観測者と失われた記憶たち(メモリーズ)
残酷な真実3
私はすぐに祈ちゃんと友達になった。話も合って、とても仲良くなれた。休み時間はいつも彼女の傍にいた、そこが一番安心できるから、一番楽しくて、そこが私の居場所だったんだ。
祈ちゃんには感謝してる。親友だと胸を張って言える。一番大切な友達、だった。
『おい、アリス』
『え?』
数日後。そんな私に、いじめをしていたリーダーの男の子が声をかけてきた、何人も友達を連れて。廊下を歩いている時に、突然。
『お前、岡島の靴隠せ』
『え? そんなの嫌だよ』
『ああ? アリスのくせに生意気だぞ。もし今日中にしなかったら、またお前のこといじめてやるからな』
そう言って男の子は去っていった。怖かった、またいじめられることが。また、あんな思いをするのが。
私は怖くて怖くて仕方がなかった。本当だったら先生や家族に相談すれば良かったんだろうけれど、その時の私は誰かに言ったらそれだけでいじめられそうで、それがまた怖くて、誰にも言えなかった。
怖かった。二度と、あんな思いをしたくなかったから。
『誰!? 誰よ私の靴隠した人!?』
教室で、祈ちゃんが叫んでいた。目に、涙を浮かべながら。なのに周りからは小さな笑い声と、静かな視線しか感じなかった。
私は、机に座ったまま震えていた。怖くて怖くて。情けないとは思わなかった、その時は自分のことで精いっぱいだったから。
だけど分かるよ、私のために勇気を出して助けてくれた人を。
私の一番の親友を。
私は、裏切ったんだ。
『うっ、うっ、うわああああん! ああああん!』
泣いている親友を前にして、私は、何もしなかった。ただ見ているだけだった。
そして、祈ちゃんは転校していった。それから、二度と会っていない。私は、私は。
「私は、サイテーだ……!」
顔を両手で覆うが、涙が止まらない。悔しくて、悔しくて。自分という人間が心底嫌になる。
そんな私を掴む手があり、私は見上げた。
「泣くな! 仕方がなかった、仕方がなかったんだ、お前は悪くない」
私の前には、ホワイトがいた。私の肩を掴み、私と同じように座り込んで真剣な眼差しで見つめてくる。
「悪いのはいじめた連中の方だ、お前が気にすることじゃない!」
強く、熱く、ホワイトは私に優しい言葉を掛けてくれる。だけど。
「そんなこと、ないよ……。あるはずがないよぉ」
涙は止まらなかった。最低なんだ、私は。胸が張り裂けそうになる。私じゃない、私を助けてくれたにも関わらず、裏切られた祈ちゃんのことを思うと。
私は、どうすればいいのだろう。我が身かわいさに、親友を見捨てた私は。これから、自分は最低な人間なんだと、自責しながら生きるのだろうか。
でも、それが正しいのかもしれない、それが私の罰ならば。
「そんな必要はない!」
そこへ、心を読んだようにホワイトが叫んだ。私はホワイトの顔を見るが、すぐに視線を下げる。
暗い気持ちに押し潰されるように。きっと私はずっと、この気持ちのままだと思う。親友を裏切った、という事実がある限り。私はずっと。
「ホワイトさんの言う通りですわ」
「え?」
そこへ、急に聞こえてきた声があった。朝に良く合う声。私は驚いて、扉に目をやった。
「アリスさん、自分を責めないで下さい。そんなに責めるから、この出来事はタブーとされ忘却されたのです」
「久遠!?」
祈ちゃんには感謝してる。親友だと胸を張って言える。一番大切な友達、だった。
『おい、アリス』
『え?』
数日後。そんな私に、いじめをしていたリーダーの男の子が声をかけてきた、何人も友達を連れて。廊下を歩いている時に、突然。
『お前、岡島の靴隠せ』
『え? そんなの嫌だよ』
『ああ? アリスのくせに生意気だぞ。もし今日中にしなかったら、またお前のこといじめてやるからな』
そう言って男の子は去っていった。怖かった、またいじめられることが。また、あんな思いをするのが。
私は怖くて怖くて仕方がなかった。本当だったら先生や家族に相談すれば良かったんだろうけれど、その時の私は誰かに言ったらそれだけでいじめられそうで、それがまた怖くて、誰にも言えなかった。
怖かった。二度と、あんな思いをしたくなかったから。
『誰!? 誰よ私の靴隠した人!?』
教室で、祈ちゃんが叫んでいた。目に、涙を浮かべながら。なのに周りからは小さな笑い声と、静かな視線しか感じなかった。
私は、机に座ったまま震えていた。怖くて怖くて。情けないとは思わなかった、その時は自分のことで精いっぱいだったから。
だけど分かるよ、私のために勇気を出して助けてくれた人を。
私の一番の親友を。
私は、裏切ったんだ。
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私の前には、ホワイトがいた。私の肩を掴み、私と同じように座り込んで真剣な眼差しで見つめてくる。
「悪いのはいじめた連中の方だ、お前が気にすることじゃない!」
強く、熱く、ホワイトは私に優しい言葉を掛けてくれる。だけど。
「そんなこと、ないよ……。あるはずがないよぉ」
涙は止まらなかった。最低なんだ、私は。胸が張り裂けそうになる。私じゃない、私を助けてくれたにも関わらず、裏切られた祈ちゃんのことを思うと。
私は、どうすればいいのだろう。我が身かわいさに、親友を見捨てた私は。これから、自分は最低な人間なんだと、自責しながら生きるのだろうか。
でも、それが正しいのかもしれない、それが私の罰ならば。
「そんな必要はない!」
そこへ、心を読んだようにホワイトが叫んだ。私はホワイトの顔を見るが、すぐに視線を下げる。
暗い気持ちに押し潰されるように。きっと私はずっと、この気持ちのままだと思う。親友を裏切った、という事実がある限り。私はずっと。
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「え?」
そこへ、急に聞こえてきた声があった。朝に良く合う声。私は驚いて、扉に目をやった。
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