天才の天才による天才のための異世界

白兎

第十一話  第三騎士団



 その二人は和也の元にやって来て、凄い形相で睨みつける。


「よう。なんでお前がそんな格好してここにいるんだ?」


 赤髪の男の台詞に既視感のようなものを感じた。
 状況を察したのか、フランが和也と二人組の間に割って入った。


「ちょっとなんなんですか?過去に何があったか知りませんが、これからは味方になるんです。仲良くしましょうよ」


 ――いいぞフランよく言った!


「うっせぇ! 殺すぞ!」


「すいませんでした!!」


 ――おい!


 フランは赤髪の男の眼力に気圧され、和也の後ろに隠れた。


「お前、自分の立場わかってんのか? 騎士は難民がなっていいものじゃねぇ」


 赤髪の男は和也を睨みつける。和也もそれに対抗するように睨み返す。


「残念ながらもう俺は騎士だ。お前にとやかく言われる筋合いはねぇ」


「ふん、まぁいい。俺は二クスだ。で、こっちはエレク」


 諦めたように、赤髪の男――二クスと、緑髪の男――エレクは、律義に名前を教えた。


「和也だ。よろしく」


 和也も答えるように名前を伝え、握手を求めた。が、二クスとエレクはそれに応じず、その場を去る。


「全員集合!!」


 一人の男がそう言うと、散らばっていた入団者が一斉に集まった。配属先がまだ決まっていないため整列などはしていない。
 和也たちもその一部に溶け込んでいた。
 そして一通り挨拶を終えると、配属先が決められ、それぞれ移動する。


 騎士団は第一から第十まであり、和也たちが配属されたのは、予定どうり第三騎士団だ。入団者含め約五百人で構成されている。ちなみに、戦闘がメインの第一騎士団と違って、人数は少ないが、揺動、偵察など戦闘以外も請け負っている。
 和也たちが第三騎士団の兵舎に入ると一斉に注目を浴びた。だが、注目を浴びているのは和也一人だ。
 何事かと思ったが、二クスとエレクがいるのを見て大体把握できた。
 注目している彼らの目も、友好的ではない。明らかに嫌悪感を抱いていた。


「完全にアウェイですね」


「そりゃ俺が難民って知っているからな。他国のもんがいきなり仲間となっても信用できないだろ」


 これがセシアが和也に役職を与えたがっていた理由。和也はそれを身を通して感じた。


「お前も無理に俺と一緒にいる必要はないぞ」


「僕の心配をしているならもう遅いですよ。こうして話しているのを見られてますし、それにひとりになってあなたが辞めるとなったら僕も辞めさせられますよ。それは僕のためにもなりません」


 和也はフランとなら仲良くなれそうだと感じた。それはもしかしたら和也にとって初めての親友と言えるものなのかもしれない。


「そういえばなんでお前は騎士になりたかったんだ?」


 和也は初めて聞いた時はスルーしていたが、ここにきて気になったので質問してみた。
 フランはニッコリと笑い答える。


「それは……」


 すると、フランの表情は一変した。


「殺したいやつがいるからですよ」


 フランの憎悪に満ちた目は、普段から笑顔なのも相まって、かなりの緊張感を醸しだしていた。
 和也はフランの過去について気になるが、これ以上は踏み込まないことにした。
 すると、和也たちの前におそらく第三騎士団の人が数人やって来た。


「ん? なんだよ」


「ちょっとつら貸せよ」


 和也は言われるままについて行く。フランも同行しようとしたが、和也はフランを置いて来た。






 ********************






 入団一日目が終わり、和也は自宅に向かう。普段は兵舎での生活になるのだが、一日目はまだ部屋割りがされてないため、それぞれ帰宅という形になった。
 家の前にはリリが待っていた。


「ただいま。どうしたんだリリ」


「おかえ……ってあんたこそどうしたのその傷!?」


 和也の服は汚れ、顔にはアザができていた。腕にもいくつか擦り傷がある。


「別に。転んだだけだ」


 リリは心配そうにしているが、和也は自然に流す。そんな態度を見て、リリはより心配になった。
 和也はそんなこと気づかずに家に入る。
 リリも空気を読んだのか、その日は何も言わずその場を去った。


