生意気な義弟ができました。

鈴木ソラ

生意気な義弟ができました。34話



「っ……」


キスされる、と分かったものの、抵抗する気にもなれなくて俺はぎゅっと目を瞑って大人しくそれを待った。

しかし待っていたその感触が訪れる前に、突然誰かに後ろへグイッと肩を引っ張られた。俺の体は呆気なく相良くんから離れて、後ろの人物に抱きとめられる。

「……あーぁ、もうちょっとだったんだけどな」

少し自嘲気味に愚痴を垂らして笑う相良くんの声が、後ろから聞こえた。歪む視界の中で俺を抱きとめた人物の顔を見上げると、今一番会いたくなくて、それでもずっと俺の頭の中を支配している人がいた。

「っ、……零央ぉ……っ」

俺がだらしなく泣いてぎゅっと抱きつくと、零央はそんな俺の頭を撫でてくれた。それにずっと張りつめていた緊張が一気に解かれるのがわかった。

零央の匂いがする。すごく落ち着く匂いだ。

「…ちょっと、何泣かせてんの?」

恐らく相良くんへ向けられただろう、殺気に溢れた声が俺の頭の上を通る。

「人聞き悪いな、まぁ泣かせたのは否定しないけど…お兄さんが自分から俺のとこに来たんだよ?誘拐でもあるまいし」
「どうせおまえが変な話でもふっかけたんだろ、ホント性格悪い」

零央は不機嫌そうに相良くんを睨んだ。しかしよく見ると、ここまで走ってきたのか息を切らしているようで、顔も赤くて体温は高い。

「……れ、零央、熱出てるのにこんなとこまで、」
「おにーさんが戻って来ないから!電話も出ないし、すげー探した」
「う……ご、ごめん…」

本当に悪いことをしたと、今更だがすごく申し訳なくなった。

「いいんですか?お兄さん、自分の言いたいこと言わなくて。何の理由もなしに俺の誘いに乗ったわけじゃないでしょう」

相良くんが真剣そうな顔でじっとこちらを見つめた。

…………そうだ、ちゃんと言わなきゃ…。

俺は零央に向き直って深呼吸をした。

「……ごめん、零央。…でも、俺の意思でここに来たし…相良くんを責めないで。…俺たぶん、自信が無いんだ…どう考えたって俺と零央じゃ釣り合ってないし、零央には俺の気持ちなんて分かってもらえないって…なんか、辛くなって……ほんとにごめん」

また泣きそうになると、零央がその前に口を開いた。

「だったら俺も言うことがある。まず、おにーさんがいくら相良を庇ったって俺はこいつを絶対許さない。どう考えたってこいつが悪い。おにーさんまだ勘違いしてるかもしれないけど、相良の狙いは俺じゃなくておにーさんの方、俺はただそれに利用されただけ」

零央はそう言ってまた相良くんを睨みつけた。

「えっ、えぇっ?」
「零央を好きなフリでもしないとお兄さん意識してくれないでしょう、だから手を打ったんです」

相良くんはいつもの笑顔でにこりと笑った。

……じ、じゃあ、零央にキスしたのも、全部俺に見せつけるためにわざと……!?

まんまと相良くんの思惑通りに俺は騙されていたというのか。

「…あともうひとつ」

零央が真剣な顔で俺を見つめた。

「釣り合うとか釣り合わないとか、考えなくていい。俺はおにーさんがいいからこうして追いかけにまで来てる、分かった?そんなに不安なら、何回だって愛してるって言うけど?」
「っ、も、もういい、分かったっ」

相良くんの前だというのに、この調子だとそのまま全部言ってしまいそうな零央を俺は止めた。恥ずかしくて体温がかあっと上がる。

「…恋のキューピットなんてやるはずじゃなかったんだけどなぁ、っていうかどうやって俺らのこと見つけたわけ?」

少し呆れたように、相良くんは零央に問いた。

「SNS、お前写真上げてたじゃん」
「あー…意外、俺のSNSなんか見てるんだ?」
「いつもは見てないし、居場所特定するためにわざわざ探したんだよ」
「怖い怖い、次は気をつけないとね」
「は?次なんか無い」

相変わらず不機嫌なままの零央と、相変わらず飄々とした態度の相良くんが言い合うのを見てると、二人が本当に仲が悪いことが分かる。……いや、もしかしたら仲が良いともいうのかも、なんて。そんなこと言ったら怒られそうだ。

