雑学部!!

白兎

天気予報の雑学

「さ~て、意外に哲司さんが大健闘! 津楽さんはどう出るのかー!」




「きょ、今日はよろしくお願いします」


「なんで他人行儀?」


 一ノ瀬は津楽の前に来るなり、いきなり硬い挨拶を始めた。
 津楽は普段とは違いすぎる態度に居心地を悪そうにし、一ノ瀬は気を取り直すように、両手を振る。


「ご、ごめん。なんか緊張するね……」


「この間遊びに行ったじゃねぇか」


「この間は霧崎さんもいたじゃん。バカ」


 何を怒ってるんだと津楽は心の中で思った。


「それより、どこに行くの?」


「え?特に決めてないけど?」


 しっかりと準備をしていた哲司と比べて、津楽は全くその気がないように見える。




「お~と?まさかのノープラン!やる気があるのでしょうか?」


「無いわよ」


「はい?」


 実況に熱を入れている矢敷に霧崎は冷たい声で言う。
 それに続くように雪代も口を開いた。


「あいつからやる気を出すのは骨が折れる。でなきゃ私は苦労しない」


「で、ですが、この勝負に負けてしまっては一ノ瀬さんは文芸部に……」




 矢敷は困惑しながら津楽と一ノ瀬の方を見る。
 変わらず、どこかに入るわけでもなく隣り合って歩き回っているだけだ。




「ねぇ……もしかして、機嫌悪い?」


「いや、いたって普通だけど……」


 ただただ何も言わずいる津楽に一ノ瀬は不安げな顔を向ける。


「別に……結果を決めんのはお前だろ?俺たちがどうこうすることじゃない。自分の偽ってまで選んでもらいたくねぇよ」


「それは――」


 一ノ瀬が何かを言おうとしたとき、いきなりぽつぽつと雨が降ってきた。
 津楽たちは近くの屋根で雨宿りをする。


「いきなりだね。天気予報では降水確率0%だったのに。全然あてになんない」


「まぁ、0%は5%未満ていう意味だから絶対に降らないわけではないんだけど、それでも運がわるいよな」


「……」


「……」


 二人の会話が続かない。 
 一ノ瀬は何か話題をと頭をフル回転させた。


「……そうだ!何か雨に関する無駄知識ってないの?」


「無駄知識……そうですか」


 津楽は少し落ち込んでしまい、一ノ瀬は慌てて弁解する。


「はぁ……んじゃ一つ」


 津楽は人差し指を立て、


「天気予報を新聞に初めて載せたのは福沢諭吉って知ってたか?」


「そうなんだ!?」


「時事新報っていう新聞で、晴や雨を表したイラストを使って、お天気マークの元祖を作ったんだ」


「へぇ~さすが一万円の人だね」




「なんか……パッとしないデートね」


「二人らしいって言ったら二人らしいけど」


「そうだな、私も変にお洒落なところにいるあいつらよりも今の方が見ていて面白い」


 はたから見ていた三人もそれぞれ思うところがあるようだが、これで、津楽のデートタイムは終了した。
 はたして、一ノ瀬はどっちを選ぶのか。

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