「ちょー痛い。こんなのが当分続くのか。なんでこんなことしてんだろ俺」






 ――入団二日目


 兵舎の前で騎士たちはは整列し、和也とフランも並んでいた。包帯で手当てしている和也を見て、騎士たちはニヤニヤと笑っていた。だが、団長が来ると真剣な表情になり、前を向く。


「おはようは諸君。私が第三騎士団団長のオストワルだ。よろしく!」


 元気のいいオストワル団長は、男らしい顔つきながら、優しく陽気な性格のようだ。他の騎士たちが言うには民衆の評判もいいらしい。


 そして団長の指示のもと部屋わけされ、それぞれ荷物の整理する。
 和也はフランと同室だ。これには和也も安心した。
 そして、時間になると再び兵舎前に集まった。


「時間通り! 私の部下は優秀だな。がははは!」


 高らかと笑い、第三騎士団の騎士たちもつられて笑顔になる。この人の前では緊張というものが感じにくい。


「え~それでは早速訓練を始める。まずはそれぞれの実力を見たいので、木剣にて一対一で打ち合え。ペアは自由でいいが、実力差があるからってやりすぎるなよ」


 体育の授業なら自由で組めという指示は、なかなかきついものだが、今回はフランがいる。和也はそう安心していると――


「よぉカズヤ。俺とやろうぜ」


 ニクスが木剣を二つ持ってやって来た。片方の木剣を投げ、和也の足元に転がる。
 和也は木剣を拾い上げ、ニクスの誘いに乗る。そしてそこから先は見るに耐えないものとなった。
 打ち合い――そんな生易しいものではない。一方的な暴力だ。他でやっていた者も気になって集まり、ちょっとしたお祭り騒ぎだ。もちろんニクスを応援している。
 巻いていた包帯からは血が滲み、手にしている木剣はニクスの力の前では無力。
 フランは周りの人間に阻まれて、助けることもできない。これが、戦争中の他国に対する鬱憤だ。
 和也は本当はドルドの難民ではない。が、その事実を知るものはおらず誰も助けには来ない――と、思っていた。


「何をしておるか!!」


 その怒号とともにその場が静まり返る。
 その声の主はオストワル団長だ。オストワルが和也のもとに駆け寄ると周りにいた騎士たちは道を開ける。
 倒れている和也を抱きかかえ、普段の恵比須顔が憤然とした面持ちになった。


「貴様、二クスと言ったか?言ったはずだ。やりすぎるなと! お前がやっているのは騎士のやっていい行いではない!! 周りのやつらもだ!!」


 オストワルの激しい怒声に、二クス含め、周りの騎士たちも反省する。
 オストワルは和也を背負って救護室に向かった。






 ********************






「なんで助けたんだ?」


 和也はオストワルの治療を受けながら、先ほどの行動に質問する。
 和也の質問にオストワルは、フッと笑みを浮かべ答えた。


「君の立場は知っているが今は仲間で私の部下だ。私には君を守る義務がある。もちろん他の者もだ。君たちはお互いに競い合うライバルであり、共に助け合う戦友という関係になってほしい。私は心からそう思う」


 オストワル――この男は騎士の鏡だ。和也は心底そう思った。


 水の魔石で傷をふさいだ和也は、オストワルに言われて兵舎に戻った。






 ********************






 和也は部屋のベッドに寝転がる。


「なんで俺……こんなことしてんだろ……」


 今まで楽な道を選んできた和也。だが、この世界に来てからは違う。何を目的にしているのかもわからず、得られるのは痛みのみ。和也は自分を見失いつつあった。
 それから、肉体的な被害は受けなかったが、やはり和也に対する表情は変わらない。唯一話すのはフランのみ、それも部屋の中だけだ。そんな生活が一ヶ月続いた……






 ********************






「整列!!」


 オストワルの掛け声により、一斉に整列する。


「入団してから一ヶ月しか経過してないが、さっそく出番だ。我々第三騎士団の任務は物資の運搬だ。他の団と違って戦闘に参加するわけではないが、戦争である以上気を抜いてはならん!」 


 オストワルの団長らしい言葉に緊張感が漂う。


 初めての実践――これがすり減っていた和也の精神を一気に瓦解させることになる。


 

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