「もういい、おにーさん帰るよ。早くベッドに入りたい」
「そ、そうだ、早く家に帰って安静にしなきゃ…」

一通り言い争った零央は、気が済んだかのように相良くんに背を向けて歩き出した。俺はそれに釣られて追いかけるが、途中で相良くんを振り返った。

「さ、相良くん!あの、ありがとう」

俺がそう言うと、相良くんはポカンとして首を傾げた。

「俺たぶん、相良くんがいなきゃ、気持ち言えなかったと思うから!…なんていうか、感謝してる」

俺の言いたいことが伝わったのか、相良くんは困ったように笑った。

「あはは、庇ったり感謝したり、ほんとお兄さんってお人好しですね」

なんと言われようと、感謝しているのは本当だ。

「ちょっとおにーさん、早く帰るよ」
「はいはい。…じゃあね、相良くん」

俺がそう言えば、最後にギロリと零央は相良くんを睨みつけた。相良くんは苦笑いで軽く手を振り返してくれる。

「あいつ、一発殴っとけばよかった」

相良くんと別れたあとに、零央はそう愚痴を零した。




家に帰るなり、零央はドサッと俺をベッドの上に押し倒した。

「ちょ、すと、ストップ!」

俺に覆いかぶさる零央の肩を、俺は必死に押して抵抗した。すると、零央は顔を顰めてこちらを見る。

「…なに?」
「な、なにって、今日はダメだ…!体調悪いんだから、」
「へーきだって、ってか…そろそろ限界、アレだって先延ばしにされてるんだけど?」
「…あ、アレ……?」

零央の言ってる意味がよく分からなくて、俺は首を傾げた。

ご褒美・・・、くれるって言ったでしょ」

俺はそう言われてやっと理解した。そういえば、勉強を終えたらご褒美をくれと言われていたのだった。なんだかんだ、零央が熱出したからもうそれ所ではなかった。

「…ね?まさか忘れたとか言わないよね」
「っ…………わ、わかったよ!…で、でも、零央は何もしないで…あと、最後までは、しない…」
「え、最後までしな、」
「いいからそこ座ってろっ!」

何か文句を言おうとする零央を押し退けて、とりあえずベッドの上に座らせる。それでから俺は、壁にもたれかかった零央の足の間におずおずと歩み寄る。ベッドの軋む音がして、なんだかこれじゃ俺が零央を襲ってるみたいだと少し思ってしまった。零央の顔を恐る恐る見つめると、少し驚いたような顔でこちらを見ていた。

「え、おにーさんもしかして…」
「……く、口で……するから…今日はそれで終わり…」

自分からこんなこと、もちろんしたことはない。自分が言っておいて、心臓はバクバクだった。

「……なにそれ…すっげー興奮する」

熱のせいか、零央の火照った視線がこちらに降ってきて一層俺の心臓は止まりそうになる。いつもの勝気な笑みでこちらを見て、すごく期待しているようだった。何も言わないが、早く、と急かされているような気がして、俺は恐る恐る零央のズボンのベルトに手をかけた。零央のそれはズボン越しでも存在を主張するくらいに張り詰めていて、俺は零央に求められているんだと、少し嬉しくなった。

「っ、」

いざそれが目の前に露わになると、どうしていいか分からなかった。いや、同じ男だからどうすればいいかなんて分かるのだけど、こんなのもちろん初めてで、本当に俺にできるのか不安になる。

…………こ、こんなおっきいの、俺の中に…………?……こんなのが抜き差しされてるなんて、考えられない…。

「おにーさん、なに俺の見て一人で興奮してんの」
「っ、ち、ちがっ…」
「はーやーく、…限界なんだってば」

そう言われ、俺は再び目の前のそれに視線を落とした。

………………咥えれば、いいんだよな……。

俺は意を決して、唇を開けてそれを口に含んだ。

「ん、ぅ………」

お世辞にもおいしいとは言えないけれど、不思議と零央のものだと思えば抵抗は薄れた。口の中で、零央のがピクリと反応する。俺は口の中の異物感にどうしたらいいか分からず、少し戸惑う。

っ……こんなの、どうしろって言うんだ…。

すると零央が、俺の少し長めな前髪を指先で避けてこちらをじっと見つめた。

「………やば、結構クる…」
「んっ、ふ…」

突然、口の中のそれがサイズを増して、半ば泣きそうになりながら舌を動かした。けれど素直に反応してくれているようで、零央は俺が舌を動かすたびに気持ちよさそうに眉をひそめた。

