霊感少年
見えないもの5
つまり、どういうことなのか?
「いい? 一気に説明するよ?」
久我 静人はなるべく優しい声で間白 優子に話しかける。
「もう一度思い出すんだ、間白優子さん。あの日、あの夜、君は背中に黒い翼の生えた人間に出会った。そしてその後、この廃校に連れてこられて、そして・・・」
静人は、苦しくなっていく左胸を、服の上からギュッと掴んだ。
「殺された」
キョトンとした。優子はまさしくキョトンとしたのである。
目の前の二人組みの男、いきなり人の家に土足で上がりこんできて何を言うのか?
私が殺された? バカバカしい。あまりにも突拍子がなさすぎる。私は今こうやって日々を生活している。私は生きている。
「よく考えるんだ、優子さん。母親とずっと会話してないんだろ? でも待ってくれ。君はあの夜から母親の姿を見ていないんじゃないか? 毎朝出る朝食、君の好きなホットケーキだ。でも、いくら好きだからと言っても、毎日毎日ホットケーキを作るかい? 周りをよく見て。先入観を捨てて。君はどこで目覚め、どこで朝食を取っている? ベッドの上? リビング? ・・・違うよ。ここは、廃校の教室、君が殺された場所だ」
ナニヲイッテイルノ?
優子には分からない。理解できない。受け入れられない。
受け入れられない? 何を?
優子は自分が座っている場所を確認する。あの夜から寝付きが悪かった。それは怖かったから? 体が重いのは、あの夜のせい?いや、違う。寝付きが悪いのは当たり前のことじゃないか。だって私は・・。
私はこの錆びた、血だらけのイスにずっと座っているのだから。
「あ・・あ・・ああああ」
優子の目に、小学校の図工室を思わせる空間が広がる。寝心地のよいベッドも、大好きなホットケーキも、愛して止まない母の姿も、何もなかった。
優子の記憶が、一気に呼び覚まされる。
あの夜、優子は背中に黒い翼の生えた人間に連れ去られ、廃校のこの教室に来たところで、椅子に身体を縛られ、そして・・。
「いやっ・・・いやああ」
優子の目から涙がこぼれる。唇は恐怖と哀しみで震えが止まらなくなる。
私、私!
優子は決して口にしたくない言葉を、涙を流しながら叫んだ。
「私、死んじゃった」
正気を保てない優子を前にして、静人は言葉を見つけることができなかった。ただただ静かに握った拳を震わせる。込み上げてくる怒りとやるせなさの行き着く場所がどこにもないことを、静人は理解した上で、「助けてやれなくて、ごめんな」とだけつぶやいた。そんな静人を、南雲はただ見つめ続けていた。
「いい? 一気に説明するよ?」
久我 静人はなるべく優しい声で間白 優子に話しかける。
「もう一度思い出すんだ、間白優子さん。あの日、あの夜、君は背中に黒い翼の生えた人間に出会った。そしてその後、この廃校に連れてこられて、そして・・・」
静人は、苦しくなっていく左胸を、服の上からギュッと掴んだ。
「殺された」
キョトンとした。優子はまさしくキョトンとしたのである。
目の前の二人組みの男、いきなり人の家に土足で上がりこんできて何を言うのか?
私が殺された? バカバカしい。あまりにも突拍子がなさすぎる。私は今こうやって日々を生活している。私は生きている。
「よく考えるんだ、優子さん。母親とずっと会話してないんだろ? でも待ってくれ。君はあの夜から母親の姿を見ていないんじゃないか? 毎朝出る朝食、君の好きなホットケーキだ。でも、いくら好きだからと言っても、毎日毎日ホットケーキを作るかい? 周りをよく見て。先入観を捨てて。君はどこで目覚め、どこで朝食を取っている? ベッドの上? リビング? ・・・違うよ。ここは、廃校の教室、君が殺された場所だ」
ナニヲイッテイルノ?
優子には分からない。理解できない。受け入れられない。
受け入れられない? 何を?
優子は自分が座っている場所を確認する。あの夜から寝付きが悪かった。それは怖かったから? 体が重いのは、あの夜のせい?いや、違う。寝付きが悪いのは当たり前のことじゃないか。だって私は・・。
私はこの錆びた、血だらけのイスにずっと座っているのだから。
「あ・・あ・・ああああ」
優子の目に、小学校の図工室を思わせる空間が広がる。寝心地のよいベッドも、大好きなホットケーキも、愛して止まない母の姿も、何もなかった。
優子の記憶が、一気に呼び覚まされる。
あの夜、優子は背中に黒い翼の生えた人間に連れ去られ、廃校のこの教室に来たところで、椅子に身体を縛られ、そして・・。
「いやっ・・・いやああ」
優子の目から涙がこぼれる。唇は恐怖と哀しみで震えが止まらなくなる。
私、私!
優子は決して口にしたくない言葉を、涙を流しながら叫んだ。
「私、死んじゃった」
正気を保てない優子を前にして、静人は言葉を見つけることができなかった。ただただ静かに握った拳を震わせる。込み上げてくる怒りとやるせなさの行き着く場所がどこにもないことを、静人は理解した上で、「助けてやれなくて、ごめんな」とだけつぶやいた。そんな静人を、南雲はただ見つめ続けていた。
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