霊感少年

夜目

見えないもの4

そうだ、そろそろ起きて学校に行かなくては。
 間白 優子ましろ ゆうこは記憶の断片を探すのを止め、ベッドから起き上がる。あの夜から寝付きが悪く、体が重い朝が続いた。
 結局、あの日から母さんとは口をきいていない。優子はうっすらとため息をつく。
 親子のコミュニケーションが無い中でも、毎日朝食が用意されているのが逆に辛かった。今朝も、優子の好きなホットケーキである。少し不格好なホットケーキが三枚、可愛らしいキャラクターが描かれたお皿に並んである。どちらかと言えば痩せ気味で、小食な優子も、大好きなホットケーキは母が驚くほど食べた。優子の母はそれを喜び、定期的に朝食をホットケーキにしてくれた。
優子は気まずさを含んだままホットケーキを口に運ぶ。一人で食べる朝食は、作業以外の何ものでもなかった。
 ねえ、母さん。一人じゃ、美味しくないよ。
 込み上げてきた感情が溢れないように、優子は下唇を少し強く噛んだ。
 優子の母は、決してできた人間ではない。強い責任感は、過保護とともに優子を束縛した。行動を制限し、必要以上の自由を優子に与えなかった。それによって、優子の人間関係にどれだけの影響が及ばされたのかは分からない。しかし少なくとも、優子にとってプラスばかりであったとは言い切れるものでもない。
 それでも、母の愛情を優子は感じていた。伝わっていた。母の愛情は強く、しかしそれに対して未熟すぎる自分が、迷惑ばかりかけてしまうのが優子には辛かった。
 きっと将来、私が母さんに楽をさせてあげる。
 優子は固く決意していた。きっと母を幸せにしてみせる、と。

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