天才の天才による天才のための異世界

白兎

第二十八話  ギルド



 ――ルカリアから東の国――キスガス王国


 ルカリア、ドルドと戦争中の国である。人種や文化を関係なく受け入れようとするルカリアや戦争中の国とは完全に交友を断っているドルドとは違い、実力さえあれば受け入れるという、実力至上主義な国だ。
 もちろんナトリアたちの受け入れはそれほど困らなかった。


「にしても、私も受け入れてもらえるとは思ってなかったわ」


 実際、リリはギリギリだった。二クスを投げ飛ばすほどの実力を持っているが、それほど強いわけではない。リリが入国できたのはナトリアが言うことを聞くのはリリだけという設定にしているからだ。


「ここ?」


 ナトリアとリリはキスガスの首都――ファンデル。
 この国には軍隊というものがない。各国から集まった実力者たちはここ――ファンデルにやってきて、いろいろな依頼をこなすギルドに集まる。キスガスには統率された軍隊はないが、自由という目的を持った実力者がそろっている。戦争を仕掛けることはあまりないが、守りの徹すればこれほど厄介な国はない。そして、各国の人材が募るここは情報も行きかう。


「とりあえず入ろっか」


 リリとナトリアはギルドに入った。中は酒場になっており、昼間なのに賑わっている。ナトリアとリリが入った時、入り口に視線が集まった。そして、一人の男が入ってきた二人に近づく。ナトリアはリリの前に立ち、その男と数秒睨みあう。
 一触即発の空気が漂う。しかし、その男はにっこりと笑い、


「みんな~! これはべっぴんさんがご来場だ~!!」


「「「「「イェーイ!!」」」」」


 あたりはさらに騒ぎ出す。その男はリリとナトリアを中にエスコートする。二人は誘われるまま中に入る。中の人たちは、主に男たちは隣を開け、ここが開いてるよと誘導する。
 どの誘いに乗ることなくカウンターに座った。その周りに人が集まる。
 四方八方から質問が飛び交う。リリとナトリアはかなり美少女なため男たちが盛り上がっているのは仕方がない。
 女性陣も数少ない仲間に喜んでいる。
 しつこく思ったナトリアは声を上げようとするが、一人の男によって阻止される。


「よっしゃ! んじゃ俺と勝負しようぜ! 勝ったらスリーサイズ教えて!」


 その男はクリトンと名乗り、二人に勝負を仕掛ける。勝負方法は――


「始まりました~! クリトン選手vsナトリア選手の大食い対決! ギルド一大食いの男が細身にしてか弱い少女に挑戦! 果たしてどうなるのでしょか~」


 机の上に大量の料理が運ばれる。ナトリアはよだれを垂らしながら、ナイフとフォークを握りしめている。久々のちゃんとした食事でナトリアの腹は準備満タンだ。


 対するクリトンは余裕な顔をしている。そりゃそうだ。ただでさえ大食いには自信がある彼が、今回相手にするのは見る限り細身の少女。誰が予想するだろうか。この体に流れ込むように食べ物が入ることなど。


「……うっゲフッ……ま、まいった……」


「勝負ありーー!! なんということでしょう! 勝者はナトリア選手!」


 ギルドの盛り上がりはどんどん高まる。ナトリアはもう勝負などどうでもよく、勝利した後も次々と出てくる料理に手を出す。その無邪気に食べる姿に周りは好感を持ち、ナトリアに餌付けするように料理を食べさせる者も出てきた。


「今度はあたしの番だーー!」


 今度は一人の女性が出てくる。涼しそうな露出度の高い服装に、腰にタガーを携えている。


「おっ~と! 今度は酒場の女帝、セノの登場だーー!」


 その女――セノは名の知れた酒飲みだ。とある酒場の酒をすべて飲み尽くしたという噂もある。彼女は来た方を見るとすでに酔いつぶれている人がいる。
 この騒ぎに入りたいと準備運動をしていたようだ。
 だが、その挑戦を受けたのはナトリアではなかった。


