観測者と失われた記憶たち(メモリーズ)
クトゥルー3
いじめられていた時、私はなにもしなかった。でも、出来なかったんじゃない。なにも、自分からしようと思わなかっただけだ。
諦めていたんだ、私は。たった一人で怯えて、黒い世界に、閉じこもっていただけだったんだ!
でも、今は違う。私は違う。昔と変わらず無力なままでも。
それでも、私は!
「私は、諦めない!」 
なにも出来ないからこそ、私は諦めない。逃げることと諦めないこと。それだけが、私に出来ることなんだから。
「捕まえてみなさい! 私はお前なんかに掴まったりしない。私は、諦めたりなんか、しないんだからね!」
私は、行動した。
走った。身体を反転させ廊下に足を叩き付ける。動けないと思っていた体は動いてる。恐怖に体も心も屈していない。
腕を振って、スカートの裾を翻して、私は逃れるために、廊下を全力で走り出した。
背後にはメモリーの気配を感じる。だけど、怖くない、怖くない。私は怖くない。
足が震えても、奥歯ががちがちと震えても、気づけば頬を涙が伝っていても。
「うっ、うう、うっ」
怖くない、怖くない、怖くない。怖くなんか。
「私は、怖くなんか、ないものッ……!」
嗚咽に震える声で、私は叫んだ。
「オオオオオン」
メモリーの絶叫とも言える大声が恐怖を刺激する。ドドド、と地鳴りを鳴らし猛然と駆け寄ってくる。すぐに追いつかれる。
私はすぐに階段に駆け込んだ。あの巨体ではそうそう上り下りは出来ないはず。
私は階段前まで走り、下を目指して地面を蹴った。身体が宙を浮いて前に出る。同時に、メモリーの触手が私の頭上をかすめた。
あぶない。ひやりと心を撫でるがなんとか踊り場に着地して、すぐに走り出した。メモリーはゆっくりながらも降りてきている、急がないと!
一階を目指して私は走る。校舎の中では逃げ場が限られてる。まずは校舎の外に出よう。そう考え階段を降りていく。螺旋の半分を走り抜け、私は階段を下り終えた。
「え?」
しかし、階段を下り終えたそこは、二階だった。まだ階段には続きがある。あれ。もしかしたら私がいたのは二階じゃなくて三階だった?
考えていても仕方がない。私は階段を下りる。急げ急げと自分を急かして。そして階段を下り終えた、が。
「え!?」
そこは、二階のままだった。私はまだまだ続く階段を降りていく。なにこれ、なにこれ、なにこれ、なにこれ、どうして終わりがないの!?
いくら階段を下りてもいっこうに一階に辿り着けない。私は一度立ち止まり廊下から窓を見てみた。ここはいったい何階なのか。
しかし、そこから見えたのは二階と同じ景色だった。階段を下りているはずなのに、変わってない。
「どうなってるのよ!?」
あり得ない現象に戸惑うが、私は階段を下りるのを諦めた。こうなったら廊下を走るしかない。そう意を決め廊下に出る。が、
「うそ!」
目の前の廊下は、百メートルほども続いていた。遠近法で一番奥の教室がかすみ小さく見える。当然だがこの学校はこんなにも大きくない。三つのクラスが並ぶだけのはずなのに。
空間が歪んでいる。けれどそれもそのはずだ、ここは黒い世界。夢と同じく、この場所は異界なんだ。常識は通じない。
私は走った。もたもたしていられない。今もメモリーが追ってきている!
廊下を半分ほど走る。足の裏から伝わる確かな感触。走っているという実感がある。けれどトリックアートのような道に本当に近づいているのか不安になってくる。
諦めていたんだ、私は。たった一人で怯えて、黒い世界に、閉じこもっていただけだったんだ!
でも、今は違う。私は違う。昔と変わらず無力なままでも。
それでも、私は!
「私は、諦めない!」 
なにも出来ないからこそ、私は諦めない。逃げることと諦めないこと。それだけが、私に出来ることなんだから。
「捕まえてみなさい! 私はお前なんかに掴まったりしない。私は、諦めたりなんか、しないんだからね!」
私は、行動した。
走った。身体を反転させ廊下に足を叩き付ける。動けないと思っていた体は動いてる。恐怖に体も心も屈していない。
腕を振って、スカートの裾を翻して、私は逃れるために、廊下を全力で走り出した。
背後にはメモリーの気配を感じる。だけど、怖くない、怖くない。私は怖くない。
足が震えても、奥歯ががちがちと震えても、気づけば頬を涙が伝っていても。
「うっ、うう、うっ」
怖くない、怖くない、怖くない。怖くなんか。
「私は、怖くなんか、ないものッ……!」
嗚咽に震える声で、私は叫んだ。
「オオオオオン」
メモリーの絶叫とも言える大声が恐怖を刺激する。ドドド、と地鳴りを鳴らし猛然と駆け寄ってくる。すぐに追いつかれる。
私はすぐに階段に駆け込んだ。あの巨体ではそうそう上り下りは出来ないはず。
私は階段前まで走り、下を目指して地面を蹴った。身体が宙を浮いて前に出る。同時に、メモリーの触手が私の頭上をかすめた。
あぶない。ひやりと心を撫でるがなんとか踊り場に着地して、すぐに走り出した。メモリーはゆっくりながらも降りてきている、急がないと!
一階を目指して私は走る。校舎の中では逃げ場が限られてる。まずは校舎の外に出よう。そう考え階段を降りていく。螺旋の半分を走り抜け、私は階段を下り終えた。
「え?」
しかし、階段を下り終えたそこは、二階だった。まだ階段には続きがある。あれ。もしかしたら私がいたのは二階じゃなくて三階だった?
考えていても仕方がない。私は階段を下りる。急げ急げと自分を急かして。そして階段を下り終えた、が。
「え!?」
そこは、二階のままだった。私はまだまだ続く階段を降りていく。なにこれ、なにこれ、なにこれ、なにこれ、どうして終わりがないの!?
いくら階段を下りてもいっこうに一階に辿り着けない。私は一度立ち止まり廊下から窓を見てみた。ここはいったい何階なのか。
しかし、そこから見えたのは二階と同じ景色だった。階段を下りているはずなのに、変わってない。
「どうなってるのよ!?」
あり得ない現象に戸惑うが、私は階段を下りるのを諦めた。こうなったら廊下を走るしかない。そう意を決め廊下に出る。が、
「うそ!」
目の前の廊下は、百メートルほども続いていた。遠近法で一番奥の教室がかすみ小さく見える。当然だがこの学校はこんなにも大きくない。三つのクラスが並ぶだけのはずなのに。
空間が歪んでいる。けれどそれもそのはずだ、ここは黒い世界。夢と同じく、この場所は異界なんだ。常識は通じない。
私は走った。もたもたしていられない。今もメモリーが追ってきている!
廊下を半分ほど走る。足の裏から伝わる確かな感触。走っているという実感がある。けれどトリックアートのような道に本当に近づいているのか不安になってくる。
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