桜の花道

クロム ジェル

お出かけ前

  朝ご飯を食べてラジオ体操で少し汗をかいたのでシャワーを浴びることにした。
「10時に第三公園だったよねぇ」
第三公園は昨日アイスを食べた場所で、小学校の横にある。
今は布瀬町の公園になってしまったが、もともとは私の住んでいる町内にあった公園で信号を渡らずに行ける公園だから良くそこで遊んでいた懐かしい場所の一つで雪ちゃんと待ち合わせる時は大概そこで待ち合わせる場所。
本当は家の前の遊歩道のベンチが一番楽に待ち合わせる事が出来る場所で私の家と雪ちゃんの住んでいるマンションの中間地点に当たる。
要するに私と雪ちゃんは遊歩道を挟んでお向かいさんという事になるが、そこにしない理由は幼稚園の頃、私がふざけてデートの待ち合わせしようと言い第三公園を待ち合わせ場所にしたのがきっかけで、今もその名残と言うかなんと言うか、2人だけの思い出としてずっと続く待ち合わせ場所なのである。


 そんな事を考えているうちに洗い終わり脱衣所で身体を拭きバスタオルを巻いて自分の部屋に戻る。
「服は何を着ようかな。」
ラジオ体操で着ていった服ではなく違うのを着たいし、今の服はなんか恥ずかしい…
うーん……あっ!そうだ!
私は思い立ったら即行動していた。
まず私のタンスにある白いワンピースを取って、着てからお兄ちゃんのタンスから黒い長袖ワイシャツを取り出して着る。
そこから私のジーパン用のベルトをワイシャツの上からおヘソの少し上あたりで締めてワイシャツの下から二つ目のボタンがベルトの下の位置に来るまで上げて、上から第4ボタンまで開けて胸元を開く。
あとは袖の部分を肘の上あたりでボタンを締めると出来上がり!なかなかいい感じになった!
あとは行く用意をするだけだけど財布の中にお金があったかわからないんだよねぇ…
まぁ、無かったらお母さんにくれるか聞いてみよう。


………5000円………
子供にしたら多い金額だけど、精神年齢21歳からすると心許ない金額だよね…


「お母さん、今日雪ちゃんと買い物行くって言ったじゃん?洋服を買いたいんだけど…心許ない金額で…その…少し…欲しい…かな?なんて…思ったり…思わなかっり…」
なぜ、おでこ触るし…熱ないからね?
「どうしたの?頭ぶつけたん?」
いやいや、オシャレは基本でしょ…
「ははぁ〜ん、なるほど、なるほど!」
何がなるほどなんだ、なにが!!
「お母さんに任せなさい!」
なんか勘違いしてるよね…
「今度連れて着なさいね!二万円でいい?お父さんには内緒よ?」
「いやいや、小3になに求めてんのよ!そんなんじゃないからね!お金はもらうけど!今持ってる服じゃなんか幼いから買うんだから!!」
はいはいと言いながらお母さんは笑っていたけれど、私はなんか複雑な心境になった…
まぁ、何はともあれ洋服の代金が増えたから喜ぶ事にしよう!うん!それがいいよね!




  時刻は9時40分家を出て第三公園へむかった。
公園に着くと入り口に雪ちゃんの自転車が止まっていた。
雪ちゃんは遊具の上に座り空を見上げていた。
その姿に魅入られるように、差し向けられたかのように雪ちゃんの髪を風が靡かせる。
とても綺麗だった。
まるで桜が舞っている春の一コマのように魅せられる場面だった。
雪ちゃんの黒い髪と太陽の反射光で光沢のある黒い真珠のような輝きを放つ髪に私のとは違うフリルのついたワンピース、手にはさっきまで被っていたのだろうピンクのリボンがついた麦わら帽子が握られていた。
「和葉ー!ヤッホー!!!」
無邪気に手を振る彼女はいつもの雪ちゃんで、昔の雪ちゃんのままだった。
あの黄昏ていた感じの雪ちゃんは大学生になった時の美しい雪ちゃんに似ていて、この時からこんな一面があったんだと思い笑顔になる。
「雪ちゃーん!!行こ!」
「うん!!」
こうして2人は駅の方面へ自転車を漕いで向かっていった。

コメント

コメントを書く

「恋愛」の人気作品

書籍化作品