雑学部!!

白兎

かき氷の雑学

 夏休み手前。津樂たちは今日も部室にて特に何かをすることなく過ごしていた。
 そんなとき、


「こんにちはー霧崎さんいる?」


 突然の女生徒の声に、三人は反応する。眼鏡をかけたツインテールの少女。


「佐藤さん……何か用かしら?」


 どこかしらしんどそうにする霧崎に津樂は首を傾ける。


「なんか、やつれてないか?」


「そんなこと無いわよ。ただ……」


「ただ?」


 霧崎が言葉の続きを言おうとしたとき、


「そうそう用っていうのは夏休みの予定のことなんだけど、みんなで祭りに行こうって話あったじゃない? 当然霧崎さんも来ると思うんだけど、日程とか教えてくれる? 一応男子のみんなが霧崎さん来てほしいって言ってるから、なるべく霧崎さんを優先にしようと思うんだけど、あ、別にみんなも同意してるから気は使わなくていいから。あと、二学期の委員会、霧崎さん一学期図書委員だったけど、委員長の推薦出てるんだー。一応言っとこうと思って。あとそれから――」


「佐藤さん、話し出すと長いのよ」


「「あぁー……」」


 霧崎の言うことを津樂と一ノ瀬は延々と話している佐藤さんに苦笑いを浮かべながら納得する。


「話が長いとか酷いなぁ~そりゃ、よくそんなに喋れるよねとか言われるけど別にそれは話が長いわけじゃなくてただ急いで話してるだけなの。そこは私も気をつけないと思ってるけどなかなか話す速さって変えられないじゃない? だからこのことはもういいの。それより、メアド教えてもらえる? さっき言ってた夏休みのことなんだけど、いろいろ連絡着くと助かるし――」


「はぁ~」


「霧崎さんがつかれるのもちょっとわかる気が……」


「短さが売りのこの小説にとっては害でしかないからな」


「そこの人も酷いな~害っていうけど、私はただ夏休みが楽しみなだけなの。海、花火、金魚すくい、綿菓子、焼きそばとか――」


「確かに楽しみ~この時期のかき氷とか美味しいもん。特にイチゴ味」


 佐藤さんの会話を遮るように一ノ瀬が言う。話を切るという目的は果たしたのだが、気があったのか、二人はかき氷の味でしゃべりだした。そうして数十分後、霧崎が徐々に疲れているのを察した一ノ瀬は佐藤さんにお引き取り願った。
 そして、静けさを取り戻した雑学部。


「かき氷の味で盛り上がってたけど、あれってほとんど同じ味だぞ?」


「そうなの!?」


 過剰に一ノ瀬が反応した。


「例外もあるがイチゴとかレモンは着色料と香料だけでそれ以外の成分は全部同じなんだ。色と臭いで脳に錯覚を起こしているってわけ」


「そうなんだ~」


「それでも、私はあれを食べたときのキーンてくる感覚が楽しみでもあるから、味が一緒でも食べる!」


「それって正式名称あるんだぜ」


「名前あるんだ!?」


「アイスクリーム頭痛って言って、血流の増大による血管に炎症を起こしたからとか、喉の神経が刺激されて脳が勘違いするとかあるらしい」


「アイスクリームってまた単純だね」


「お前が言う? それより霧崎、祭りの方はどうすんの?」


「行かないわ」


 予想はしていたものの、すました顔で言う霧崎を津樂はむしろ尊敬していた。そんな中、一ノ瀬がしゅんとしていることに、津樂は予想される出来事からの疲労感が止まらなかった。


 

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