生意気な義弟ができました。

鈴木ソラ

生意気な義弟ができました。42話




「ね!親、睦、会!しようよ!」


とある日、いつもの喫茶店で意気揚々とナオさんが言った。

「親睦会?…というかナオさん、お昼休憩いつも来るけど暇なんすか」

誠は、カウンターで使用済みのティーカップを洗いながら真顔で淡白にそう言った。ナオさんはそれを聞いて可愛らしく頬を膨らめる。

「もぉー、片想い相手のバイト先に健気に通い詰めてるんだから、ちょっとは褒めてよね」
「はいはい、偉いですね」

誠は遊ぶようにテキトーにそう言って受け流す。それでもナオさんは満足したのか、嬉しそうにコーヒーカップに口をつけた。その横で、マスターが呆れ顔で誠を見ていた。

「ね、真澄くんと零央くんもしたいよね?親睦会!」

ナオさんは、話題を戻すように隣に座る俺と零央に話を振った。

「親睦会、楽しそうですね。俺もやりたいな、いろんな話したいし」

俺がそう答えると、零央も頷く。そうすれば、早速ナオさんは話を進める。

「じゃあさ、みんな人集めて恵太の家でやろうよ!ね?」
「ナオ、なんで僕の家なの…まぁいいけど、どれくらい人集める気?」

恵太さんが問うと、ナオさんはうーんと考え始めた。

「みんなパートナーいて羨ましいなぁ、俺だけ仲間はずれだよ?だからさ、誰がフリーの子呼んでよー」

子供が駄々をこねるように、口を尖らせて言う。

「フリーって、ナオさん誠さんが好きなんじゃないんですか」

零央が笑いながら言うと、ナオさんはまたもや頬を膨らめた。

「そうだけど!でもみんながイチャイチャしてる中俺だけひとりって寂しいもん、お話し相手くらい欲しいなぁ」
「…あ、じゃあ、麻海さんとか…?」

俺は思いつきでそんなことを言ってみる。すると、左隣の零央から痛い視線が飛んできて、名前を出してすぐ少し後悔した。

「まみさん?え、だれだれ?」
「おにーさん、あの人呼ぶ気?」

ナオさんと零央に挟まれ、俺はなんと言っていいか混乱する。そこに誠が、口を挟んだ。

「あーだめ、麻海さんたぶんフリーじゃないぜ」
「……えっ?そうなの誠!?」

俺が食い気味で聞くと、誠は真面目にうなづいた。そういえばだいぶ前に、イイ感じの人がいそうだと誠から聞いた覚えがある。

「そうみたいだね、まだ恋人同士って感じじゃなかったけど…時間の問題じゃないかな」
「えっ、マスターも会ったんですか?」

マスターは、偶然ね、と言って頷く。そうすると、誠が洗い終えたカップを棚に片付けてからこちらを見た。

「まぁ、麻海くんとその子を呼ぶのはアリなんじゃないかな。どう?零央くん的には」

マスターは零央に話を投げかけた。

「あんま気は乗らないけど、おにーさんに危害がないならなんでもいいです」
「おまえなぁ…麻海さんをなんだと思ってるんだよ…」

俺が呆れて言うと、生意気な顔で、べ、と舌を出した。未だに麻海さんとのことを根に持っているようだ。

「あ、じゃあ誠、成樹くんたちも呼べよ。いるんだろ?その…カレシ?」

前にそういう感じの相手が、成樹くんにもいると聞いた。

「んー、いいけど、来るかなアイツ」
「え〜あっちもこっちも気になるなぁ。でもそれじゃ結局俺がひとりぼっちじゃん、どうにかしてよぉ」

ナオさんが、ワクワクしたように言う反面、問題が解決してないというように口を尖らせる。けれど人を集めるにも、俺たちの関係を知っている人じゃないとどうもやりづらいだろう。

そこで俺も一緒になって唸る。

「……あっ、いるよ、俺らの関係知っててフリーの子!ね、零央?」

俺が閃いて零央に投げかけると、察したのか眉間に皺を寄せた。

「もしかして、相良誘う気?」
「いいだろ?別に相良くんそんな悪い奴じゃないって、性格はちょっとアレだけど…」

俺がそう言っても、零央は納得がいかないというように文句ありげな顔でこちらをじっと見つめる。

「え〜さがらくんって?」
「えっと、零央の友達です。ちょっといろいろあって、知り合ったっていうか…」
「あんな奴友達でもなんでもない。ってかだったらあっちにすれば?ほら、早見って人、気は乗らないけど」

零央は投げやりにその名前を出した。心做しか最後を強調するように零央は言う。俺はそれを聞いて嫌な思い出ばかりが蘇る。

「えぇ…早見くんはちょっと…。それに、誘ったって来ないよきっと」
「なになに、次ははやみくん?ならどっちも呼んじゃおうよ!すごい、人いっぱい集まりそう〜!」

ナオさんは全員呼ぶつもりか、どんどん話を進めていく。零央も俺も、その自由さに反論できず押し黙る。

「じゃあ日程決めたらまた連絡するね!みんなそれぞれちゃんと誘っておいてね?じゃあ、俺は仕事戻るから、またね〜」

ナオさんは、時計を見るなり勝手にそう言って店を出て行ってしまった。俺らはそれを呆然と見つめていた。

「なんか決まっちゃったけど、結局みんな誘うってことでいいの?」

マスターが苦笑いでそう言う。

「……まぁ…仕方ないですね、ナオさん楽しにしてるだろうし」

俺がそう言うと、零央も仕方ないと言わんばかりにうなづいた。誠は成樹くんと麻海さんたちを誘ってくれるらしい。それでから、俺は早見くんを、零央は相良くんをそれぞれ誘ってみることに決まった。

破天荒なナオさんの提案で全部決まってしまったけど、それはそれで、俺も少し楽しみな気がした。



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