霊感少年

夜目

見えないもの7

 「これからどうするの?」
 久我 静人くが せいと間白 優子ましろ ゆうこに聞く。優子は優しい笑顔を静人に向けた。
 「とりあえずは、犯人探しかな? こんな体だもん。もう怖いものなんてないわ」
 「強いね」
 静人は思わずそう言った。優子はゆっくりと首を横に振る。
 「私には、想ってくれる人がいるから」
 そうだね、と静人も優しく微笑む。
 「ありがとう、二人とも。あなた達が来なければ、私は今もあの廃校に閉じ込められたままだった」
 二人、と言われたが瀬崎 南雲せざき なぐもは優子の方を向くことはなく、空を見上げて考え事をしているようだった。
 「ごめん、見えるのは、俺だけだから」
 そっか、と優子はつぶやく。
 「じゃあ、私行くね。とりあえず幽霊ってやつを満喫してみるわ」
 「あ、待って優子さん!」
 静人は慌てて優子を引き留める。
 「優子さん、実は俺ら二人は、優子さんを殺した犯人を探しているんだ。訳は話すと長くなるけど、協力して探さない?」
 優子はまたキョトンとした顔をした。
 なんだか不思議だと優子は思った。死んだ身でありながら、今自分は新たな人間関係を築いている。
 なんだか、可笑しいや。
 「ふふふ、いいよ。その方が楽しそう!」
 そう言うと、優子は満面の笑みを静人と南雲に向けた。
 
―――これで二つ目。
 南雲の中で、運命の方程式が着実に組み立てられていく。その全貌を静人は知ることはない。
 南雲は静人と優子に見えない位置で、背中を片手で抑えた。綺麗な顔に、しかし僅かに寄った眉間のしわに気付く者はいなかった。

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