ないことを伝える。

「エーファたちも気に入ったのから来ていいからな。ログハウスの周りに作ってある塀から外に出るなよ」

 エーファたちも気に入っているのだろう。
 嬉しそうにしている。

「大主様。ルートガー殿が大主様を訪ねて来ていますがどうしますか?」
「あぁログハウスか?」
「いえ、下です」
「下?」
「はい。階段の下です」
「わかった。そうだな。迎賓館の執務室で話を聞く」
「かしこまりました」

 当番執事エントが一礼して帰っていく。

「シロ。どうする?迎賓館に行くけど、ここで待っていてもいいぞ?」

 ついでに、プログラムのアーティファクトを渡せるし丁度いいな。
 シロは一緒に行く事にしたが、クローン・クローエはエーファたちと庭園で待っている事になった。

 迎賓館の執務室にはすでに大量の書類を持った、ルートガーとクリスが待っていた。

「ん?クリス?珍しいな」
「ツクモ様。今日は、僕・・・。私からのお話もありまして」
「いいよ。俺とシロとルートとクリスしかいないから、僕でも構わないぞ?」
「いえ・・・それは・・・その・・・」
「まぁいい。クリス。説明を始めてくれ?頼み事か?」
「いえ、報告です」

 ルートガーがクリスの言葉を遮るように、書類を出しながら説明を始める。

 クリスが来ている理由がわからない。子どもができたとかなら報告は必要だろうけど・・・。違うようだ。

 説明は、魔物種の繁殖に関しての事だが、問題はなさそうだ。
 牧場が狭くなってきているので、増やしたいという事だが、別に問題はない。詳細な説明が必要になる項目だとは思えない。

「それで?ルート。本当の目的は?」

 2人は、お互いの顔を見る。

「ツクモ様」
「なんだよ?」
「あのですね」
「あぁ?」

 『あ』に点々がついてしまうような声になりそうだ。

「カズトさん。クリスさんは、なにかお願いしたいようですよ」

 シロの助け舟で少しは場がよくなるのか?

「ツクモ様」

 クリスが覚悟を決めたようだ。
 イラッとしたがシロが俺の手をにぎる。そうだな。イラッとしてもしょうがない。

「ヴィマとヴィミとイェレラとラッヘルとヨナタンとイェルンとロッホスとイェドーアの婚姻を認めていただきたい」
「え?」
「え?」

 俺とシロは拍子抜けしてしまった。
 そもそも、婚姻は認めていると思った・・・のだけど、なにかしたか?

「ルート。俺、ダメって言った?」
「・・・。はい。やはり、単純にお忘れになっていただけですよね?」

「シロ。俺、忘れていたか?」

 思い出さない。

「ツクモ様。彼らの婚姻に関しては、ご許可を貰っていますが、彼らの住む場所に関してのご許可を貰っていません。これから、彼らのやっている事が、基幹産業になっていく事も考えられますので、住む場所は今の宿区ではないほうがよろしいのではないでしょうか?そう具申した決裁書類を廻しまして、ご許可をいただきまして、後日場所を知らせると通達がありました」
「クリス?」

 一気に言い切りやがった。

「ツクモ様?」
「クリス。ルート。悪い。忘れていた」

 2人から盛大なため息が漏れる。

「それで、今日は、その苦情だけか?」
「いえ、ダンジョン内に新しい住居を構える事のご許可と彼らの護衛を考えたく思っています」
「住居は許可する。ルートのいいようにしてくれ」
「はっ」

「護衛はどうしたらいい?」
「ツクモ様。彼らや彼女ら、ヌラ殿やヌル殿やゼーロ殿の護衛は必要ありません。過剰防衛です」
「え?そうなの?じゃぁどうするの?」
「彼らに、執事候補とメイド候補をつけてください」
「ふむぅ・・・」

 候補と言っている事から、進化体ではなく上位種や通常種の執事エントメイドドリュアスだろう。
 それで大丈夫なのか?

「ツクモ様。通常種で大丈夫です」
「え?」
「今、戦力的なことを気にされましたよね?」
「あぁ通常種じゃ護衛にならないだろう?最低でも、上位種でないとダメだろう?」

 ルートガーとクリスがお互いを見て、シロを見る。
 なんだよ、その苦労しますねって目線は?俺は、シロに苦労させていないぞ?多分・・・。

「ツクモ様。そうですね。執事エントメイドドリュアスに勝とうと思ったら、イサーク殿達を呼び戻さないとなりません」
「え?」

 イサークたち?
 奴らが攻略組のトップだって事は聞いていた。
 聞いていたが、奴らと執事エントメイドドリュアスがほぼ同じな事に二重にびっくりした。

 執事エントメイドドリュアスは、そこまで強くない印象がある。
 多分、チアルダンジョンの30階層か武器防具を固めて、40階層が限界だろう。そこで、進化しない限りは50階層を抜ける事は難しいと思える。

 そうなると、イサークたちは50階層を越えられるかどうかという事になる。

「ツクモ様?」
「あぁそれなら、スーンに依頼を出しておいてくれ、俺の許可は貰っていると言えば問題ないだろう」
「ありがとうございます」

 その後、家の場所を話し合いで決めた。
 ペネムも居るので、地形を少し変えて、防御がしやすいようにする。

 ついでに、ギュアンとフリーゼも移動してもらう事にした。

「あっそうだ!忘れていた。ルート。これを渡しておく」

 アーティファクトとして成立させる為に用意した宝箱に入った状態の、各種サブセットと複製のスキルが固定された魔核だ。

「これは?」

 ルートが受け取ってから、蓋を開けて中を確認する。

「危ないものじゃない。スキル道具が作りやすくなる物だ」
「え?」
「チアルダンジョンを攻略して居る時に見つけた物でアーティファクトだ」
「は?」
「今までは、スキルを魔核に固定して、いくつかを連動するようにしていたけど、もう少し複雑な事ができる物だ」
「はぁ??」
「シロでもスキル道具が作れたし、大丈夫だろう?説明は必要か?」