「今度はわたしの出番ね!」


 彼女は自信満々にセノの前に立ちふさがった。


「リリ、大丈夫?」


「こう見えても、結構いける口だよ!」


 リリは普段、酒はたしなむ程度だが、勝負となれば負けたことはない。もちろん、和也はそのことを知らない。


「へぇ~なら、あんたにも準備運動の相手になってもらおうか」


「上等よ! その準備運動で終わらせてあげるわ」


 実際二人の戦いは壮絶だった。さすがに見てる方が酔いつぶれてしまいそうになる。あたりは飲み終えた木製のジョッキが並び、二人はまだ余裕そうだ。


「結構やるじゃん。あたしとここまでやれたのはあんたが初めてだよ」


「あんたこそ、あんだけ飲んどいてまだいけるなんてね」


 二人は声をそろえて言う。


「「もう一杯!!」」






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「うぅ……さすがに飲みすぎた」


「大丈夫?」


 あの後、最終的に勝負ではなく普通に飲み交わすようになっていた。リリの顔はかなり赤くなっており、たどたどしい歩きで宿に向かう。途中からナトリアもリリに肩を貸している。
 宿についた二人は荷物を整理する。しばらくはここに滞在することになるからだ。
 ベッドは二つ、風呂や御手洗いも完備しており、暮すには申し分なかった。


 ――夜は遅く、あたりは静寂に包まれた頃……


「そぉうなのよぅ! カズヤぁったらぁすぅぐに散らかすんだからぁ、片付ける身にぃもなってぇほしいよねぇ」


「そ、そうだね……」


 リリの変貌っぷりにナトリアは少し引いている。正直早く寝たいがリリがなかなか寝かしてくれない。
 リリの話は日が昇るまで続いた。






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「ねぇ……あの後どうなったの?」


 翌朝、リリはナトリアにあの後どうなったのか聞く。寄ってからほとんど記憶がないようだ。ナトリアはリリから視線を逸らして一言。


「な、なにも……なかった」


「めちゃくちゃ不安なんですけど!?」


 この時、ナトリアはリリのあの姿を和也にも見せてあげようと思った。


「昨日は話が出来なかったけど、今度こそ情報を集めるわよ!」


 情報が集められなかったのはリリが酔ったせいと思ったが、ナトリアは口に出さなかった。少し口調が焦っていることから、リリも自分で気づいているようだからだ。
 二人は支度をして、ギルドに向かう。






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 二人がギルドに入ると、やはり視線が集まる。すると、クリトンとセノが顔を出した。


「よう、ナトリア。それとリリ」


「リリ、昨日は楽しかった。まさか、あんなことまで……」


「ちょっと!? 私何しちゃったの!?」


「セノ、あまりからかうなよ」


 クリトンに注意され、セノはペロっと舌を出して笑う。
 また、話がそれそうだったのでリリは情報を集めることにした。


「セノ。私たちはある人を探してここに来たんだけど……」


「ある人?」


「身長は私より少し上くらいで、少しくせっ毛な黒髪の少年なんだけど……あと、たぶんルカリアの兵士の格好をしてると思うんだけど……」


 リリの質問にセノとクリトンは思い当たることがないか記憶を探る。


「ごめん……あたしは知らないわ」


「俺もだな。キスガスにいるのか?」


「いや、ちょっといろいろあって、行方不明なの。この国なら他の国の情報も手に入るからここに来ただけで」


「なるほどな。ここで会ったのも何かの縁だ。俺も協力させてもらおう」


「あたしも~」


 二人は快く協力してくれた。昨日の時間は無駄ではなかったのだ。二人はギルドを拠点に情報を集めることにした。他に行くとこもなく、一番効率よく情報が集められると思ったからだ。それに、ここは割と過ごしやすい。
 情報集めと同時に宿代を稼ぐため、仕事を始める。仕事内容はもちろんギルドでクリトンやセノとともに依頼をこなす仕事だ。
 こうして、リリとナトリアのギルドでの生活が始まった――






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「あれっ!? 今回俺出番少なくない!?」


「カズヤさん、いきなり叫ばないでください」


「すまん……なんか俺の主人公の地位が危うい気がして……」


「あなたはさっきから何を言っているんです? 主人公って……」


「人は皆、自分の人生の主人公なのだよ」


「そうですか」


 だんだんベルウスの森での生活が馴染んできている和也だった。





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