雑学部!!

白兎

白衣の雑学

「さ~二人のデートタイムも終わったところで、結果発表といきましょうか~!」


「誰お前?」


 当たり前のように進行している矢敷に津楽は疑問を浮かべる。
 しかし、矢敷は気にせずに続ける。


「さ~一ノ瀬さん、勝者の発表をどうぞ~!」


 矢敷が一ノ瀬に電源の入っていないマイクを向けると、一ノ瀬は困惑しながら、


「えっと……達也くん?」


「なんで疑問形?」


「ノォォオオオ!!!!」


 一ノ瀬の答え方に腑に落ちない津楽と、頭を抱えながら叫ぶ哲司に、霧崎はしんどそうな顔をする。
 雪代は腹を押さえて笑っている。


「では、一ノ瀬さん、決め手はどこだったんでしょうか?」


「え、えっと、私この部活が好きだから……あ、もちろん哲司くんが嫌ってわけじゃ……」


 一ノ瀬がとっさに弁解しようとすると、哲司はフッと笑い、


「ま、まぁ今回は負けを認めよう……ただし、諦めたわけではないからな。自分を磨いてまた挑戦するぞ津楽達也!」


「お前の何がそこまでしてるんだ……」


「愚問だな。僕は自らを鍛える努力は惜しまない。イギリスの著作家、ウィリアム・ヘイズリットは言った“もっとやればもっとできる”と。ではさらばだ!」


 白衣を優雅に広げながらその場を去った哲司に、他のメンバーは立ち尽くしている。


「何だったんだろうね……」


「あいつの考えはよくわからん」


「じゃあ、私もここで失礼しまーす」


 一仕事終えたように矢敷も走っていった。


「哲司さんなんか……楽しい人だね」


「どこが? まぁ、文系なのに白衣羽織ってるしな」


「見た感じ理系だよな」


 雪代もその辺は思っていたようだ。


「もう見た目だけは理系をと売り越して医者だもんね」


「彼の家は散髪屋だから、不思議ではないけど……」


 霧崎の言葉に一ノ瀬は頭の上に疑問符を浮かべる。
 その疑問を払うように津楽は答える。


「中世のヨーロッパでは、外科手術は理髪師がやってたんだ」


「散髪屋さんが!?」


「当時の考えでは、体調が悪い時、静脈から悪い血を抜いて健康を維持する考えだったんだ。そこで、剃刀を持っている理髪師が担当することになったらしい。それに、散髪屋のサインポール。あれは、青が静脈、赤が血液、白が包帯を表していて、外科手術もしてるって意味なんだ」


「その時代の散髪屋ってすごかったんだね」


「彼の場合は、なんかかっこいいからって理由だけでしょうけど」


「へ、へぇ……」


 何故、霧崎は哲司に関してあたりが強いの? そう思う一ノ瀬だった。
 

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