 ルートガーがうなずいたので、簡単に中身の説明とできそうな事の説明をした。

「あんた馬鹿だろう?」
「ルート。馬鹿はひどいな。俺は、ここの生活がよくなればと考えているだけだぞ?」
「だから、馬鹿だと言っている。そもそも、レベル7複製のスキルが固定されている魔核って、あんたが作ったのだろう?そうなると、このサブセットの出処も、チアルダンジョンじゃなくて、あんただろう?」

 おぉさすがに付き合いが濃いだけはあるな。
 見事に的中させている。

「だから?」
「もういい・・・。それで、俺にどうしろと?」
「あぁアーティファクトとして、街のシンボルにしてもいいけど、せっかくだから、有効に使って欲しいかな」

「あの・・・。ツクモ様」
「ん?どうした?」
「レベル7複製のスキルですけど、その・・・。サブセット?しか複製できなくできませんか?」

 クリスの説明を聞いて納得した。
 確かに、複製のスキルは、不正に利用しようと思えば簡単にできてしまう。

「わかった。少し待ってくれ」

 ふむぅどうしようか?
 複製のスキルを一度、魔核から引き離してから考える。

 複製の時に対策を考えるから面倒なチェックが増えてしまいそうだ。
 入力を絞ればいいか。

「シロ。レベル1かレベル2の魔核はあるか?」
「あります。何個ほど必要ですか?」
「とりあえずは、レベル2が5つかな?」
「はい」

 シロから魔核を受け取る。
 それに、入力のサブセットスキルカード入力比較のサブセットスキルカード比較試験のサブセットスキルカード試験記憶のサブセットスキルカード記憶配置のサブセットスキルカード配置を固定化する。
 これらを入力として、比較のサブセットスキルカード比較で各種サブセットと比較させて、OKな場合だけレベル7複製のスキルを発動するようにする。

 簡単な専用複製装置の完成だな

 何回か実験をした。高レベルのスキルカードを複製しようとしてもできない事も確認した。

「クリス。これでいいか?」

 クリスはうなずくだけだが、ルートガーがまたやらかしたという顔をしている。

「ルート。これは、チアルダンジョンで見つかったアーティファクトだ」
「えぇわかりました。今度の全体会議でお披露目しましょう。職人区の者たちが狂喜乱舞しそうですね」
「それなら嬉しい。あぁそれから、チアルダンジョンで大量の魔核が手に入っているけど、レベル7や8や9は使えないだろう?」

「あんた馬鹿だろう?」

「ルート。何度も言わなくても、それに、馬鹿は一度で十分だ」
「なんでも言ってやるよ。あんた馬鹿だろう?レベル7や8や9の魔核を大量に?おかしいだろう?」
「しょうがないだろう。下層では殆どそれだったからな」
「それはそうかも知れないけど、レベル5が最近やっと出せるようになってきたのだぞ?わかっていますか?」
「解っている・・・え?レベル5?レベル6じゃなくて?」
「えぇレベル5の魔核でも買い手がなかなか出てきませんよ?」
「そうなの?」
「えぇそうです。だから、レベル6以降は秘匿しておいてください」
「わかった。わかった。俺が使う事や、ペネムやティリノやチアルに食わせるのは問題ないよな?」
「えぇ貴方の身内に使うのなら問題ないです」
「そうか・・・身内なら問題ないのだな」
「あぁ問題ない」

 シロを見る

「シロ!」
「はい」

 シロもわかったのだろう。
 レベル9の魔核を2個取り出した。他にも、レベル7の魔核を8個取り出した。
 あぁそうだな。シロの頭を撫でてやる。

「クリス。ルート」

 2人に、レベル9の魔核を投げる。
 それから、レベル7の魔核8個を目の前に置く。

「え?」「は?」
「結婚祝いだ。レベル9魔核だ。これは、レベル7の魔核が8個あるから、クリスの従者たちに渡してくれ。婚姻が遅れた詫びだ」
「はぁ?あんたまた!」

「あぁ?ルート。お前さっき。俺の身内に使うのは問題ないと言ったよな?」
「えぇいいましたよ。言った先からこれですか?あんた馬鹿だろう?」
「馬鹿は、お前だ。俺は、お前たちの事は身内と思っている。レベル9の魔核があればルートもクリスもいざってときに困らないだろう?」
「え?」「あっ!」

 2人は、ハーフで魔核の吸収ができる。
 命にかかわるようなダメージを負った時でも、魔核の吸収ができれば逆転の一手が打てるかもしれない。

 よし!勝った!
 何にとは考えないようにして、勝った事を喜ぼう。

 2人が、お互いを見てから、魔核をしっかりと握りしめたのが無性に嬉しかった。
 そして、遠慮しつつも8個の魔核を受け取って、必ず渡すと言ってくれた。

 2人が、揃って立ち上がって、一礼して執務室から出ていく。

「シロ。ありがとうな」
「カズトさん。僕、余計なことを」
「違う。シロが、気がついてくれなければ、俺は2人にまた負担をかける事になったかもしれない。だから、ありがとうな」
「いえ・・・」

 シロを抱きしめて、頭を撫でてやる。

 シロがレベル7の魔核を出していなかったら、俺はルートガーとクリスにだけ渡していただろう。
 ルートガーとクリスは、それでも受け取りはするだろうが、使う事はしないだろう。従者とも家族とも言える者たちもレベルは違うが持たせる事ができるのなら、心の負担も軽くなるだろう。

「スキルイータ」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く