生意気な義弟ができました。

鈴木ソラ

生意気な義弟ができました。0話


真澄ますみひまなら荷物運び手伝ってちょうだーい」
「んー今いくー」

俺、鴨野かもの 真澄ますみ 21歳は、大学3年生の夏に義弟ができるらしい。

開いていた夏休みの提出課題を閉じて、俺は部屋を出て下の階へ降りた。冷房の効いた自分の部屋と違って、家の廊下や玄関は蒸し暑くジリジリと夏を感じさせた。少し憂鬱な思いで玄関先の母親のもとまで行く。

何せ、幼い頃に父が亡くなってからはずっと母子家庭で母さんと二人暮らしだったのだ。一人っ子の俺には到底、血の繋がってない義弟の扱い方なんてわからない。詰まるところ、不安しかないのだ。

「母さん、荷物どこ」
「あ、たくみさん真澄が降りてきたわよ!」

どこか上機嫌な明るい声色で話す母さんは、俺の質問など無視して玄関の外へ視線をやった。そうすると、外から声がして見覚えのある人が重そうな荷物を持って顔を出す。

「あ、真澄くん久しぶりだね!これからよろしくね」
「どうも。巧さん荷物運ぶの手伝いますよ」

朗らかな笑顔で笑ってくれるこの男の人は、母さんの再婚相手、俺の新しい義父さんになる人だ。何度か会ったこともあって、俺にも良くしてくれるすごくいい人だ。

「荷物ね、手伝って欲しいんだけど。あぁ、紹介するよ」

巧さんは何か思い出したみたいにして、外の方へ手招きした。俺はなんの事だか分からずにポカンと口を開ける。

「ほら零央れお、こっち来て」

そう言ってすぐに玄関へ顔を出したのは、見覚えのない人物だった。すると巧さんがニコッと笑った。

「俺の息子、零央。手のかかる義弟かもしれないけどよろしくな」

話には何度か聞いていたけど、実際に顔を合わせるのは初めてで、俺は思わずマヌケな顔をして立ち尽くしてしまう。
明るい髪色に、自分とは圧倒的な差を感じるおしゃれな服。背丈は俺と同じくらいか、ギリギリ俺の方が高いくらいだろうか。
思わずじっと見つめてしまっていると目が合って、父親と良く似た笑顔でニコリと笑われた。

「こんにちは、零央って言います」
「…あ、はじめまして、どうも、えっ…と、真澄って言います」

歳下だということは分かりつつも、明らかなそのビジュアルの差に圧倒されて敬語になる。どこか含みのある顔で微笑まれ、自分の不甲斐なさに少し恥ずかしくなってしまった。

……たしか高校3年生だよな…??顔も服のセンスも良くてすげえモテそうな奴…。高校時代クラスじゃ隅っこの方で大人しくしてた地味な俺とは正反対で、いつもクラスの中心にいるような俺の苦手な奴だ…。

……これが俺の、義弟……。

明らかに腑に落ちない事実に戸惑い、俺はこれからの生活に大きな不安を抱いた。

不安しかねえ。


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コメント

  • きつね

    すごく続きが気になります!
    頑張ってください!

    8
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