雑学部!!

白兎

海の雑学



「海だー」


「わーい!」


「ヒャッハー!」


 白い砂浜は太陽で火傷しそうなくらい熱い。そんな中でも一ノ瀬は海を指さして叫ぶ。言いたかったのか叫んだあとは満足げな表情。佐奈は浮輪を腰にして砂浜を駆け抜け、雪代はなぜかハイテンション。


「先生……元気だな」


「はぁ~暑い」


 霧崎は麦わら帽子で日差しを遮りながらも、この中で一番暑そうにしている。


「じゃあ早くパラソル立てますか。その間海の家でも行ってろよ」


 津樂はパラソルを肩に乗せ、ビーチサンダルをしていても砂浜の熱さを足に感じながら、パラソルとビーチチェア二つをセットし、片方に腰を掛ける。
 来たばかりでもう体力に限界が来ている津樂。そんな中、


「お待たせ~」


 一番に走っていった三人が水着姿でやって来た。一ノ瀬は若さを活かした赤いビキニ。佐奈は可愛らしい花柄のワンピース水着。雪代は黒のビキニでセクシーさを全開だ。


「おう、霧崎はそこで休んでる。後で呼んでやれ」


「もう、一言くらいないの?」


 津樂の対応に一ノ瀬は不満げな顔で詰め寄る。


「え、あ、おう、に、似合ってる」


 若干顔を赤くし視線を逸らしながら言うと、一ノ瀬はとても満足そうだ。
 そして、逸らした視線の先には、見知った顔があった。


「これはこれは、津樂達也。偶然だな」


 海パンに眼鏡の白髪の哲司 真也だ。


「なんでお前ここにいんの?」


「おいおい今は夏だぞ。海にいても不思議ではないだろう」


「いや、見た感じ連れはいなさそうだし……一人で来たのか?」


「それの何が悪い。フランスの作家、スタンダールは言った。“美しい海の景色は慰めになる”と」


「……そうか」


 突然海を遠い目で眺める彼に、津樂はそれ以上は聞かなかった。面倒臭そうだから。
 そんな中、一ノ瀬たち三人は海で遊んでいる。気が付けば霧崎は水着姿でビーチチェアにて寝転んでいる。


「お前いつからいたの?」


「さっきよ。影の中なら少しは涼しいわ」


 なぜここに来たのか疑問を覚えながら、津樂は迫る人影に注目。


「達也くんって、哲司君もいたんだ」


「一ノ瀬さん。美しいです」


 哲司は一ノ瀬の水着姿を褒めたが、一ノ瀬は軽くあしらい、


「津樂君は泳がないの?」


「俺はいいよ」


「そんなこと言わずにさ。ほら海が空を映して青いよ」


 海を指さして言う一ノ瀬に、津樂は手で顔を仰ぎながら、


「いや、海が青いのは光が吸収しきれて無いからだよ。波長の長い赤や黄色は吸収されて、残った光はプラトンなどに反射されて青く見えるんだよ」


「へ~でも、それ言っちゃロマンがないよね」


「お前は俺に何を期待してんだよ」


 後ろの方で若い男を品定めしている雪代を視界に映しながら、津樂は海の景色を楽しんだ。普通に泳げないことを隠して。

コメント

コメントを書く

「その他」の人気作品

書籍化作品