「ん………そ、上手じゃん…誰かに教えてもらった?」

零央が意地悪な笑みを浮かべてそんなことを言ってくるので、俺はムカついて言い返そうとしたが、こんな状況で言い返すことなどできなかった。

「……は…も、ちょっとムリ……ごめん、おにーさん…」

苦しそうにして零央が顔をしかめたと思えば、零央は俺の後頭部に手を当ててから、腰を揺らし始めた。

「んっ!?…ぁっ、ふ…っ」

喉の奥までゴツゴツと突かれて、俺はどうすることもできずに、ただ歯を立てないようにぎゅっと目を瞑った。それでも、涙で滲んだ視界の端でふいに、零央の気持ちよさそうに眉をひそめる顔が見えて、もうなんでもよくなった。

「ん、ぁっ、」
「っ、も……イきそ…」

そう言って、寸前に零央は俺の口を離して達した。俺は訳が分からないまま顔を精液まみれにされて、少し泣きそうだった。いや、もうほとんど泣いていた。

「はぁ……っ、やば…ごめん、顔射…………って、おにーさんえっろ…」

謝ったかと思えば、全く反省の色も見えないうちにそんなことを言い出す。零央は俺の顔の白濁を指で拭いながら、まるで頭に焼きつけるかのようにじっと隅から隅まで見つめてきた。

「……ば、バカ……見るなっ…」

こんなだらしない顔、見られるのは恥ずかしすぎる、誰のせいだと思ってる。

というか正直、それどころでは無い。

「っ……」
「はは、俺の咥えて興奮しちゃった?どうするの、これでも最後までしないつもり?」

零央の言う通り、俺の下半身はもう完全に興奮しきっていた。そんな俺を煽るようにわざと挑発的な笑みを浮かべる。

「…は、俺もこれじゃ足りないんだけど?」

今出したばかりだというのにまた再び熱を帯び勃ち上がったそれに、俺はビクッと肩を揺らす。いつの間にか俺の後孔も、まるで期待するようにムズムズと落ち着かなくなってきた。

「っ……は、零央のバカぁ…」

……そんなこと言われて…こんなの、我慢できるわけ、ないじゃないか。

俺はついに耐えられなくなって、自ら零央の方へずいっと近づいた。跨ると、俺が零央を見下ろす形になって少し新鮮な優越感を覚えた。下半身が苦しくってズボンも下着も全部脱ぎ捨てる。

「……れ、零央は、何もしちゃダメだからな…俺が、やる…」

少しでも体調の悪い零央を気遣って、俺は自分で後孔に指を押し入れた。この前と比べてだいぶ慣れたその感覚に、俺は声を我慢しながら解していく。

早く、早く零央が欲しい、早く。

そんな焦燥が俺をどんどん駆り立てていく。

「…ん、は、ぁ…」
「すっげーいい眺め…なんつー顔してんの、エロすぎ」

俺を下から撫で回すように見つめて、零央は短く息を吐いた。指が三本入るようになったところで、俺は指を引き抜いて零央の腹に手をついた。

「…なんか、おにーさん今日すげー積極的、…発情期の犬みたい」

零央が意地悪な笑みでこちらを見る。けれど俺にはそんなものに耳を貸す余裕なんてない。

「……れ、お……今日は、ごめん…たくさん、迷惑かけて…」
「…え?別に、戻って来てくれたんならなんでもいい」
「………俺…やっぱ、零央じゃなきゃダメだから、お願い…いっぱい言って、好きだって、愛してるって…」

零央からの愛が、欲しい。もう窒息するくらいに溺れてしまいたい。こんなの、零央と出会う前の俺は一ミリも知らなかった。

零央は俺の頭を優しく撫でると、愛おしそうに目を細めて微笑んだ。そんな少しの仕草に俺の心臓はぎゅっと締め付けられる。

「好き、おにーさんが好き」
「っ、名前が、いい…おにーさん・・・・・じゃなくて…」

俺がそう強請ると、零央は少し驚いたようにしてから、それでもまた優しく笑ってくれた。

「絶対誰にも渡さない、愛してる、真澄」

そんなお伽噺の王子様なんかが言いそうなほどキザなセリフでも、俺の心臓は掴まれたようにぎゅうっと苦しくなって、泣きそうになった。初めて零央に呼ばれた名前が、ずっと頭の中でグルグルしている。

半ば泣きそうになりながらも、俺はぐっと堪えて後ろに熱くなった零央のそれをあてがった。零央が少し息を飲むのが聞こえた。


俺はたぶん、今誰よりも幸せだ。




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コメント

  • あんこ、

    (っ'ヮ'c)<ウッヒョォォォォオ
    最高かよ!

    2
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