雑学部!!

白兎

自転の雑学

「やあ諸君!元気にしてるかな!」


 静寂に包まれた部室に力強くドアを開け、朗々たる声が響き渡る。その人物を確認した一ノ瀬は意外そうな顔をして


「雪代先生!?どうしたんですか?」


 雪代ゆきしろ 明美あけみ 28歳。社会科担当にして雑学部の顧問だ。
 津楽は一ノ瀬に雪代が顧問だと伝えるとそれを見ていた雪代は残念そうな顔をして


「な~んだ。まだ伝えてなかったのか。そういうことは最初に伝えるべきことだろ。ま、いいや。それより仕事だ。明日までにこの内容の書類を作らないといけない。やれ」


 命令口調で内容の書かれたメモ出す雪代に津楽はため息をついて


「それって先生がやらないといけないことですよね。手伝うならともかく、なんで丸投げ?それって先生としてどうなんですか?」


「いや~今やろう今やろうと思って気づいたら提出が明日まで来ててね。絶対に作らないといけない書類だから、先生としては生徒を使ってても提出したいわけだよ」


 先生らしからぬ発言をする雪代を霧崎は駄々をこねる子供を見るような目を向け


「確か、先生はこの間、『これで最後だからよろしく』と言って私たちに仕事を押し付けませんでした?」


「そんなこと言ってませーん。」


 痛いところを突かれた雪代は霧崎から目をそらし過去の発言をなかったことにしようとするが、津楽はこれはチャンスとばかりに霧崎の指摘に乗っかかる


「確かにそんなこと言ってたな」


「いつそんなこと言った?何月何日何時何分何十秒地球が何回まわった日?」


「子供かあんた!」


 わがままなことを言う雪代に津楽は思わず敬語を忘れる。津楽たちの会話を聞いていた一ノ瀬は懐かしそうな顔をして


「小学校の時にそれ流行ったなー実際のところ何回地球ってまわってるのかな?」


 一ノ瀬の疑問に霧崎が答える。


「地球が誕生したのは四十六億年前とされてるわ」


 霧崎の答えをもとに電卓で計算を始める一ノ瀬。すると計算が終わったのか勢いよく顔を上げ


「じゃあ、ざっと一兆六千億回だね」


 一ノ瀬の答えを津楽が訂正するように話す。


「そうとも言えねぇよ。昔の自転速度は遅いからな」


「そうなの!?」


 津楽の発言に一ノ瀬は驚嘆する。


「地球誕生したときは一日が四、六時間だったらしい。なんでも月の重力で海が盛り上がってその盛り上がった海が自転で陸にぶつかり、エネルギーが失われて自転が遅くなってるらしい。だから、その状況を考慮すると二〇一七年一月一日で、大体四兆五千五百億回となるらしい」


 長々とと語る津楽に一ノ瀬は難しそうな顔をし


「うん。まったく分からない!!」


 理解できなかった一ノ瀬に津楽は残念そうな表情を浮かべる。
 完全に蚊帳の外にされた雪代は焦りの表情を浮かべ


「先生も真面目にするから早く手伝って!!」


 この雑務は何とか間に合い、一難去ってほっとした雪代であった。







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