異世界で神から最強の力を手に入れたはずがその力が最弱だった件について

ノベルバユーザー236490

裏切り

「おい、リアまだかよー、もう3日近くかかっているぞ」


俺たちは途中に落ちていた木の棒で杖代わりにしたながら歩いている。
リアと出会った時から3日は経っているはずだがまだ着く気配すら感じない。
途中にゴブリンやイノシシやスライムなどが出てきたが、俺の出番は来ず、リアが短剣でなぎ払っていった。
俺の力がどれほどか試したかったが。
リアの力は申し分なく強い、これもティシフォネに鍛えられたからだろうか。

だが、スライムにはリアは非常に弱かった。粘膜を撒き散らされ、服がはだけてしまった時には俺のことを睨んでいた気がする。その時リアは俺に「こやつは絶対に私が倒しますゆえに竜二は手を出さないで欲しいです」
と言われ、その姿ゆえに俺は何も言い返せなかった。
その後も触手がリアを襲いあられもない姿を見せられてしまった。なんとかして、リアは全裸になりながらも得意の短剣を使い倒していった。あの時は、その、ごちそうさまでした!

だからリアは今、俺が着ていたローブを後ろに羽織っているという状態だ。少しでも風が吹いたらなにもかもが見えてしまいそうだ。


今は森の中の小道を進んでいる。草茂っていて、蒸し暑い。ジャングルのような自然溢れる森の姿に俺は見惚れてしまいそうだ。


「後、6時間もすれば着きますので、頑張って下さい」


街へ行く途中の森で野宿をし、ご飯はイノシシの肉を火で焼いて、食べて過ごした。ところどころ川も見つけたので喉は乾いていない。


リアがほとんど食べ物や火を焚くまでやってくれたので俺の使えなさがひしひしと伝わり、胸が痛む。


俺はリアの言葉を聞いて気が遠くなる。
日中はほとんど歩きっぱなしだったので疲労が限界に来ていた。


「まだそんなにあるのか、リアは平気か?」


先頭を歩いてくれているリアに問う。


「私は元気ですぞぉーー」


なんか元気がなさそうだ。
無理して取り繕わなくても大丈夫なのに。


リアとは歩いている最中に色々話した、
世間話やたわいもない話、面白いエピソードなど話題が尽きなかった。


「無理するのは良くないぞ、少しそこの日陰で休もうぜ、俺も休みたいし」


俺の見てる限り外見では元気を装っているがリアには疲労がたまっているように見える。


俺は少しであるが、人1人が寝っ転がれるのに十分な空間に指を指した。
その空間は周りが木に囲われており、草も尖っておらず芝生のような感じだ。


「竜二も休むとあらば、私もお言葉に甘えて休みます」


俺たちは木に囲まれた空間に行き、寝っ転がる事にした。
地面の感触も申し分なく、木の葉っぱの間から僅かに見える空も綺麗だ。
気温も気持ちよく、ポカポカしてこのまま寝てしまいそうだ。
リアもとても気持ちよさそうだ。


このまま寝て...寝て...瞼が下がって、リアの吐息も聞こえてくる、もう寝たのだろうか。俺もそのまま眠りに落ちた。


3日ぶりに深い眠りについた。


今までは片方は寝て、片方は見張りを繰り返して来てまともには寝付けなかった。だからかすごく気持ちよく寝てしまった。





「ドォン、ドォン、ドォン」


と地響きのような大きな音が耳に響く。
その音がだんだん近くなり、すぐさま起き上がり警戒する。
リアも俺が起きた後すぐに起き上がり、警戒する。


「リア今起きたか、この音は何か分かるか?」


「寝てしまい、すみません。私にもこれほど大きい地響きは経験したことがありません、ですがこの地響きは危険です」


「お互い様だ、だったら今度こそ俺の出番だな、リアは後ろに下がっていて見守っていてくれ」


ドォンドォンドォンドォンと地響きが早くなり、ついに姿を現した。


「ですが!その...竜二には、、、、ち、ちからが、」


「え?」「マジかよ...」


リアの言葉はかき消され、俺とリアは驚きのあまり素っ頓狂な声を出してしまった。
そのモンスターは森の木々を押し倒しながらこちらに姿を現した。
今まで見てきた雑魚とは風格やいやつ、覇気などが桁違いに違う。
鼻には上に折り曲がっている長いツノが付いており、全体に覆いかぶさっている茶色く鋭く尖っている毛、鋭く殺意が込められている赤目、4本の力強く太い足、体長は15メートルぐらいだろうか、まるでマンモスの上位互換のような姿だ。


「俺の実力を試せる絶好のチャンスではないか、少し怖いが、俺は魔王を倒すために来たんだ、こんなマンモスごときに怯んではいられない」


俺は左腰にある聖剣エクスカリバーを抜き、構える。
そのまま、マンモスに向かって走り出した。
だが、リアが意味不明な言葉を投げかけた。


「やめてくださいっっ!逃げてください、死んじゃいます!竜二はティシフォネ様に騙されていたんです!」


「は?意味がわからないぞ?...ってっっつうわっ、痛って」


俺がリアの言葉に耳を貸してる隙に大きなツノを右から左へと俺を目掛けて振り払った。
俺はその衝撃のあまり、左の側にあった木に思い切りぶつかった。


「竜二ーー!」


リアは涙目になりながら、絶望を露わにする。


竜二はそのまま気絶しているのか、呼びかけても返事がない。


「私は...私は竜二を騙していない、騙していなど...いないティシフォネ様の言う通りにしたんだ、決して、騙してたわけではなくて...私のせいではないーーーーーーー!」


リアの憎悪にまみれた醜さが露わになる。
リアの目はまるで絶望感で押しつぶされたかのように真っ黒だった。


「逃げる?逃げない、助ける?助けない、私には無理だ、無理無理無理無理無理無理無理無理!でも、竜二は私を仲間と言ってくれた、だけど...私はここで死ぬわけにはいかない」


私は臆病だ。何か理由がないと動けない。仲間の竜二を置いて逃げようかそれとも助けようか迷っている、本当私ってなにもかもうまくいかない。


こんな辺境の地にはマンモスなんて出るはずがないんだ、私はただティシフォネ様に街へ向かいなさいとの命令を受けただけ、だけど竜二が殺されるのはわかっていた、私は見て見ぬ振りをしていたんだ、ティシフォネ様は人が絶望して殺されるのを見て楽しむのが好きなのだ、
だからティシフォネ様は復讐神ティシフォネと皆は呼び、蔑まれて、怯えている。


これもティシフォネ様の差し金?いや、ティシフォネ様に限ってこんなことをするはずが、するはずがないんだ。
このままでは私も死んでしまう。
逃げなきゃ...

だがマンモスが左足を地面に擦り合わせながら突進のためを作っている。

殺される...

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